ジャパンダイジェスト

快適ITライフのために知っておきたい
初めての情報セキュリティー

PCのウイルス感染による個人情報の漏えい、インターネットを利用した犯罪などが急増する昨今、ITの専門家だけでなく、使う側のITリテラシーが問われている。ITコンサルタントのドクター・グンプ氏に、人類総インターネット時代の新常識を学ぶ。

Dr. Hermann GumppDr. Hermann Gumpp ミュンヘン在住の IT コンサルタント、起業家。日独産業協会における IT ワーキンググループを率い、ミュンヘン大学(LMU)や日本企業での技術導入アドバイザーならびにGDPR Toolbox というデータ保護のプラットフォームをEnobyte GmbH (enobyte.com) で共同開発中。東京の国立情報学研究所(NII)での研究開発経験もある。専門家チームとの共同研究を進めながら、あらゆるコンピューティング・プラットフォームにプロトタイプを導入している。

第14回 Torで匿名性のWebブラウジング

さまざまなウェブサイトがユーザーについての情報を保存したりスパイすることが可能となり、ますます多くの人がインターネット上のプライバシーの取り扱いに関して懸念を抱いている現代。広告目的のトラッキングを拒否するブラウザ拡張機能については、以前の記事で紹介した(詳細は本誌1068号を参照)が、更に高度な匿名性のWebブラウジングを求める場合は、「Tor」のネットワークの利用が有効である。Torはインターネット上での通信経路の特定を匿名化するオープンソースの基準、およびソフトウエアの名称である。

この匿名通信の根本的概念は、個人情報を暗号化して、その通信経路を玉ねぎの皮のように多層化する事によって、個人情報の特定を困難にする事である。この玉ねぎのイメージから、オリジナルのソフトウエア開発プロジェクトは「The Onion Router」と名付けられ、その頭文字を取って「Tor」となった。

Tor ネットワークをより具体的に説明するために、まずはインターネットの仕組み、および用語を下記に手短にまとめよう。

Webブラウザ閲覧者がデバイスのスクリーン上で、Webを見聞きして操作するインターフェース。例:IE、Chrome、Firefoxなど)
Web サーバ閲覧者が求める情報が保管されている場所。
Web クライアントWebブラウザからWeb サーバへ要求を伝える伝令。

端末(ノード)
世界中に広がるTor端末(ノード)を通じて匿名性を確保

具体例を挙げると通常、記事をインターネットで読むにはWeb ブラウザから記事のページアドレスにアクセスするのだが、その際、Web クライアントが、直接Web サーバに読者(閲覧者)のIP アドレスやパソコン、その他の情報を送って、読者の要請した情報(ページのコンテンツ)が読者の元へ届くように情報の交換が行われる。ここでWeb サーバに読者の情報が特定されてしまうのである。

これに対し、Tor ブラウザを使った場合、Tor クライアントは読者の情報を暗号化して、世界中に散在しているTor 端末(ノード)から端末へ仮想回線接続し、通信は複数の端末を経由する事になる。これにより、要請の宛先のWeb サーバ(ページのコンテンツを持つサーバ)は、元の情報要請者(読者)が分からない状態となり、読者は匿名となる。

Tor ネットワークは世界中にサーバがあり、ジオブロッキング(Web サイトの地理的制限)を回避する事ができるが、その反面で世界をまたぎ、寄り道をしながら送受信するので、スピードが遅くなる事は否めない。

Torは当初、米海軍調査研究所によって、インターネット上の米国情報通信を守るために開発されたが、2004年以降は無料ライセンスでリリースされているので、無料でだれでもダウンロードすることが可能である。

Tor ダウンロードページ:www.torproject.org

 
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