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朗読者朗読者 ~Der Vorleser~
ベルンハルト・シュリンク
松永美穂(訳)

新潮文庫
ISBN 4-10-200711-3

1944年にビーレフェルトに生まれ、ベルリンのフンボルト大学で法学教授を務めているという著者、ベルンハルト・シュリンク(Bernhard Schlink)の名はもちろん、この作品が2000年にシュピーゲル誌で「ギュンター・グラスの『ブリキの太鼓』以来、ドイツ文学では最大の世界的成功を収めた作品」と絶賛されたことなど露知らず。ただ、本国はもとより日本でも大ベストセラーになった作品だということを何かの機会に耳にし、ドイツ在住の身としては気になって手に取ってみたのが、そもそもの出合いだった。

『朗読者』というタイトルからは内容が想像しにくいが、それもそのはず。ちょっと複雑な物語だ。15歳のミヒャエルはある日、下校途中に気分が悪くなり街角で吐いてしまうが、そこで「坊や」と話し掛け、介抱してくれた年上の女性ハンナと恋に落ちる。36歳という自分の母親ほども年の離れたハンナがストッキングをはいているところを見て、目が離せなかったミヒャエルは、やがてハンナとベッドを共にするようになり、彼女の頼みに応じて本の朗読を始める。

しかし突然、ハンナがミヒャエルの前から姿を消してしまう。そして数年後、大学生になったミヒャエルはアウシュヴィッツ強制収容所の看守を裁く裁判を傍聴し、そこで被告席に座るハンナに再会する。ハンナは戦中、ナチス親衛隊の募集に応じ、収容所の女看守を務めていたのだ。裁判で無期懲役の判決を受けた彼女にミヒャエルは、朗読を録音したカセットテープを送り始める。彼は、彼女が文盲であることを知っていたのだった。やがて訪れたハンナの出所の日。ミヒャエルは彼女を迎えに刑務所に足を運んだが……。

……と、物語はナチス時代と戦後を生きたドイツの人々のさまざまな運命をあぶり出す。ナチス時代の犯罪、少年と年の離れた女性との恋愛など、かなり重く、センセーショナルなテーマが描かれ、読後感はスッキリとはいかないが、何かが心の深い部分に残る、そんな作品である。ピンときた方はどうぞ。(り)


 
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