ジャパンダイジェスト

夏に増える水虫に注意

この春の一時帰国で温泉を訪れた後から、足の指と指の間の皮が少しむけるようになりました。パートナーは水虫ではないかと言っているのですが、どうでしょうか?水虫の場合、治療法はあるのかどうか、教えてください。

Point

  • 指間、足底あるいは爪に変化
  • 足白癬は5~6人に1人
  • 女性にも多い
  • 共用施設での素足から感染
  • 家庭内での感染
  • 洗浄と乾燥が基本
  • 根気よい治療が大切

水虫について

水虫はカビの感染症

水虫(Fußpilz、Tenia Pedis)は、白癬菌というカビによる感染症(真菌症)です。日本で皮ふ科を受診する人の14%はカビによる真菌症が原因で、その87%が白癬菌によるものです(2012年のMed Mycol J誌)。

夏は水虫が増える季節

白癬菌は温度15度、湿度70%以上になると増殖します。そのため、日本では梅雨の時期から夏にかけて水虫が発症しやすく、秋に良くなるというサイクルを繰り返します(2012年のMed Mycol J誌)。夏の時期はプールで泳いだり、自宅でも裸足で過ごしたりする機会が増え、汗もかきやすくなり、足の湿度がカビの繁殖に適した環境になることが要因です。

5~6人に1人が感染

2023年に日本で1万4588人を対象に行われた「足の健康調査」(Foot Check 2023)によると、日本人の5~6人に1人は足の白癬症(足白癬、爪白癬、Nagelpilz)を有していることが分かりました。(2024年1月の日臨皮会誌)。

ドイツでは約20~40%

ドイツでも、全体の約20~40%に白癬症がみられるといわれています(CJ Wirth著、Orthopädie und Orthopädische Chirurugie、2002年、GeorgThieme Verlag、2000年のDtsch Arztebl誌)。

女性の水虫も多い

水虫は男性の皮ふ病と思われがちですが、女性の感染も少なくありません。日本での大規模疫学調査「Foot Check 2023」によると、足白癬または爪白癬のいずれかにかかっている割合は女性全体の12.2%(約8人に1人)でした。

外での水虫感染はいつ、どこで?

プールやサウナ、スポーツクラブなどの公共のシャワー、日本の場合は温泉施設や銭湯でも、水虫のある人が10分ほど素足で歩いただけであちこちに白癬菌をまき散らしています。未感染の裸足で同じ場所を歩くことにより、床に落ちた小さな皮膚片に接触して白癬菌に感染します。

家庭内での水虫感染

足白癬の患者がいる家庭でも、床、足拭きマット、スリッパなどを調べてみると、白癬菌がほぼ100%存在するといわれています。白癬菌の付着した畳、布団、じゅうたんも感染源になります。

水虫の種類と症状

水虫には大きく分けて四つの種類があります。①足の指と指の間の皮むける(趾間型)、②足の裏や側面にできる痒みを伴う小さな水疱ができる(小水疱型)、③足の側面やかかとが厚くゴワゴワになる(角質増殖型)、④さらに足の爪に感染すると爪が変形して、白くなりボロボロになってきます(爪白癬)。爪白癬は痒みを伴いません。

足以外の白癬菌の感染症

足白癬のことを俗に「水虫」といいますが、足以外の部位に感染した場合は次のような呼び方があります。太ももから陰部にかけて見られる股部白癬は「インキンタムシ」、毛髪に感染した頭部白癬が「シラクモ」、体部白癬は形が銭形をしているため「ゼニタムシ」と呼ばれます。白癬感染全体の63%は水虫です(2012年のMed Mycol J誌)。

水虫の治療

自然治癒はしない

水虫は一度発症すると自然治癒することはなく、長期にわたり感染が持続します。水虫の原因である白癬菌に対して効果のある薬をきちんと用いることで症状を改善させることができます。薬は症状の程度によって、塗り薬と飲み薬のどちらかが使用されます。

塗り薬による治療

足白癬や爪の先端だけに病変がみられる場合は、抗真菌作用がある塗り薬(Creme)を根気よくきちんと使用すれば改善されます(日本皮膚科学会皮膚真菌症診療ガイドライン 2019)。最近はセルタコナゾールのような有効な成分を含んだスプレー製剤(Mycosert® Sprayなど)も使われています。

飲み薬による治療

足の角質が厚くなり薬が患部に到達しにくい場合は、内服薬(イトラコナゾール、テルビナフィン、ラブコナゾールの各製剤)を用いることも。塗り薬に比べて治癒率が高い反面、例えばイトラコナゾールでは併用注意を要する薬があり、肝臓への副作用があるかどうかのチェックも必要です。

治療は長期間かかる

白癬菌は、例えば皮ふの垢があれば1年以上生息できます。一般に指間型では最低2カ月以上、小水疱型で最低3カ月以上、角化型で最低6カ月以上、爪白癬では最低6カ月~1年以上かかるといわれています(前記ガイドライン)。塗り薬は、症状が治まってもすぐに中止しないことが大切です。

日常生活での予防と治療のヒント

公共スポーツ施設を訪れたら

公共スポーツ施設、更衣室、ホテルの部屋では裸足にならないようにします。万が一白癬菌が付いてしまっても角質に住み着くにはしばらく時間がかかるため、施設利用後は足裏や指と指の間をよく洗い乾燥させることが大切です。公共施設を利用する際はバスシューズ(Badeschuhe、Duscheschuhe)着用も感染予防に役立ちます。

足を蒸らした状態にしない

足の指の間が湿った状態の場合、水虫の温床になりやすくなります。シャワーや入浴の後、足の指の間をよく洗い必ず乾かしましょう。

家庭での感染を防ぐ

家族やパートナーに水虫の症状が見られる場合、最大の感染リスクは住居内といえます。感染者は家の中を裸足で歩かないこと(特に皮ふがふやける入浴後)。タオル、爪切り、バリカン、角質ヤスリの共有は絶対に避けてください。

靴下の洗濯は60度以上で

靴下は綿製品のような通気性に優れたものが勧められます。白癬菌は洗濯機で洗っても生き残ることができるため、最低60度以上の温度に設定すること望ましいとされています。

靴は通気性の良いものを

中が湿った靴も白癬菌のパラダイスになるため、通気性に優れ、足指を締め付けないゆったりした靴が望ましいです。同じ靴を毎日続けて履かないことも大切。手入れには靴の中を十分に乾燥させてから靴用の防かびスプレーを吹き付けます。

旅行中も油断しないで

プールサイドやホテルの部屋で素足になるほか、雨に濡れて湿ったままの靴を履き続けると感染の原因に。水虫の初期症状に対応できるよう、水虫治療の軟膏やスプレーを携帯するのも役立ちます。

 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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