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センセイの鞄Der Himmel ist blau, die Erde ist weiß
(原作:センセイの鞄)
HIROMI KAWAKAMI 著 

Hanser Verlag
ISBN: 3-446-20999-9

本屋の新刊コーナーで、この本を見つけた時はびっくりした。「HIROMI KAWAKAMI」の文字が「川上弘美」だと気づくまでにかかった時間は約5秒。そしてタイトルのドイツ語に心がときめいた。「Der Himmel ist blau, die Erde ist weiß」。「空は青く、大地は白い」?とっさに頭で直訳してみたものの、そんな著作、思いつかない。川上弘美は、私の好きな作家の一人で、大抵の著作は読破している。もしかして新作?このドイツ語タイトルを読んで、原作がピーンとひらめいた人は、かなりの川上ファンかもしれない。答えを明かそう、彼女のベストセラー中のベ ストセラー「センセイの鞄」である。

日本で原作を読んだことがある人も多いに違いない。37歳のツキコさんが、高校時代の恩師「センセイ」と久しぶ りに再会し、近所の居酒屋で一緒にお酒を飲んだり花見をしたりと交流するうちに、恋心が芽生えていくというラブ・ストーリー。独特の言葉遣いやテンポが何とも心地よい傑作である。

著者の作品初のドイツ語翻訳本。カバーは、満開の桜と、その花びらが散って一面ピンクに染まった川にボートが浮かび、男女が一組、向かい合って座っている。春らしいといえば春らしいし、桜をモチーフに使ったところがドイツ人の日本観を思わせなくもない。この本を原作で読んだことがある人にもそうでない人にも、のどかな週末、春の風に吹かれながら、手にとってみてもらいたい一冊である。

ただ、原作を読んだ人にはわかってもらえるかもしれないが、センセイはいつもツキコさんのことを「さん」付けで丁寧に呼んでいたけれど、ドイツ語版では残念ながら、というか当然のことながら「Tsukiko」と呼んでいる。「ツキコさん」っていう響きが、とても奥ゆかしくて、センセイらしいなあと思っていた私としては、ちょっとだけ残念でもある。(り)



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