日本でノロウイルス感染やインフルエンザが流行していると聞きました。帰国する際は、どのようなことに気を付けたら良いでしょうか。詳しく教えてください。
Point
• ノロウイルスは冬の感染性胃腸炎の最大の原因。
• ノロウイルスは食品を介して集団感染することもあります。
• 新型インフルエンザが再流行しています。
• 新型インフルエンザによる子どもの重症肺炎には要注意です。
• 鳥インフルエンザ(H7N9)が中国・台湾で拡大しています。
• ノロウイルスは食品を介して集団感染することもあります。
• 新型インフルエンザが再流行しています。
• 新型インフルエンザによる子どもの重症肺炎には要注意です。
• 鳥インフルエンザ(H7N9)が中国・台湾で拡大しています。
多発するノロウイルス感染
今年の冬、日本各地で集団感染がみられるノロウイルス(Norovirus)は、冬の感染性胃腸炎(Magen-Darm-Infection)の原因となるウイルスです。わずか10〜100個ほどのウイルスでも感染を引き起こし、潜伏期間は1〜2日(24〜48時間)。感染力は非常に強く、ドイツでも感染性胃腸炎の最大の原因となっています。
● どんな症状が出ますか?
吐き気やおう吐、下痢、腹痛、37〜38度の発熱がみられます。乳幼児やお年寄りの場合、脱水症状を起こし、重症化することもあります。
● 症状は何日間続きますか?
おう吐や下痢などの胃腸炎症状は、1〜2日で治まります。
症状 | おう吐、下痢、腹痛、発熱 |
潜伏期 | 1 〜2日 |
症状の期間 | 1 〜2日 |
ウイルスの排出 | 症状がなくなって1週間〜1カ月 |
不顕性感染者からのウイルス排出 | あり |
感染の経路 | 食品から、ヒトからヒトへ |
● 感染経路は?
ノロウイルスが付着した食物を口にしたり(経口感染)、ノロウイルスに感染した人の吐しゃ物や便が乾燥して空気中に飛散し、口に入る(飛沫感染)といった感染経路があります(図1)。トイレの便座、ドアノブ、手すりなどにもウイルスが付着することがあります(食品安全委員会の資料より)。
図1. ノロウイルス感染の拡大
● 食中毒の原因と発生源
カキなど、二枚貝の摂取を原因とする食中毒のほか、2006年頃からは仕出し、給食、レストランやホテルの不十分な調理法による料理からの集団発生が増えています。
● 感染イコール発病ですか?
感染力は強いですが、全員が発病するわけではありません。発症率は45%(約半数)と言われ、感染しても発病しない人(不顕性感染)や軽い風邪のような症状で終わってしまう人もいます。
● ウイルスの排出はいつまで続く?
症状が治まってから、1週間~1カ月間続きます。ノロウイルスに感染し、発症しない不顕性感染者の便中にもウイルスは排出されます。
● 加熱に弱いノロウイルス
ノロウイルスは熱に弱く、1分間、85度の加熱により不活性化され、感染性は消滅します。すなわち、食材に十分に火を通すことで、ある程度の予防が可能なのです。ノロウイルス感染を予防する予防注射や、ノロウイルスに対する特効薬はありません。
表2 家庭でのノロウイルス予防
今季流行のインフルエンザ(Grippe)
2009年に流行した新型インフルエンザ(H1N1、ドイツでは豚インフルエンザ、Schweingrippe)やA香港型、B型インフルエンザが混在する形で流行しています。
● 新型インフルエンザ(H1N1)の再流行
インフルエンザ亜型別での2013~14年期の累計発生件数を見ると、新型インフルエンザが49%、A香港型が22%、B型が29%と、3タイプすべてが同時に流行しています(東京都感染症情報センターの報告)。そして、新型インフルエンザが約半数を占めているのが特徴です。
● 小児の重症例の増加
新型インフルエンザは子どもの間で感染が広がっています。子どものウイルス肺炎の重症化も特徴で、気管支喘息やアレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなど、基礎疾患がある子どもに肺炎が起こりやすいとされています(日本小児科学会インフルエンザ対策ワーキンググループ調べ)。
● タミフル耐性のインフルエンザ
今季の新型インフルエンザの中からは、タミフル(抗インフルエンザ薬)への耐性を獲得し、薬の効きが悪くなったタミフル耐性ウイルス株も見付かっています。
● 妊婦と新型インフルエンザ
日本産科婦人科学会は1月、新型インフルエンザは妊婦が感染すると重症化しやすいことから、予防ワクチン未接種の妊婦に対しては、インフルエンザ発症後もしくはインフルエンザ患者との濃厚な接触後は、できるだけ早い段階で抗インフルエンザ薬の服用を勧める声明を出しました。
● 今季の流行株とワクチン株は同一
今季、現時点までは、インフルエンザ流行株と予防接種のワクチン株との間に不一致は見られないため、日本小児科学会は、予防ワクチン未接種の子どもに対して早期の予防接種を推奨しています(2013/14年のインフルエンザ治療指針)。
● 昨季の日本のワクチンの効果は?
昨季(2012/13年)に日本国内で予防接種を受けた高齢者や医療スタッフが相次いでA香港型インフルエンザに罹り、A香港型に対するワクチン効果が低かったとの指摘がなされました。日本の国立感染症研究所によると、ワクチンを鶏の卵の中で培養して作る過程でA香港型インフルエンザの遺伝子が変異してしまい、出来上がったワクチン株が流行株と異なるものになってしまった可能性が指摘されています。
中国の鳥インフルエンザ(H7N9)
中国では、2005年に東南アジアで猛威を振るった鳥インフルエンザ(Vogelgrippe)(H5N1)とは別のウイルス株の鳥インフルエンザ(H7N9)の感染が拡大しています。流行の地域は、中国の東部、台湾(WHO、世界保険機関調べ)とされていますが、中でも上海市、江蘇省、浙江省、広東省、福建省での多発が報告されています。
● どのような症状が現れますか?
約6日間(1〜10日間のことも)の潜伏期間の後、発熱・咳・息切れ・肺炎・呼吸困難といった症状がみられます。2005年のH5N1型の鳥インフルエンザの重症患者では、肺炎、多臓器不全などの症状が報告されました。今回のH7N9型の感染でも多数の患者が亡くなっています。
● 感染源は?
感染源は未確定ですが、鳥インフルエンザに感染した、生きた家禽類との接触や、羽や糞を吸い込むことで大量のウイルスが人体に入って発症すると考えられています。
● ヒトからヒトへの感染は?
2月5日のWHOの公表では、現時点で持続的なヒトからヒトへの感染の根拠はないとしています。一方、中国国営の新華社通信(1月27日)は、浙江省でヒトからヒトへの限定的な感染例がみられたと報じました。
● うがい、手洗い、鼻の穴の洗浄を ● 十分な睡眠で免疫を高める ● 発症したら出勤、登校を控える |