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ジャパンダイジェスト
Mi. 01. Apr. 2020

シュトゥットガルトで観るバンクシーの「風船少女」

2018年10月。匿名アーティストとして有名なバンクシーの作品「Girl with Balloon(赤い風船に手を伸ばす少女)」が、ロンドン老舗オークション・ハウス「サザビーズ」に出品されました。この作品が約1億5千万円で落札された直後、額縁に仕掛けられていたシュレッダーが作動し、多くの来場者とマスコミが注目するなか、あっという間に裁断されたというニュースは、まだ記憶に新しいでしょう。

間近で見た「風船少女」間近で見た「風船少女」

その後、バンクシー本人はインスタグラムで仕掛けを仕込む様子を動画で公開し、作品を「Love is in the Bin(愛はごみ箱の中に)」と改題しました。絵の半分は見事に破壊されましたが、それでも予定通り作品は購入されたそう。作品の値段は下がるどころか、今後さらに価値が上がると見込まれたようです。そして実は、この作品の実物が2019年3月からシュトゥットガルト州立美術館で展示されています。作品は、レンブラントやピカソなど巨匠たちのコレクションと共に飾られていました。初めて観たときは、周囲のクラシックな作品のなかに唐突にバンクシーがあり、不思議な感じがしました。

偶然にも、筆者は昨年11月に中東旅行に出かけた際、ヨルダン川西岸地区のパレスチナ側の分離壁でバンクシー作品に再び出会いました。バンクシーは、2005年からたびたび、緊張が高まるパレスチナ西岸地区を訪れ、イスラエルの兵士に銃口を向けられながらも壁に9枚の絵を書き残したそうです。それだけではありません。2017年3月にはなんと、分離壁からわずか4メートル隔たったところにホテルをつくりました。その名も「The Walled Off Hotel(囲まれたホテル)」。全部で9つある客室の窓からは物々しい雰囲気の分離壁や監視塔が見えるため、「世界で最も悪い眺め」をホテルの売りにしていて、この皮肉と挑発を込めたバンクシーらしいコンセプトが世界中から観光客を引き寄せています。

写真左:バンクシーホテルの入り口<br />写真右:分離壁のパレスチナ側。上にある天使の絵は、バンクシーの作品
写真左:バンクシーホテルの入り口
写真右:分離壁のパレスチナ側。上にある天使の絵は、バンクシーの作品

実は今や、バンクシーのほかにも有名・無名問わず世界中からストリートアーティストがここにやってきて、分離壁にたくさんの絵を描き残し、無言の非難を発し続けています。高さ8メートルものコンクリートの壁と無数のグラフィティは、かつてのベルリンの壁を彷彿とさせます。ホテルと壁のアートは、パレスチナの苦境を訴えると同時に、地域の観光業への後押しでもあり、パレスチナ人にとっても大きな助けとなっているようです。

旅行からシュトゥットガルトに戻ってきて、再びバンクシーの作品の前に立ってみると、改めて感慨深いなぁと感じました。このアーティストのすごいところは、技術というよりも、斬新なアイデアと実行力。この1枚の絵からは、アーティストらしいユーモアたっぷりの反抗精神を見ることができます。

郭 映南(かく えいなん)
中国生まれの日本国籍。東北芸術工科大学卒業後、シュトゥットガルト造形美術大学でアート写真の知識を深める。その後、台北、北海道、海南島と、渡り鳥のように北と南の島々を転々としながら写真を撮り続ける。
Instagram : @einankaku

 

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