私の住む町、マールバッハ・アム・ネッカーは、フリードリヒ・シラーの生まれた町として有名です。でも実はもう一人、歴史に名を遺した人物が生まれた町でもあります。18世紀に活躍したトビアス・マイヤーという天文学者で、月の地図を作ったことなどで知られています。彼の生家もこのマールバッハに存在し、静かな旧市街にミュージアムがあるのです。ところで、マイヤーの名前を聞いたことはありましたか?子どもの学校のワークショップがきっかけで、私は彼のことを知りました。マールバッハ駅の支柱には、シラーの名前と並んで「トビアス・マイヤー」という名前が書かれているのを見たことがありましたが、これまではどんなことをした人なのか知りませんでした。
スタイリッシュなミュージアムの外見
このワークショップは「地図を作ろう!」というタイトルで、数回にわたって開催されました。白い地図に郵便局や学校の場所を書く活動を想像していたのですが、天文学者の視点で地図を作るという説明を聞いて大変驚き、私も参加してみたい! と思うほどでした。子どもにとっても毎回の活動がとても新鮮で、楽しそうに参加していました。ある日は月や太陽の動きを観察して、時間や位置を知る方法を学んだそうです。空を見上げることの大切さや、昔の人がどんなふうに世界を理解していたかを感じられる内容でした。
最終回は、トビアス・マイヤーのミュージアム内で実施。お迎えのタイミングで授業の様子を見ることができたのですが、私自身も初めてミュージアムを訪れました。館内には、地図を作るために使われた道具や月や星の位置を記録したノート、昔の地図が展示されています。一見難しそうですが、小学生でもイメージしやすい模型や目を引く展示物が多く、どの展示の前でも立ち止まってじっくり眺め、マイヤーが地図を描く姿を想像しました。そのほかにも、デジタル画面や六分儀などのリアルな模型があり、大人も子どもも好奇心いっぱいに楽しめる工夫がされています。
マールバッハ駅にある「トビアス・マイヤーの街」と記 れた支柱
子ども向けのワークショップでしたが、私にとっても知らないことだらけの興味深い内容でした。マイヤーは18世紀の人。今のようにGPSがない時代に、天体の様子と時計を見ながら「今、自分が地球のどこにいるのか(経度)」を計算して、航海の役に立つ地図を作ったそうです。海から離れたマールバッハで空を見上げて考えたひらめきが、世界中の船乗りを助けることになったという話を知って感動しました。
この場所から月を見上げたのでしょうか
トビアス・マイヤー・ミュージアムは、地元の人でも「行ったことがない」という声をよく聞きますが、お勧めしたい場所の一つになりました。子どもにも大人にも、「知ることの面白さ」や「ちょっとしたひらめきが新たな発見をもたらすこと」を教えてくれます。ぜひ一度立ち寄ってみてください。
トビアス・マイヤー・ミュージアム:https://tobias-mayer-museum.de
おんせん県出身。ドイツ人の夫と二人の子どもと日独いいとこどりの暮らし。 昼間はリロケーションサポートのお仕事。趣味は夜な夜な糀作り。とある村の朝の風景をインスタグラムで発信中。
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