13日の金曜日といえば、欧米では悪いことが起こる不吉な日とされている。イエス・キリストが十字架に磔にされて殺されたのが、13日の金曜日と信じられているからだ。1月13日の金曜日にも、多くのユーロ圏加盟国の首脳たちにとって、衝撃を与える出来事が起きた。
米国の信用格付け会社「スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)」が、ユーロ圏に属する9カ国の信用格付けを一斉に引き下げたのだ。
フランスとオーストリアは、最高度の信用格付けAAAを奪われた。ユーロ圏の問題児、イタリアが一挙に2段階格下げされてBBB+となったほか、スペイン、ポルトガル、キプロスの格付けが2段階引き下げられた。マルタ、スロバキア、スロベニアも1段階転落。S&Pは、スロバキア以外の8カ国の今後の見通しを「ネガティブ(否定的)」と判定しているので、来年の末までにさらに格付けを引き下げられる危険がある。<.
信用格付けが下がると、政府は将来国債を発行して資金を調達する際に、以前よりも高い金利を支払わなければならなくなる。「格下げショック」に襲われた国々の首脳は「理解できない」「前例のない危機だ」と述べ、S&Pの判定に対して強い不快感を表明した。
ドイツはからくも最高位のAAAを守り、今後の見通しも「安定的」という判定を受けた。なぜS&Pは、9カ国とドイツの格付けにこのような差を付けたのだろうか。同社は、フランスやイタリアなどの債務危機への対応を、「不十分」と判断している。EUは、昨年12月9日にブリュッセルで開かれた首脳会議で、加盟国の財政赤字や公共債務に歯止めを掛けるための対策は打ち出した。しかし国内総生産(GDP)を増やすために、経済競争力を強化するという点については、具体策が発表されていない。
ヨーロッパは、今年深刻な不況に襲われると見られているので、経済成長を維持するための政策は非常に重要である。ドイツでは輸出と国内消費が好調であるために、2011年の経済成長率が3%に達し、EU平均を上回った。税収も回復しているので、財政赤字比率はGDPの1%に下がり、債務比率も80%を割る見通しだ。つまりドイツ経済は、深刻な不況に耐える活力を内包しているのだ。これらの経済指標が、ドイツとほかの9カ国の間で明暗を分けた。
だがドイツも喜んではいられない。S&Pは1月16日に、過重債務のために破たんの危機に陥った国を救うための緊急融資機構「欧州金融安定化基金(EFSF)」からも、AAAの格付けを剥奪したのだ。EFSFの融資額を保証している国の内、AAAを持つ国が6カ国から4カ国に減ったためである。EUは「この融資機構は格付けが下がっても、十分な資金力を持っている」と説明するが、格付けが低くなるとEFSFへの投資家を見付けるのがこれまでよりも難しくなる。
それにしても、米国の格付け会社の影響力は増す一方だ。民間企業の意見が国の財政政策を大きく左右し、破たんの瀬戸際にまで追い込みかねない。EUも各国政府も、マーケットの力の前には、なす術もない。
一方、債務の削減をめぐるギリシャと民間投資家の間の交渉は非常に難航している。ギリシャ政府が早急に債務交換計画について投資家と合意できなければ、デフォルト(債務不履行)の危険が再び浮上する。ユーロ危機は、今年も世界経済にとって台風の目であり続けるに違いない。
27 Januar 2012 Nr. 903