乾燥肌とは?
乾燥肌はドイツ語でも“Trockene Haut”(ドライ・スキン)と言います。日本語の専門用語では「乾皮症(かんぴしょう)」「皮脂欠乏性湿疹」「皮膚そう痒症」などと呼ばれ、皮ふが乾燥してカサカサになった状態が乾皮症、さらに炎症が加わって湿疹ができた状態が皮脂欠乏性湿疹です。また、皮ふの乾燥は皮膚そう痒症(皮ふにおもてだった変化がみられない痒み症)の代表的な原因の1つとなっています。
乾燥肌の原因は?
皮ふを保護している皮脂が減少して今まで保たれていた水分が減り、皮ふが乾燥した結果、皮ふの角層が破壊されて生じます(図1)。乾燥した空気、冷たい外気、入浴や体の洗い過ぎが誘引となります。日本より平均気温が低く、湿度も低いドイツでは、日本では平気だったという人でも皮ふの乾燥が身近な問題となっています。
図1 乾皮症の皮ふ
皮脂がなくなると皮ふの水分が失われる。
その結果、表面の角層が壊れて外からの刺激が入りやすくなります
乾燥肌になりやすいのはどんな人?
一般に子どもや年配者に多く、女性より年配の男性に多いと言われていますが、身体の洗い過ぎによる乾皮症は幅広い年齢層にみられます。幼少児は「アンドロゲン」というホルモン分泌が少なく、皮脂の分泌機能が不十分なため、そして高齢者はアンドロゲンが減少し、同時に皮脂腺の活動も弱まることから皮ふが乾燥しやすくなると言われています。
季節との関係はありますか?
暖房による湿度の低下と寒さのため皮脂と汗の量の減少が重なる冬は、乾皮症が最も多くみられる季節です。床暖房でも、素足で過ごしていると乾燥による足の指のアカギレ、足底の皮膚のヒビ割れを生じることがあります。特に糖尿病がある方は足の合併症(diabetisches Fußsyndrom)のきっかけにもなりますので、フットケアには十分に留意しましょう。
乾燥肌の症状は?
自覚症状は「痒み(Jucken)」です。皮ふがカサカサと乾燥して光沢を失い、白い粉状のものの付着がみられます。赤みや亀裂を伴なうこともあります。さらに症状が進むと、炎症を伴なう湿疹(皮脂欠乏性湿疹)となり、掻くことによって更に皮ふが破壊され、痒みが増すという悪循環を生じます(掻破性湿疹)。
体のどの部分が乾燥肌になりやすい?
中年以降の男性に多くみられるのは膝から下の前側部分です。その他、皮脂の分泌の少ない太もも、腰、腕、またタオルで強く擦られる背中にもよくみられます(図2)。特に、入浴の際などに繰り返し洗う部位は乾皮症を生じやすくなります。皮脂の多い顔面や頭部の皮ふは乾燥しにくいことが知られています。
図2 乾皮症の好発部位
1)皮脂の少ない場所、2)何度も良く洗うところ、に生じやすい
区別すべき皮膚疾患は?
季節的な皮ふの痒みでも、アレルギーが原因となっている場合があり、ほかにも肝疾患、糖尿病などの全身疾患が全身の痒みの原因ということもあります。真菌の感染では局所に強い痒みを生じます。発展途上国への出張が多い人は、寄生虫感染による皮ふ掻痒症にも注意が必要です。洗剤の刺激によって皮膚炎を合併していることもあります。
生活上の注意
乾燥肌が疑われる時は、入浴の際に硫黄入りの入浴剤(皮脂を除去する作用あり)は避け、ナイロンタオルやスポンジで必要以上に擦ったり、過度にせっけんやボディシャンプーを使うのは止めましょう。入浴やシャワーの回数を減らすだけでも効果があります。入浴後は保湿剤を忘れずに。また、乾燥を助長する電気毛布や電気シーツの使用も控えましょう。静電気を生じやすい下着・服も、できるだけ避けた方が良いでしょう。強い香辛料を食すと、皮ふの感じ方が敏感になり、痒みが増すこともあるので程々に。 繰り返し強く皮ふを掻くと湿疹化の原因となりますので、爪などで引っ掻かないようにしましょう。
- 入浴後に保湿剤を用いる
- 入浴・シャワーの回数を減らす
- せっけんを使い過ぎない
- ブラッシングを控える
- 静電気を生じやすい下着は避ける
- 爪で引っ掻かない
乾燥肌の予防と治療
皮ふの水分を保つことが予防と治療の基本です。皮ふに水分と油分を与える保湿剤には、ローション、クリーム、バスオイルなど様々なタイプがあり、皮ふの乾燥を予防するのに有効です。ローションやクリームは、できれば1日2回。特に入浴後の皮ふがまだ湿っている時が効果的です。市販の保湿剤は高級な商品ほど良いとは限りません。素敵な香料でも時に皮ふを刺激し、症状を悪化させることがあります。一般に脂肪成分の多いものほど保湿作用は強く、効果も長く持続しますが、ベタつく感じも強くなります。普段から自分に合った保湿剤を見つけておくと良いでしょう。
また、湿疹化した場合にはステロイド剤の入った軟膏が用いられます。強い痒みに対しては内服薬が併用されることもあります。なかなか改善しない乾燥肌、湿疹化したり感染が疑われる場合にはまず皮膚科の医師に相談し、適切な助言を受けましょう。