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現代芸術芸術祭へ行こう!5年に一度の現代アート展「ドクメンタ14」カッセルで開催

現代芸術祭へ行こう!

2017年はカッセルで5年毎に開催される「ドクメンタ」と、ミュンスターで10年毎に開催される「ミュンスター彫刻プロジェクト」の2大芸術祭が同じ時期に重なるスペシャルイヤー。美術館だけでなく、公共空間を含む街全体を舞台に長期間にわたって開催されるこれらのイベントは、美術ファンだけでなく誰もが気軽に自由にアートを楽しむことができる。この夏のドイツならではのチャンスをどうぞお見逃しなく!(取材・執筆:坪井由美子)

documenta 14
ドクメンタ 14

ドイツ中部の都市カッセルの街全体を展示会場として、5年に一度100日間にわたって開催される世界最大規模の現代アート展。最新の現代美術の動向を知る上で「ヴェネツィア・ビエンナーレ」と並び、重要とされる。14回目となる今回は、ドクメンタの歴史上初の試みとなる海外(ギリシャ・アテネ)での2都市開催が話題となっている。

カッセル

ドクメンタについて知ろう!

ドクメンタとは?

第1回目はカッセルの芸術家で教育者でもあったアーノルド・ボーデの主導で1955年に連邦園芸博覧会の一環として開催。戦争被害が大きかったカッセルの復興という意味合いも強く、ナチスドイツにより虐げられた20世紀前衛美術の回顧展としてNYの美術館から借りた作品が展示された。ドイツからアートが消えてしまった長いナチス時代を経験した人々にとって、戦後初めて現代美術と出会った場がこのドクメンタだったのだ。

ドクメンタが「特別」な理由

はじめは4年毎に開催され、ボーデがディレクターを務めていたが、5回目からはその都度異なる芸術監督が就任し、テーマを強く打ち出した「毎回新しく始まる」現代美術展へと変化していった。これまでの参加者にはピカソやヨーゼフ・ボイス、アイ・ウェイウェイといった著名芸術家が多数。商業主義なイベントとは一線を画し、常に鋭いテーマを掲げて挑戦し続ける姿勢が高く評価されている。衝撃作品も多く賛否両論を巻き起こすこともしばしば。

今回のテーマは「アテネから学ぶ」

芸術総監督に選ばれたクンストハレ・バーゼルのディレクター兼チーフキュレーターのアダム・シムジックが挑むテーマはずばり「アテネから学ぶ」。財政危機、難民問題など欧州が直面している問題の中心地的な役割を担うアテネで「ドクメンタが、アートが、今まさに生きていることを世界中に見せたい。壊れている場所で新しく再生するものを見せたい」と語るシムジック氏。私達はアテネから何を学べるのか……? その答えをカッセルで探そう。

アテネとカッセルを結ぶアートの架け橋

アテネではカッセルより一足早い4月8日~7月16日にかけて47カ所を会場として開催された。カッセルではテーマである「アテネに学ぶ」を反映した作品が多く見られる。メイン会場のフリデリチアヌム美術館ではアテネ国立現代美術館の作品が展示され、その目の前の広場には禁書で築かれたパルテノン神殿が登場。そのほかにもカッセルの木の枝を切ってアテネの木に接ぎ木して育てるというパフォーマンスが行われるなど、2都市間はアートの架け橋で結ばれている。「政治や経済にできないことをアートが成し遂げられるかもしれない」という主催者の言葉は、ドクメンタの意図そのものだろう。

開催期間:2017年6月10日~9月17日
開催時間:10:00~20:00

入場料:1日券22ユーロ、2日券38ユーロ、夜間入場券10ユーロ(17:00以降)
ファミリー入場券 50ユーロ、全期間入場券 100ユーロ(※10歳以下は入場無料)
アクセス:フランクフルト中央駅からカッセルのヴィルヘルムスヘーエ駅までICEで約1時間半
www.documenta14.de

ドクメンタ 14  必見エリア6選

1

フリードリヒス広場
Friedrichsplatz

展示会場や大型の野外作品が多く集まり、案内所やショップも設置されているフリードリヒス広場はドクメンタの中心地。ナチス時代に焚書が行われた負の歴史がある広場に堂々とそびえる「The Parthenon of Books」は今回のドクメンタの象徴的な作品。世界中から集められた禁書で築かれた実物大のパルテノン神殿には、会期中も寄付された本が随時追加されていく(書籍リストはHPから閲覧可能)。メイン会場のフリデリチアヌム美術館には、アテネの国立現代美術館のコレクションを展示。紛争や民主主義を問う作品が多く、これまで以上に政治的・社会的メッセージが強く感じられる。一見目立たないが、建物正面に刻まれた名称がフリデリチアヌムから「BEING SAFE IS SCARY」に変えられている点もお見逃しなく。

The Parthenon of Books
「The Parthenon of Books」

2

ドクメンタハレ
documentaHalle

広場の南に位置するドクメンタハレは、一階大ホールの展示が圧巻。大型作品が並ぶ中で注目してほしいのがラップランドの先住民サーミ人、Britta Marakatt-Labbaによる「Histolia」。サーミの暮らしを繊細な刺繍で綴った一見可愛らしい作品だが、20m超もの大作を端からじっくり見ていくと、サーミの過酷な歴史が浮かび上がってくる。ホール前の広場で異彩を放つ積み上げられた下水管は、イラク出身Hi wa Kの作品「When We Were Exhaling Image」。生活感たっぷりのこの空間をのぞいた誰もが、難民キャンプの生活を想像することになるだろう。

Britta Marakatt-Labbaによる「Histolia」
Britta Marakatt-Labbaによる「Histolia」
「When
We Were Exhaling Image
「When We Were Exhaling Image
 
 
 
3

カールスアウエ公園
Staatspark Karlsaue

フルダ川のほとりにあるカールスアウエ公園の美しいオランジェリー宮殿前に設置された作品は、スペイン植民地時代の南米で奴隷が働かされていた造幣機を再現した「Mill of Blood」。ヨーロッパ啓蒙主義の象徴ともいえる宮殿との対比が興味深い。宮殿から伸びる広大なカールスアウエ公園内にも新旧の野外作品が点在しているのでお見逃しなく。水と緑のマイナスイオンをたっぷり浴びながら、宝探し気分でアートとの出会いを楽しもう。

Antonio Vega Macotela 「Mill of Blood」
Antonio Vega Macotela 「Mill of Blood」

4

カッセル中央駅
Kassel Hauptbahnhof

ドクメンタの旧作品にして今やカッセルのシンボルとなった「Man walking to the sky」がそびえるのは、カッセル文化駅(Kulturbahnhof)の別名を持つカッセル中央駅。駅前に置かれたコンテナに次々と吸い込まれていく人々……その先のトンネルを抜けた先に現れるのは、なんと地下鉄駅の跡地。線路やホームがそのまま残された特異な場所で、軍事侵略など世界のさまざまなシーンを14のチャンネルでコラージュしたMichel Auderの作品「The Course of Empire」ほか、映像インスタレーションが見られる。

カッセル中央駅 Jonathan Borofsky「Man walking to the sky」
カッセル中央駅 Jonathan Borofsky「Man walking to the sky」
カッセル中央駅
カッセル中央駅
 
 
 
5

ノイエ・ガレリー
Neue Galerie

作品数が膨大なノイエ・ガレリー周辺は時間をかけてじっくり鑑賞したい。ナチスがユダヤ人から奪った知的財産の持ち主をリサーチしたプロジェクトを作品として発表した「Rose Valland Institute」、政治家ほか実在の人物をキャスティングした「A War Machine」や「Real Nazis」など、政治を痛烈に批判する作品が多く集められ見応えたっぷり。北へ進むと、麻袋ですっぽりと覆われた建物が現れる。これは食料貿易のグローバル化を問うガーナ出身Ibrahim Mahamaの作品「Check Point Sekondi Loco」で、グリム兄弟広場のすぐそばで異彩と異臭を放っている。

Ibrahim Mahamaの作品「Check Point Sekondi Loco」
Ibrahim Mahamaの作品「Check Point Sekondi Loco」
「A War Machine」
「A War Machine」
 
 
 
6

ノイエ・ノイエ・ガレリー
Neue Neue Galerie

ドクメンタによって命名された会場名が示すように、今回最も多くの新作が集まるのが、移民街ノルトシュタットにあるノイエ・ノイエ・ガレリー。旧郵便局を改装したコンクリートの無機質な空間に置かれた作品群が、切実なエネルギーを放ちながら鑑賞者に迫りくる。個人の記憶を追うことで歴史や国家を浮かび上がらせる作品を多く発表しているタイのアーティストArin Rungjangの映像インスタレーションもぜひ見てほしい。ノルトシュタット地区には他にも強烈な作品を有する会場が点在しており今回の見どころの一つとなっている。

Arin Rungjang「And then there were none」
Arin Rungjang「And then there were none」

最終更新 Dienstag, 08 August 2017 15:00
 

現代芸術芸術祭へ行こう!10年毎に開催されるミュンスター彫刻プロジェクト2017

現代芸術祭へ行こう!

2017年はカッセルで5年毎に開催される「ドクメンタ」と、ミュンスターで10年毎に開催される「ミュンスター彫刻プロジェクト」の2大芸術祭が同じ時期に重なるスペシャルイヤー。美術館だけでなく、公共空間を含む街全体を舞台に長期間にわたって開催されるこれらのイベントは、美術ファンだけでなく誰もが気軽に自由にアートを楽しむことができる。この夏のドイツならではのチャンスをどうぞお見逃しなく!(取材・執筆:坪井由美子)

Skulptur Projekte Münster 2017
ミュンスター彫刻プロジェクト2017

ドイツ西部にある大学都市ミュンスターで10年毎に開催される彫刻プロジェクトは、その成り立ちと質の高さから世界的に有名なパブリックアート展。近年日本や世界各地で急増している地域の芸術祭のモデルともいえる存在だ。第5回目となる今回は、第1回目から運営に関わるカスパー・ケーニヒを芸術監督に迎え、変化し続ける社会とアートの関係性を問う。

ミュンスター

ミュンスター彫刻プロジェクトについて知ろう!

ミュンスター彫刻プロジェクトとは?

ことの発端は約40年前、市が買い上げ設置しようとした有名アート作品に対する住民の反対の声からはじまる。その後さまざまな議論を経て1977年に「市民と公共空間、現代アートの関係性」を考える第1回ミュンスター彫刻プロジェクトが開催された。こうした背景から、同プロジェクトでは参加アーティストがミュンスターに長期滞在し、街の歴史や文化を十分知った上で市民と対話しながら作品をつくり上げるのが特徴。美術館の中だけでなく公園や庭、歩道、商店など街のいたるところに作品が展示されるため、市民は普通に歩いているだけでも意図せずしてアートに出会うことができる。しかも展示会場の入場はすべて無料。

自転車でアートめぐり!?

ドイツ歴史古都連盟の一つであるハンザ都市ミュンスターは、世界で一番住みやすい街に選ばれたこともある環境にやさしい街。学生街ならではのオープンで活気ある雰囲気が魅力だ。自転車の街としても有名で自転車の数はなんと人口の2倍もあるのだとか。広範囲にアート作品が点在している本イベントの開催期間中は、専用のレンタサイクルショップも設置される。事前に気になるアーティストの作品がある場所をチェックしておくと効率的にまわれるはず。切妻屋根の建物が並ぶ旧市街や世界最大のピカソのグラフィック作品コレクションを所蔵する美術館、広大な湖や公園を自転車でめぐりながら思う存分アートを楽しもう!

開催期間:2017年6月10日~10月1日
開催時間:月~日曜 10:00~20:00 金曜10:00~22:00

入場料:無料
アクセス:デュッセルドルフ中央駅からミュンスター中央駅までICで約1時間半
www.skulptur-projekte.de

ミュンスター彫刻プロジェクト2017必見アート7選

1

自然の中にそびえる「映像+音楽」の融合作
Harsh Citation, Harsh Pastoral,
Harsh Münster 荒川 医

芝生の中に置かれた数枚のLED スクリーン。映像が音楽を奏でるミュージカル形式のインスタレーションからは、芸術的な美しさとともに作家の批判精神が感じられる。アー湖の西端というアクセスしにくい場所にもかかわらず、はるばるやってくるアートファンが多数。
Handwerkskammer Bildungszentr.駅 Mecklenbecker通り近く

Britta Marakatt-Labbaによる「Histolia」
Britta Marakatt-Labbaによる「Histolia」
Britta Marakatt-Labbaによる「Histolia」
2

そこに暮らす人々の本音から考えるアート
How to Live Together 田中 功起

8名の参加者とともに共同生活を送りながら難民問題について話し合う様子を映し出した作品。私達はそのリアルな記録を追うことで、彼らとともに共生の可能性を考え、コミュニケーションと対話の大切さを痛感することになるだろう。
Aegidiimarkt A / LWL-Museum駅 Johannis通り近く

How to Live Together
How to Live Together
3

こことは違う異空間への入り口
N. Schmidt Pferdegasse 19 48143 Münster Deutschland Gregor Schneider

2001年の「ヴェネチア・ビエンナーレ」で金獅子賞を受賞したグレゴール・シュナイダーは、代表作「Haus u r」をはじめ「部屋」をつくることで知られる作家。ミュンスターの美術館につくられたもう一つの世界へ足を踏み入れ異空間を彷徨い、その不思議な感覚を体験してみてほしい。
Aegidiimarkt A / LWL-Museum駅 Pferde通り近く

N. Schmidt Pferdegasse 19 48143
Münster Deutschland
N. Schmidt Pferdegasse 19 48143
Münster Deutschland
4

先の読めない仕掛けにわくわくする実験作
Matrix CAMP

北海道生まれのインド人アーティスト、アショク・スクラマンがシャイナ・アナンドと結成したCAMPは、昔の劇場の壊れた壁が残る新劇場のバルコニーを舞台に、新旧を結ぶ実験的な作品を発表。黒いケーブルの先に何が現れるか……ボタンを押して試してみよう。
THEATER Münster駅 Neubrücken通り近く

Matrix / CAMP
Matrix / CAMP
5

リアルとファンタジーが交差する世界へ
Cosmic Generator Mika Rottenberg

肉体、労働、生産などの関係性を提言し「価値」についての追及を続けるミカ・ロッテンバーグは、アジアショップの一室で映像インスタレーションを上映。現実とファンタジー、不条理が交差する鮮烈な世界観は、一度体験したらクセになること間違いなし。
Kolpingstr.駅 Garten通り近く

Cosmic Generator / Mika Rottenberg
Cosmic Generator / Mika Rottenberg
Cosmic Generator / Mika Rottenberg
6

アーティストと市民の合作!?
Speak to the Earth and it Will Tell You (2007-2017) Jeremy Deller

人類学の研究をテーマに掲げるジェレミー・デラーは、クラインガルテン(市民庭園)の利用者に2007年〜2017年の日記をつけてもらうというプロジェクトを実行。10年をかけてアーティストと市民でつくり上げた、まさにこの芸術祭ならではのアートだ。
Pumpenhaus / Lublinring駅 Lublinring近く

Speak to the Earth and it Will Tell You
Speak to the Earth and it Will Tell You
Speak to the Earth and it Will Tell You
7

IT を駆使した最先端アートを体感
After Alive Ahead Pierre Huyghe

今や現代アートの巨匠の一人に数えられるピエール・ユイグの会場には、今回一番長い行列ができている。元スケート場の巨大な空間に出現したのは、SF映画のセットのような壮大なインスタレーション。謎の生物が飛び交う専用アプリを使って宇宙旅行を楽しもう。
Technologiepark駅 Steinfuter通り近く

After Alive Ahead
After Alive Ahead
最終更新 Dienstag, 08 August 2017 14:59
 

【保存版】ドイツ精肉事典 Fleisch

ドイツを味わい尽くそう! 精肉辞典

保存版
FLEISCH

ドイツ料理といえば、肉!たっぷり山盛りの肉の盛り合わせが名物として知られているが、素材の良さが繊細な味わいを生み出し、食が進む。今回はドイツ人が好む「牛」「子牛」「豚」「鳥」に焦点を当てて、各部位の調理法をおさらいしてみよう。(本文:ドイツニュースダイジェスト) 

牛 Rind

ドイツの牛肉事情は、日本と大きく違う。まず、赤身が一般的で、脂(さし)の入った肉はほとんどみられない。店頭に「薄切り肉」のパックはなく、グリルや煮込みなどに適した豪快な肉が塊りで売っている。和牛も人気だが、かなり高価。

1首肉 Rinderhals / Kamm / Nacken

首肉首肉は蒸し煮で食べることが多い。煮込み料理では弱火でじっくり火を通すと味わい深くなるため、シチューや鍋料理(アイントプフ)に適している。

2上部ばら肉 Querrippe

蒸し煮で利用することが多く、野菜たっぷりのスープを作ったり、豆類を入れて蒸して煮たり、ポトフにする。

3胸肉 Rinderbrust

蒸し煮で数時間煮る料理が多い。また数日間マリネにしてから蒸し煮にしても◎。

4上部背肉 Fehlrippe

ジューシーな部位のため、薄切りにして焼くか、スパイシーなマリネ液に浸して焼くのがおすすめ。シチューやグーラシュなどの蒸し煮にも適している。

5あばら肉 Hochrippe / Vorderrippe

あばら肉

第8~12助骨までのジューシーな部位。骨付きのままグリルしたり、バターで焼いてから蒸し煮にして、トマトソースやワインベースのソースと合わせるのもおすすめ。

6サーロイン Rostbraten / flaches Ende

非常に柔らかい部位で、ステーキ肉として人気。焼き色の目安はピンク色になるくらいがベストで、加熱しすぎると硬くなるので注意! 小麦粉をはたいてソテーし、ワインソースを合わせても◎。

フィレ

7フィレ Filet

柔らかく、最高の味わいが楽しめる。ローストビーフやゲシュネッツェルテス(薄く切った肉を生クリームと白ワインで煮て、キノコと玉ねぎを炒めて入れる)にしてもおいしい。

89牛バラ肉 Flanke / Bauchlappen

牛バラ肉

日本では薄切りで売っている牛バラ肉。ドイツでは、ステーキやバーベキューに人気の部位。

8上方腹部肉 Knochendünnung

牛の腹の部位「ともばら」の上部で、赤身と脂のバランスが良く、焼肉やステーキに適している。日本では「上カルビ」と呼ばれる部位。

9腹部肉 Fleischdünnung

あばら骨の端部分で、煮込み料理や蒸し煮に最適。骨の近くにある肉なのでスープやポトフにすると出汁が出て味わい深い。業者がソーセージを作るために利用することもある。

10肩甲骨周りの肉 Schulter / Bug / Falsches Filet / Schaufel

肩甲骨の下の部分は、脂肪が少なめな赤い肉と、比較的柔らかい肉がある。煮込み料理やローストに利用することが多い。また、クリーム煮のゲシュネッツェルテスにも適していている。

11もも肉 Ober / Unterschale

柔らかい上部は、ステーキや赤身のタルタルに。下部はグーラシュに最適。またローストする時はベーコンを巻いて焼くと、よりジューシーな味わいになる。薄切りにして、牛肉のロール煮リンダ―ローラーデンにも使われる。

12もも肉(クルミ) Nuss

ステーキに人気の部位。ローストビーフや串焼きにしても本来の味を楽しめる。

牛バラ肉

13ランプ Hüfte / Schwanzstück

腰肉は少し繊維質ではあるが、ステーキや蒸し煮にすることが多い。酢や香辛料を加えて作るマリネ液で数日間漬けたものを焼くザウワーブラーテン(写真)もこの部位を使うことが多い。

14すね肉 Hesse

骨から出る味を堪能するため、ポトフを作る際に利用することが多い。また赤ワイン煮込みやビーフシチューなど、じっくりと煮込む料理にも最適。

牛ひき肉の種類

牛ひき肉生食用赤身ひき肉
Tatar

生で食べる牛ひき肉。鮮度が大切で肉屋で購入するのがベター。

牛ひき肉 牛ひき肉 Rindergehacktes / Rinderhack

加熱用のひき肉。豚と牛の合いびきもある。

子牛 Kalb

子牛は生まれて1年未満の、草を食べずにミルクだけで育った牛。肉も内臓も濃赤な成牛と比べて灰色がかったピンク色。非常に柔らかくレバーを例に上げても成牛の5倍ほどの値が張るが、柔らかさと繊細な風味が魅力。

子牛 Kalb

1首肉 Halskoteletts

グーラシュ

煮込みやソテーなど、あらゆる料理に適している。グーラシュ(写真)やビーフシチューにもぴったり。子牛肉をスープで煮込み、パイの器に入れたラグー・ファンは、ベルリンの郷土料理。

2背中肉 Kalbsrücken

背中部分の肉は特に繊細な味わいで、蒸し煮やソテーに適している。

ウィーナーシュニッツェル3もも肉(足の前側、足の裏の筋肉も含む) Keule

上部は非常に柔らかく、ウィーナーシュニッツェル(写真)に使われることが多い。そのほかには、小さくスライスしたもも肉をマッシュルームとクリームソースで煮る料理も有名。クルミと呼ばれる部分はグーラシュやソテーにぴったり。

4すね肉 Vorder / Hinterhaxe / Kalbshaxe

すね肉 子牛と言っても、すね肉の大きさは豚の3倍で、1本約1.5キロ。すね肉は時間を掛けて煮込むと、とろとろになり、ゼラチン質の骨の髄は好きな人にはたまらない味。丸ごと焼いて豪快に食べたり、スライスしてオッソ・ブーコにしてもOK。

5腹肉 Dünnung

子牛の腹肉は、ローストに適している部位。

クリーム煮6肩肉 Schulter / Bug

煮たり蒸し煮にするのがポピュラーな調理法。この部位は特に柔らかく、クリーム煮にするととてもおいしい。またグーラシュにもぴったり。

7胸肉 Brust

胸肉は、薄くスライスして、野菜やチーズなど、さまざまな食材を巻いて焼くとヘルシーにいただける。またシチューなど煮込み料理にも適している。

フィレ肉 Filet8フィレ肉 Filet

子牛のフィレは高価だが、ステーキとして焼くと最高。ただし焼き過ぎると固くなるので、火加減に注意。

牛・子牛の内蔵

牛タン Rinderzunge

ドイツでも、牛タンを食べる習慣があり、規模の大きなスーパーではパックに入って売られている。ソテーやグリルでいただくか、タンシチューにしてもOK!

牛の肺 Rinderlunge

ミュンヘンなど、南ドイツでは「ゾイレス・リュンゲール(Saures Lüngerl)」という牛の肺と心臓(Rinderherz)を使ったもつ煮込みのような郷土料理がある。

子牛のレバー Kalbsleber

風味がぴかいちな子牛のレバー。火を通すとぱさぱさになってしまうこの部位は、3分を目処にさっと加熱し、シンプルな味付けで仕上げるのがおいしくいただくコツ。

豚 Schwein

ドイツで最もポピュラーなのが豚肉で、厳格な基準によって高品質に保たれた豚肉が、安価で手に入る。各地の名物料理、ソーセージに使われ、頭からしっぽ、血や内臓まで、余すところなく食される。

豚 Schwein

12頭部 Schweinekopf

頭部は鼻、頬、耳があるが、豚の頭の肉をゼリーで固めたシュヴァインス・コプフ・ジュルツェ(Schweinskopfsülze)は、スーパーでもビン詰めで売られている。頬肉はシチューに使用することも。

3背脂肉 Rückenspeck

棒状の背脂を赤身肉に差し込む(zum Spicken)など、この部位の脂肪分をほかの部位に加えることで、よりうまみと柔らかさがプラスされる。

4首肉、肩ロース Halskoteletts / Schweinenacken

首肉、肩ロース程よい脂身と柔らかい肉質が特徴の豚肩ロースは、日本人好みの部位。ステーキ、豚カツなど、どんな料理にもよく合う。骨あり・なしの両方で売っており、値段も手ごろ。

5あばら肉 Dicke Rippe / Schweinekotelett

あばら肉肩と腹に挟まれている繊維の粗い部位。煮る、焼く、蒸す、グリルなど、さまざまな調理法に適応する便利な部位。スパイシーなシチューにも合う。

6背肉 Stielkotelett

厚みのある背肉は、骨付きのままでシンプルに塩コショウでグリルにするのがおすすめ。薄く衣を付けて焼いてもOK。

7腰肉 Lendenkotelett

骨付きだが肉と骨は分けやすいので、調理もしやすい。柔らかな肉質なのが特徴で、バターで焼くか、お好みのソースを絡めてグリルするのがおすすめ。

フィレ8フィレ Schweinefilet

繊細で柔らかな肉質のため、フライパンでさっと火を通すだけでも一品出来上がる。マスタードや生クリームとの相性が良い。

9ばら肉 Schweinebauch

ばら肉あばら骨周辺の肉で、脂身と赤身が交互になっているため、三枚肉とも呼ばれる。よく脂が乗っており、ベーコン(Speck / Frühstücksspeck)の材料にも。ドイツでは、グリル用のスライス以外だと、皮やあばら骨が付いたブロック状で売られていることが多い。皮は、こりこりとした特有の食感があり、コラーゲンが豊富な部位。

10胸肉、あばら骨肉 Schweinelappen / Schälrippen

豚の腹部に近いあばら骨を薄く帯状に切り取ったもので、グリル用に味付けしたものは、「スペアリブ」として売られている。日本でスペアリブと言うと、前足寄りのあばら肉(Dicker Rippen)を使った豪快な料理のイメージがあるが、Schärlrippenは小ぶり。ソーセージの材料としても使われる部位。

肩肉、腕肉11肩肉、腕肉 Schweinebug

豚の肩肉は少し硬めで脂身は少ないが、うまみのある部位。薄切りにして調理、または豪快にオーブンでじっくり焼いてもOK。ドイツでは、黒ビールをかけて焼くレシピもある。香辛料はクミンもよく合う。

もも肉12もも肉 Ober / Unterschale

豚のももは脂肪が少ない赤身肉。ヘルシーかつビタミンBなど栄養価が豊富。もも肉の上部(Oberschale)は、シュニッツェルを作るのに適した部位で、シンプルにソテーにしても味わい深い。もも肉の下部(Unterschale)はグリルするのに最適。

すね肉13すね肉 Eisbein

すね肉の代表的なドイツ料理は、アイスバイン(塩ゆでのすね肉)とシュバイネハクセ(脚をローストしたもの)。じっくりと火を通したすね肉は柔らかく、コラーゲンたっぷり。

豚足14豚足 Spitzbein

ゼラチンで固めたジュルツェ(Sülze)や燻製、塩漬けにしたものなどがあるが、近年のお肉コーナーでは生の豚足を見かけることはほとんどない。

しっぽ15しっぽ Schweineschwanz

グリルか蒸し煮にするのが一般的。アイントプフのような具がたくさんのスープに入れて調理するとおいしくいただける。

豚ひき肉の種類

生の豚ひき肉生の豚ひき肉 Mett

ドイツでは生の豚ひき肉をパンに載せて食べる。鮮度が大切なので、購入後はすぐに消費するようにしよう。

豚ひき肉豚ひき肉 Schweinegehacktes / Schweinehack

加熱調理用のひき肉は、「Hackfleisch」として販売されている。

鳥類 Geflügel

七面鳥 Puten (Truthhahn)

七面鳥は鶏肉に似て淡泊で柔らかいが、コクと肉らしい食感があり、値段も手ごろ。英・米では感謝祭やクリスマスに食卓を彩る定番の食材。丸焼きにする時は180℃のオーブンで3時間前後、じっくり焼くのがポイント。

七面鳥

1頭部 Kopt

料理にはほとんど使われない。

2もも肉 Oberkeule

もも肉ジューシーな味わいのこの部位は、蒸し煮やロースト、グリルに特に適している。また骨を取り除いてサイコロ状に切り、串焼きにしてもおいしい。ほかにも皮と骨を取り除き、ぶつ切りにして煮込み料理にしたり、焼いて照り焼きソースをからめても美味。

3すね肉 Unterkeule

すね肉 Unterkeule

ももと同じような見た目。シチューやグーラシュなどの蒸し煮にすると、うま味が引き立つ。ローストにすると見た目は迫力満点。ただし筋が多くて食べにくいので、おもてなしには不向き。

4手羽 Flügel

皮に含まれる脂によって、部位の中ではカロリーが一番高く、ジューシー。グリルしても、フライにしてもおいしい。もちろん、もも肉のように蒸し煮もOK。

5胸 Brust

胸脂肪が少なくカロリーは低め、たんぱく質が多い。シュニッツェル、ステーキ、ジューシーさを生かしてローストにしても。ローストする時の調味料としてはカレー粉、ナツメグなどが合う。子牛のような風味の胸肉は、薄切りにしてチキンカツやソテーにしてもおいしい。

七面鳥のひき肉 Puten-Hackfleisch

七面鳥のひき肉鶏ひき肉の販売が禁止されているドイツで、その代打になるのが七面鳥のひき肉。鶏肉と比べて肉質は若干粗めだが、コクがあるのが特徴。胸肉を使っているので脂肪分が少なく、ミートソースやロールキャベツなど、ひき肉の定番料理もさっぱりヘルシーに仕上がる。

鶏 Hähnchen

鶏 Hähnchen鶏の丸焼き(Brathähnchen)はドイツの肉屋や屋台でよく見かける料理。半身でも買えることが多い。バイエルンでは鶏の丸焼きをバウエルン・ヘンドル(Bauern Hendl)と呼び、ビアガーデンの定番料理。

鶏の心臓(ハツ) Hähnchenherz

レバーより癖がなく、砂肝よりも柔らかいハツは、鉄分やビタミンA・Bを豊富に含む良質なたんぱく源。

若鶏の脚肉 Hähnchenschenkel

若鶏の脚肉は、オーブン焼きが定番だが、唐揚げにもぴったり。

鶏レバー Hähnchen-Leber

鶏のレバーは廉価で低カロリーの上、鉄分、ビタミンA、たんぱく質が豊富。コレステロールやプリン体を避けている人は、取りすぎ注意。

砂肝 Hähnchen Mägen

ほかの内臓と比べて臭みやくせが少なく、コリコリとした食感が特徴。高たんぱく質、低カロリー。じっくり煮込むと柔らかくなる。

ガチョウ Gans

ガチョウ Gans聖マルティン祭(11月11日)やクリスマスのごちそうとして丸焼きにする。11月~新年までは新鮮なガチョウが肉屋に並んでいることが多いが、それ以外のシーズンは冷凍ものが多い。家族用なら胸肉か、骨付きもも肉で十分。さまざまな香辛料を加えた赤ワインに浸し焼くか、キノコ類で作ったソースを掛けていただく。

カモ Ente

カモ Ente丸焼きにすることもできるが、胸肉のロースト(Entenbraten)が一般的な食べ方。良い出汁と脂が出る。ソースは甘めでオレンジ系が合う。また、アジア系のレストランではクリスピーのようにかりかりに揚げてとろみのある辛いソースとあわせて食べるメニューがポピュラー。

最終更新 Dienstag, 11 Januar 2022 15:53
 

ドイツの環境建築

日本とこんなに違う!?いまどきドイツの恋愛&結婚事情

ドイツでは東西ドイツ再統一以降、国をあげて環境にやさしい街づくりを進めています。中でもエネルギー利用量の約4割を占めている建築物は、ドイツの省エネルギー政策を理解する上で欠かせない要素の一つ。今回はそんな省エネルギーな建物、ドイツの環境建築について学び・体感してみましょう。普段何気なく見ていた建築物も違った目線で見ることで、ドイツでの暮らしがさらに楽しくなるはずです。
(編集部:栗原ちひろ)

金田真聡さん監修: 一級建築士 金田真聡さん

建築家・EA partners共同代表、ベルリン在住。1981年生まれ。建設会社設計部に5年間勤務した後、2012年からドイツ・ベルリンに移住し、plajer & franz studioに勤務。大型の集合住宅や省エネ改修の設計を担当した。2016年より、「Environment(環境)> Architecture(建築)」をコンセプトに日独を結んで活動する設計事務所「EA partners」を設立。日独で建築設計に携わる傍ら、ドイツの環境配慮建築に関する講演、リサーチ、文章を執筆。共著に「海外キャリアのつくり方~ドイツ・エネルギーから社会を変える仕事とは?~」、著書に「ベルリン建築日和」、「30歳からの国際化」がある。
masatokaneda.com

エネルギー消費の割合(ドイツ)

エネルギー消費の割合出展:「Energiedaten: Gesamtausgabe Stand:
Mai 2017 Bundesministerium für Wirtschaft und Energie (BMWi)」を基に金田真聡さんが作成したもの

※は工場などの製造過程における熱エネルギー需要を指す

環境建築を知るための
4つのキーワード

ドイツにおける環境建築とは、国が定めた省エネルギー政令(EnEV)の基準を満たした建築物のことを指します。その基準は日本と比べても非常に高いものとなっており、新築はすべて環境建築と呼べる程です。また、空家の数を増やさないため新築の戸数が制限されているドイツでは、現状、環境建築のメインは新築のみならず既存建築物をEnEVの基準を満たすための改修工事になります。このような建築における環境への配慮の背景には、「2050年までにエネルギーの80~90%を再生可能なエネルギーでまかなう」というプロジェクトや、「2021年から始まるゼロエネルギー建築の義務化」など、国策として掲げた目標や、EUでの共通基準があります。では次に環境建築の定義について基本的なポイントをご紹介します。

1環境建築 定義とその基準

Point 1 省エネルギーであること

省エネルギーとは、電気や暖房、給油など普段私達が使用しているエネルギーを減らすこと。それは決して寒さや暑さを我慢することではありません。日本の省エネ対策は家電使用を節約するというイメージがありますが、冬の暖房に必要なエネルギーが全体の8割近くにもなるドイツでは、建物の断熱性を高め、冷暖房や空調に依存しないことで省エネにつなげるという考え方です。つまり冬なら室内の温かい空気を外に漏らさず、夏は暑い空気を室内に入れない、断熱性の高い建物にすること。また断熱性の高い家は室内の温度を一定にキープできるため、冬はヒートショックが起こりにくいという統計もあります。結露しにくい点にはカビの発生を防ぎ喘息やアレルギーにもなりにくいという、健康面でのプラスも。このようにドイツの省エネルギーの概念は「=快適で健康」であることが大前提になります。

Point 2 長寿命であること

ドイツの新築は設備や間取りの変更を除いては、大きな改修なしでも約80年以上使える建物を目標としています。100年以上の古い建築は先にご紹介したとおり、改修工事をして現在の環境建築の基準に近い性能に上げていくという政策が行なわれています。皆さんも古いアパートの外壁を大規模に工事している様子を目にしたことがあるのではないでしょうか? それこそが省エネの改修工事中の状態です。ちなみに日本では約40年くらい経過すると取り壊される建物が多いのが現状です。

Point 3 環境に負荷の少ない建材を選ぶこと

昨今ではさらに一歩進んで、リサイクル可能な素材・材料を採用するなど、環境建築を構成する建材そのものの環境性能に対しても意識が高まっています。単に建築物の断熱性能を高め、エネルギー消費を抑えるだけではなく、従来型の石油・発泡系断熱材の利用を減らすなど、環境への負荷が少ない建材を選ぶといった具体的な動きがあります。そういった配慮をすることで、本当の意味で環境にやさしい建築物と呼べるのではないかと、議論の的になっているのです。

2環境大国 ドイツが環境にやさしい国を目指す理由

ドイツ国内で環境問題や省エネルギーに対する意識が高まった大きなきっかけは、1970年代のオイルショックでした。今ある資源には限りがあることを実感し、現在の省エネルギー政令「EnEV」の前身である「断熱政令」と「暖房・給湯設備政令」が施行。その後も1980年代に起こったチェルノブイリ原子力発電所の事故で、特にドイツ南東部は大きな被害を受けたという背景もあり、環境に対する危機感が国民全体に広がっています。また、キーワード1でもご紹介したようにドイツでは国策として取り組んでいるので「やったほうが良い」ではなく「やらなくてはいけない」政策になります。未来に生きる人々が今の私達同様、豊かに暮らせるための取り組みを現在から進めているのです。

3経済効果 環境建築でドイツ経済が潤う!?

ドイツの古い建築物を今のペースで改修していった場合、今後数十年は工事が続く想定です。つまり新築の戸数を制限しても改修工事が続く限りこの仕事は必要とされ続けます。また、環境建築が広く根付き始めているドイツでは、高い建築技術力と質の良い建材を手に入れることが可能。その高い技術力を海外に向けて発信すれば、ドイツ経済にとってプラスに働きます。ちなみにこの改修工事は補助金が出るなど国からのサポートがあり、大家さんの負担も軽減されるという仕組みになっています。もちろん自分の暮らしているアパートが改修されれば、暖房費が安くなるなど、個人単位で考えた場合にもメリットがあるのです。

アパートの改修工事のイメージアパートの改修工事のイメージ

4省エネ対策 一人ひとりが省エネルギーに貢献できる

例えば電力会社を選ぶ際に、「再生可能エネルギー100%」や「料金の何%は環境対策に投資します」という会社と契約するなど、個人で出来ることもたくさんあります。引っ越しの際には「Energieausweis(エネルギー証明書)」を確認して、省エネルギーな物件を選ぶのも一つ。2000年以降に建てられた比較的新しい部屋を探す場合であれば、熱エネルギーを外に漏らさない二重、三重ガラスの窓、夏の直射日光を遮断する外付けブラインドを採用している家を選ぶことも省エネルギーにつながります。現在住んでいる部屋のエネルギー証明書や窓を改めて確認することは、自分の部屋のエネルギー使用量の大小を知るのと同時に、ドイツでの生活を快適にするきっかけにもなるはずです。

数値が0に近いほど省エネな物件数値が0に近いほど省エネな物件

ここが違う!
ドイツと日本の建築物

ドイツと日本では、建築や省エネルギーに対する考え方や求めるものにさまざまな違いがあります。ここでは二カ国の違いについて見ていきましょう。

建物に求めるものの違い
ドイツは省エネ・日本は耐震

日本は地震が多い国柄、建物に求める条件として耐震性に優れていることが最優先事項となっています。一方ドイツでは原発事故や地球温暖化など、さまざまな被害を目の当たりにしたことで高まった環境に対する危機感が根底にあります。そのためキーワード2でお話したように環境にやさしく省エネルギーな建築のみを建てていこうという政策を掲げています。どちらも国民の生活を守るために国が定めたもので、これはマストな条件となります。

省エネルギーの概念
ドイツは建築・日本は家電

高断熱な三重窓は冬は暖かく夏は涼しい
高断熱な三重窓は冬は
暖かく夏は涼しい

日本で省エネルギーと聞いて真っ先に思い浮かぶものといえば、省エネをうたったエアコンやタイマー付き家電のCMではないでしょうか。このように日本ではスマート(省エネ)家電に代表されるような電化製品の省エネルギー化が発達していますが、暖房エネルギー需要が大きな割合を占めるドイツでは建物自体の断熱性を高めることで、暖房やエアコンの使用時間を減らしても快適に過ごせる家をつくり、省エネルギーにつなげるという考え方です。

直射日光を遮るブラインド
ドイツは外側・日本は内側

ドイツも日本の夏のように気温が30℃を超えることが多々ありますが、現在でも古いアパートや学校などには冷房の設備がないことが多いです。しかし、快適に過ごせるのには秘密があります。日光が室内に入り部屋の温度を上昇させる前に、窓の外側にブラインドを設置することで日の光を遮断します。窓ガラスの外で日射を遮ることで約80%も熱エネルギーをカットできます。新築はもちろん改修後の建築物でも見ることができます。

ドイツの外付けブラインドの例ドイツの外付けブラインドの例

住宅状況の違い
ドイツは低空家率・日本は高持ち家率

  • 持ち家率:ドイツ43.5%に対し、日本は61%
  • 空家率:ドイツ4.5%に対し、日本は13.5%
  • 戸建て率:ドイツ23.5%に対し、日本は55%

ドイツでは「新しさはつくれても古さはつくれない」という観点から古い住宅に不動産価値を感じる一方、日本では新築であることに不動産価値を見出す傾向があります。

持ち家率・空家率・戸建て率

最終更新 Montag, 10 Juli 2017 14:32
 

ドイツ環境建築巡り

実は身近なドイツの環境建築

環境建築マップ 旅して・学んで・感じる!
ドイツ環境建築巡り

環境建築の最先端を行くドイツには、環境にやさしい建物が各地に存在しています。ここでご紹介するものは実際に観賞することができるので、旅行に行かれる際にはぜひ足を運んでみてください。

ベルリン
1

ドイツ環境建築の先駆け的存在 Reichstagsgebäude ライヒスタークスゲボイデ

ドイツ連邦議会議事堂
ドイツ連邦議会議事堂

ドイツの首都ベルリンにある「ドイツ連邦議会議事堂」は、東西ドイツ再統一の後、旧首都であるボンからベルリンに移転した際に、旧ドイツ国会議事堂であった建物を全面的に修復したもの。再統一の象徴であると同時に21世紀のドイツ環境建築の先駆けとなった建物です。その中央にそびえる巨大なガラスドームは、ベルリンの街並みやティーアガルテンが一望できるとあって、人気の観光スポットでもあります。このドームは全面ガラス仕様のため自然光が入るようになっており、ドームの下にある連邦会議場にもその光が注ぎこまれるように工夫がなされています。使用しているガラスは太陽の動きに合わせて常に角度を変える仕組みで、直射日光が入らないよう配慮されています。また、周辺の政府機関とエネルギー供給網で結ばれているのも特長の一つ。このガラスドームの中は無料で見学もできますが、事前予約が必要になりますので、足を運ぶ際にはオンラインでの申し込みを忘れずに。

Platz der Republik 1, 11011 Berlin
www.bundestag.de/besuche
(上記ウェブサイトから事前予約が可能)

ハンブルク
2

街をあげての都市再生プロジェクト Hafencity Hamburg ハーフェンシティ・ハンブルク

ハーフェンシティ・ハンブルク
ハーフェンシティ・ハンブルク

古くから港湾都市として栄えるハンブルクのエルベ川河口に位置する、敷地面積157ヘクタールにもおよぶハーフェンシティは、欧州最大の都市再生プロジェクトとして有名な地域。かつてハンザ自由都市の港として栄えた後、1960年代に貨物保管庫としての機能のみを担うことになり、閑散とした低・未利用地を再生するためのプロジェクトとして1997年に開発が開始されました。そのコンセプトは「職・住の持続可能な街」であり、教育や観光にも力を入れています。2025年完成(予定)時には労働人口4万5000人、居住者1万4000人の街区を目指しています。かつての埠頭倉庫の上部に新設された銀色に輝くコンサートホールと住居、商業施設が入っている「エルプフィルハーモニー」はこの地区のシンボルとして2017年1月に開業したばかり。

ハンブルク=ミッテ区内
www.hafencity.com

デュッセルドルフ
3

豊かな緑と斬新な外観が共存 Kö-Bogen ケー・ボーゲン

ケー・ボーゲン
ケー・ボーゲン

2013年冬にデュッセルドルフのシュタットミッテ地区にオープンした商業施設「ケー・ボーゲン」は、ベルリンの「ユダヤ博物館」を手がけたダニエル・リベスキンドによる設計。隣接した緑地帯との連携が意図されており、ビルのファサード部分にはそれを象徴するかのように植栽が組み込まれていたりと、ダイナミックで斬新な外観デザインが訪れる人の目を惹きます。国際的な環境建築の達成度を示す上で非常に優れた性能評価システムである「LEED」において、最高ランクであるプラチナを獲得。デザイン性と環境性能が両立した環境建築の好例です。

Königsallee 2, 40212 Düsseldorf
www.koebogen.info

ミュンヘン
4

ドイツ環境建築の技術を体感 Derag Livinghotel am Viktualienmarkt デラーク リビングホテル・ヴィクトゥアリエンマルクト

ケー・ボーゲン

ミュンヘンのマリエン広場からほど近いヴィクトゥアリエンマルクトに面した「デラーク リビングホテル」は、1970年に建てられた建物を改修した宿泊施設。2011年に建物の環境性能を評価するEUの「グリーンビル認証」を受けました。2013年にはヴィクトゥアリエンマルクトに面した場所に新築部分も建設され、新・旧の環境建築の違いが楽しめます。熱を外に逃がさない三重窓や、夏の時期に太陽の日をシャットアウトする外付けブラインドなど、ドイツの建物で用いられる建築技術に触れ、快適なドイツの住環境を体感できる場所となっています。

Frauenstraße 4, 80469 München
www.deraghotels.de/hotel-am-viktualienmarkt-muenchen

フランクフルト
5

消費する建物から生み出す建物へ Aktiv-Stadthaus Frankfurt アクティブ・シュタットハウス・フランクフルト

アクティブ・シュタットハウス・フランクフルト

2015年に完成した、長さ約150mにも及ぶ「アクティブ・シュタットハウス」は、欧州初となるプラスエネルギー集合住宅です。大きな船のような佇まいのこの建物は、南面と屋根面に配置された太陽光発電パネルによって250kWを毎日生み出しています。その他にも蓄電池や排水からの熱回収などの技術が用いられ、各住戸で必要な電力と熱(暖房・給湯)をまかなうことでプラスエネルギーを達成しています。「エネルギーを消費する建物」から「エネルギーを生み出す建物」へと移行していくきっかけとなった事例の一つです。 ※集合住宅のため中に入ることはできません

Speicherstraße 20-26, 60326 Frankfurt am Main
www.abg-fh.com/bauen/aktuelle-projekte/aktiv-stadthaus.html

フランクフルト
6

夏・冬でも快適に過ごせるオフィス European Central Bank ヨーロピアン・セントラル・バンク

ヨーロピアン・セントラル・バンク

マイン川沿いに2014年に完成した「欧州中央銀行」の新オフィスは、金融の街、フランクフルトならではの高層ビル。45階建てのビルと43階建てのビルの二つのタワーが連なる形になっており、ビルの間は「バーティカル・シティ」と呼ばれるガラス張りの大きなアトリウムで結ばれています。このアトリウムは、暑さや寒さが直接オフィスエリアに影響しにくい省エネルギーな設計となっており、ここで働く人々が夏でも冬でも快適に過ごせるのが特徴です。

Sonnemannstraße 20, 60314 Frankfurt am Main
www.ecb.europa.eu

ハンブルク
7

都会のオアシス的複合施設 Wälderhaus ヴェルダーハウス

ヴェルダーハウス

ハンブルグのヴィルヘルムスブルク地区にある、森のサイエンスセンターやホテル、レストランからなる複合施設「ヴェルダーハウス」。この地区では2013年に「IBA Hamburg(国際建築展)」が開催されたことにより、さまざまな環境建築を見ることができます。その中心となる当施設は、地上階とドイツ式1階が鉄筋コンクリート構造、上階が木造というユニークな構造。また、屋根の上には太陽光発電システムを設置し、エネルギーを生み出しています。内装にも木材が多用され、環境建築の心地良さを体感できる施設となっています。

Am Inselpark 19, 21109 Hamburg
www.waelderhaus.de

最終更新 Montag, 10 Juli 2017 13:57
 

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