第18回 ドイツ発のハッカー集団、
カオス・コンピューター・クラブ
ドイツにおけるインターネットの歴史は、カオス・コンピューター・クラブ(Chaos Computer Club=略称CCC)とは切っても切れない関係にあることをご存知だろうか?
このCCCは、1981年にハンブルクでバウ・ホラント氏(Wau Holland)を中心に電子技術マニア、ハッカー、技術フリークが集まり設立された。
彼を一躍有名にしたのが、CCCメンバーがNASAや銀行、ドイチェ・ポストなど、国内外の大企業のコンピューターネットワークへの侵入を成功させた事件だった。
しかしその結果、逮捕者や家宅捜査の対象となるメンバーが出てきただけでなく、ハッカー倫理をめぐって内部でも争いが起こるようになる。その理由としては、良いハッカーの務めというのは、セキュリティーホールを発見し、指摘することであり、それによって不当に利益を得たり他者に損害を与えてはいけないからだ。
1984年から今日にいたるまで、CCCは毎年、カオス・コミュニケーション・コングレス(Chaos Communication Congress)と呼ばれる数日間にわたって開かれる国際会議を開催しており、これまでに延べ1万人以上の人々が参加している。
会議の目的は、ハッカー同士の交流と情報技術がもたらすチャンスやリスクを一般に向けて発信すること。CCCは官公庁、企業、ハッカー、ハッキング被害者の間を仲介し、より責任感のある技術の活用を促進しようとしている。
今日では、CCCのハッカーたちは専門家と認められ、ドイツ政府のアドバイザーを務める団体にまで成長した。
現在はドイツ・ベルリンに本部を置き、約5500人ほどのメンバーを抱えるヨーロッパ最大のハッカー集団である。
データ保護やデータセキュリティー、暗号技術の普及に努めるばかりではなく、デジタルアートやITを活用した若者の就労支援プロジェクトにも力を入れるロビー団体として、高い影響力を持つ。今やドイツのデジタル社会における重要機関の一つと言っても過言ではない。
2015年12月にドイツ・ハンブルクにて開催された
「カオス・コミュニケーション・コングレス」の様子
The Chaos Computer Club e. V.: www.ccc.de