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ジャパンダイジェスト
Fr. 10. Jul. 2020

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奪われたクリムト奪われたクリムト
マリアが『黄金のアデーレ』を取り戻すまで

著者:エリザベート・ザントマン
訳者:永井潤子、浜田和子

発行元:梨の木舎
2019年4月 刊行

ウィーン分離派の画家、グスタフ・クリムトの代表作の1つ「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 Ⅰ」。金と銀をベースにさまざまな模様が散りばめられたこの肖像画は「黄金のアデーレ」として知られ、現在は製作地ウィーンから遠く離れたニューヨークの新美術館に展示されている。今もなお多くの人々を魅了する絵画だが、かつてウィーンのユダヤ人が所有し、ナチによって略奪された美術品であることをご存知だろうか。そんな数奇な運命をたどった「黄金のアデーレ」の真実に迫ったのが、本著『奪われたクリムト』である。

絵のモデル、アデーレの人物像をひも解き、この絵画の返還をめぐって闘ったアデーレの姪、マリアに光を当てたのは、ドイツ人のエリザベート・ザントマンさんだ。出版社の経営者として女性による女性のための作品を世に送り出してきた彼女だが、この2人の女性の人間的な強さに魅せられて自ら筆を執った。また本著の訳者で在独ジャーナリストの永井潤子さんも同じく彼女たちの物語に惹かれ、翻訳を決意したという。ナチによる「略奪美術」がテーマである一方で、時代に翻弄された女性たちからは、権利を勝ち取るために闘い続けるという人間らしいあり方がまざまざと伝わってくる。絵画に描かれたアデーレが、以前よりも強く凛として見えるのは気のせいではなさそうだ。


 
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