友人が体調不良で仕事を休んだ際に、「AU」(アーウー、就労不能証明書)をもらいに行かなければと話していました。病気で仕事を休むとき、何をする必要があるのかを教えてください。また病欠中でも給料はもらえるのでしょうか?
Point
- 病欠通告と医師の就労不能証明(AU)の提出
- 病欠通告は電話、SMSでも可
- 公的保険患者へは電子式AU(eAU)も
- AUはさかのぼって最大3日前から
- 病欠中の給与は最長6週間まで
- 6週間以降は公的保険から疾病給付金が
- 病気が理由での解雇もありうる
病気で仕事を休む
病気欠勤(病欠)時の義務
被雇用者(従業員)が病気で就業不能となった場合、二つの義務があります。①雇用主への「病欠通知、病欠届け(Krankmeldung)」と、②医師による「就労不能証明」(病欠証明、Arbeitsunfähigkeitsbescheinigung[AU]、Krankschreibung)の提出です(ドイツの継続的報酬法、Entgeltfortzahlungsgesetz)。
病欠の通知(Krankmeldung)
就労不能が判明次第、速やかに(できれば当日就業開始前に)雇用主に病欠が見込まれる期間を連絡します。特定の書式はなく、主に電話、メールのほか、小規模な職場ではSMSやWhatsAppなども用いられます。
3日以内の欠勤は通知だけでOK?
継続報酬法によると、就労不能が3日以内(最長3日間、あるいは最初の3日間)であれば病欠通知のみで、就労不能証明(AU)は不要(KO、Krank ohneSchein)です。ただし、雇用主はより早い時点(例えば病欠初日)から医師による就労不能証明(AU)を要求することができます(労働協定や雇用契約に記載されていることも)。
就労不能証明書(AU)
就労不能が3日以上続くことが予測される場合、遅くとも病欠の4日目には雇用主に就労不能証明を提出する義務があります(継続的報酬法)。医師は受診日からさかのぼって、最大3日分の就労不能証明書を発行できます。
電子形式の就労不能証明(eAU)
2023年1月より公的(法定)健康保険(GKV)加入者の場合、医師は電子形式の就労不能証明「eAU」を疾病保険組合(Krankenkasse)に送信し、雇用主は疾病保険組合から電子形式で病気休暇証明書を取得します。民間(プライベート)健康保険(PKV)加入者の場合は、従来の就労不能証明(紙)が用いられます。
週末を含む日数の数え方
カウントされるのは暦日(Kalendertag)であり、就業日でないことに注意してください。土日や祝日も同じように1暦日として数えられます。
病名の記載はなし
医療情報保護の観点から、就労不能証明には受診者の病名は記載されません。また電話やメールでの病欠通知の際に、仮に雇用者から病名や理由を尋ねられても明らかにする必要はありません。
就労不能証明は最長で何日分?
最長で2週間の就労不能証明(AU)を発行できます。2週間たっても病気で仕事ができない場合、再度診察の上で新たな就労不能証明(AU)が必要です。
病欠が認められる日数
被雇用者には、年間30日(6週間)までの病欠が認められています。病欠が年間30日以上の場合は不当とみなされることもあり、毎年同じような病欠がみられる場合には、解雇のリスクにつながります(後述)。
子どもが病気で仕事を休む場合
子どもの具合が悪く看病が必要
子どもが病気のとき、親は仕事を休むことができます(ドイツ社会保険法 V[SGB V])。子どもの看病が必要な被雇用者を仕事から解放することは、雇用主の義務といえます。
子どもの疾病手当金(Kinderkrankgeld)
2024年と2025年には、公的健康保険に加入している親は同じく公的健康保険に加入している子ども1人につき、最大15勤務日(Arbeitstag)分までの傷病手当金(Kinderkrankgeld)を申請することができます(一人親の場合は30勤務日分)。
対象となる子どもの年齢
12歳未満の子どもが対象です。障害児の場合は年齢制限はありません。また、子どもがプライベート健康保険に加入している場合は、公的健康保険による傷病手当金の対象にはなりません。
疾病手当金のための診断書
子どもが受診した家庭医あるいは小児科医から、「子どもの病気による傷病手当金受給のための診断書」(Ärztliche Bescheinigung für den Bezug vonKrankengeld bei Erkrankung eines Kindes)を発行してもらいます。診断書の下部または裏面が傷病手当金の申請記入箇所になっています。
病欠期間中の給与
病欠でも最大6週間の給与支払い
速やかに雇用主に病欠通知がなされ、就労不能証明(AU)が発行されている場合、病欠者へは雇用主より「継続報酬」(Entgeltfortzahlung)として最長6週間は給与の支払いがあります。
病欠が6週間以上になる場合
6週間が過ぎても仕事に復帰できない場合、雇用主からの給与の支払いはなくなります。その後は雇用主に代わり、公的健康保険から最長72週間の疾病手当金(Krankengeld)が支給されます。
プライベート保険の場合
プライベート保険加入者の場合は、保険に「日額疾病手当」(Krankentagegeld)が組み込まれているかどうかにより異なります。未設定の場合は、日額疾病手当保険に加入して初めて、病気の際の手当金の対象になります。
病欠中の退職・解雇
病欠中に離職
従業員が病欠中に自分で退職あるいは解雇された場合でも、継続的報酬法に従って継続して賃金を受け取る権利があります。疾病金庫からの傷病手当金(6週間以上の病欠)を受給している人が自ら退職あるいは解雇された場合、雇用終了後も傷病手当金の受給を継続することができます。
病気による解雇も
雇用主は一定の条件(①長期にわたる病気の負の予後および②業務上の利益が著しく損なわれる場合)にのみ、病気による解雇(Entlassung)を行えます。解雇の原因となる理由は、①頻繁な短期間の病気(年平均6週間以上就業不能)、②予後が不良な病気で永久的に仕事復帰ができない、あるいはいつ仕事に復帰できるか見通しが立たない、③病気のためパーフォーマンスが著しく下がる場合、などです。
解雇の対象にならない場合
妊婦(Schwangere)、育児休暇中の親(Eltern in Elternzeit)、重度の障害者(Schwerbehinderte)は解雇のリスクから保護されています。