ジャパンダイジェスト

夏の旅行と健康

7月末に家族でイタリアの離島へ行くのを楽しみにしています。小学生の子どもがいるのですが、旅先に持っていった方が良い薬などがあれば教えてください。また旅行中に健康上で注意すべきことはどんな点でしょうか?

Point

  • 日中暑くても朝夜は冷える
  • 熱冷まし、下痢止めを持参
  • 疾病保険カードを忘れずに
  • キャンプ前にダニ脳炎予防接種
  • 食べ過ぎ、飲み過ぎに注意
  • ドイツ国外へは「旅レジ」を活用

欧州の夏について

年によって異なる暑さ

日本のように7~8月が最も暑い「夏」になるとは限りません。ドイツでもここ数年はエアコンが欲しいほど暑くなる日が増えていますが、夏の暑さが来ないまま秋を迎えてしまう年もありました。もちろん緯度の異なる北欧と南欧では大きな気温差があり、猛暑の年の南欧では外出もままならないことも。

日差変動、日内変動が大きい

天気と気温も日ごと、週ごとの変化が大きく、昨日は高温だったのに今日は涼しいなど「日差変動」がみられます。また早朝は肌寒く午後から気温上昇、午前中は快晴なのに夕方から雷雨で涼しくと「日内変動」が大きい日が少なくありません。

空気が乾燥、脱水も

高温多湿の日本の夏に比べ、欧州の夏の空気は乾燥しています。気温は30度を超えているのに日陰ではさほど暑さを実感しないことも。気付いたら脱水気味(Dehydration、Hypohydration)ということが珍しくないため、注意が必要です。

旅先の服装について

日中は半袖でも夜は上着が欲しい

朝、夜は気温が下がることが多いため、保温用の上着も持参しましょう。夜明るいうちに外食に出かけた場合、帰りが寒くなるということも少なくありません。

ハイキング用の長袖、長ズボン

自然豊かな山林を歩く人はマダニ(Zecke)などの虫刺されを防ぐために、長ズボンや長袖シャツも準備しましょう。欧州の遊歩道ではトイレがほとんどないため、必要な時は道ばたの木陰でということも。マダニはそうした木陰付近に潜んでいて、私たちの体表から発せられる二酸化炭素を目指して飛びかかってきます。

休暇旅行中の病気

休暇病?

休暇(ウアラウプ、Urlub)中に体調が悪くなる人は少なくありません。ドイツでは旅行者の5人に1人が休暇病(Leisure-Sickness、Freizeitkrankheit)になるといわれています(2023年7月のWDRの記事)。長時間の移動、睡眠不足、慣れない野外活動、普段と違った食生活(食事、アルコール)、ゆとりに乏しいスケジュール、旅のストレス、さらに休暇先での仕事(メール、電話)など要因はさまざまです。

多いのは風邪と消化器症状

旅行中の病気としては風邪症状と、胃痛・下痢などの消化器症状が最も多くみられます。また日焼け止めクリームを用いずに海辺で1日を過ごし、強い太陽の光で皮ふが真っ赤になる日光皮膚炎(Sonnenbrand)を生じる人もいます。

持っていくと安心な薬

熱冷まし(鎮痛解熱剤)、腹痛・下痢止め

解熱薬は痛み止めとしても使えます(Paracetamol錠、ben-u-ronⓇシロップ、NurofenⓇシロップなど)。胃痛・腹痛(BuscopoanⓇ錠)、吐き気止め(VoemxAⓇ)、下痢止め(Loperamid カプセル)もあると安心です。

疾病保険カードと治療薬も忘れずに

欧州連合(EU)域内の旅行の場合でも、パスポート(身分証明書、Personalausweise)と一緒に本人(家族)の疾病保険カード(Krankenversichertenkarte )を忘れずに。服用中の薬は途中で錠数が不足しないように準備してください。

山ではマダニに注意

ダニ脳炎

ダニ脳炎(Frühsommer Meningoenzephalit=FSME)とは、マダニ(Zecke)によって媒介されるウイルス感染症です。発症すると根本的な治療法はなく中枢神経系の後遺症を残すことも(本誌980号参考)。感染の危険地域は南ドイツ、スイス、オーストリア、旧中欧の山林とされていましたが、地球温暖化に伴い、最近はノルトライン=ヴェストファーレン州のゾーリンゲン付近での感染も報告されています。

予防接種は?

ダニ脳炎の予防には予防接種(Impfung)が最も効果的です。3回接種が基本ですが、前年に2回の接種が済んでいる人は、今年もう一度追加接種を受けると3年間の予防効果(99%)が得られます(Illing、Ledi著「Impfungen」URBAN&FISCHER社)。未接種で感染リスク地域を訪れる場合、少なくとも2回の接種を受けることをお勧めします。

そのほか留意点

兆候は旅の前から

旅先での不調には出発前からの体調、睡眠不足、多忙も関与するといわれています。休暇中はリラックスできて治るだろうとの早合点は禁物。せっかくの休暇旅行、体調を整えて臨むように心がけてください。

水分の補給を

特に長時間の外出、海辺などでは水分補給に心がけましょう。ただし、旅先によっては、生水(水道水を含む)が消化器感染症につながることがあるため要注意。市販のペットボトルの水を利用してください。

ゆとりあるスケジュールで

特に小さい子どもがいる場合は時間的にゆとりあるスケジュールを立てましょう。十分な睡眠も大切です。旅先での食べ過ぎ・飲み過ぎにも注意してください。

万が一「熱中症」が疑われたら

熱中症(体温調節がうまくいかずに体の中に熱が貯まる病態)を疑う症状がみられたら、ぬるめの湯舟に10~20分間浸かりましょう。また濡れたタオルを体に直接載せることで気化熱を奪い、体の熱を逃がすことができます。

情報収集

天気予報、感染症情報

訪問地の天気予報(Wetterbericht、Wettervorsage)、熱波情報などを入手し、欧州外の地域を訪れる場合は感染症情報(厚労省検疫所の「FORTH」など)も調べておくと役に立ちます。

「旅レジ」の活用

訪問国の安全情報として外務省の海外安全アプリ「たびレジ」が有用です。スマートフォンのGPS機能により現在地および周辺国・地域の海外安全情報を表示します。緊急時には安否確認の連絡も行えます。

 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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ドイツニュースダイジェスト編集部
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