東 ちづる(著) ブックマン社
ISBN4-89308-409-7
デュッセルドルフの日系のお店やホテルに入ると、そのかたわらにある募金箱。「FRIEDENSDORF INTERNATIONAL」のスカイブルーのロゴが目を引くこの箱の設置は、女優・東ちづるのパワフルな行動力が約10年前に勝ち得た成果の1つだ。
本書には、ルール地方の小さな街オーバーハウゼンにある『ドイツ国際平和村』で敢行された「世界ウルルン滞在記」のロケを通し、筆者自身が子どもたちとの出会いの中で感じたことや、募金箱設置の協力を得るために奔走したことなどが、情感たっぷりに口語調で綴られている。
国際平和村は、戦争や災害によって傷つきながら、母国での治療が困難な子どもたちをドイツに連れてきてヨーロッパの医療を受けるチャンスを与え、治療とリハビリの後に再び母国に帰すという医療援助を中心に活動している団体。アフガニスタンやアンゴラなど、世界各国から200人以上の子どもたちが常時、国際平和村を通して協力病院で治療を受けている。
弊誌でも、2年前に「ドイツ国際平和村とウルルン滞在記」と題して特集を組み、東さんや本書にも登場する撮影クルーの仕事ぶりを間近で見た。子どもたちの傷跡、泣き顔や笑顔に触発されて心から沸き上がる怒りや疑問、焦りといった衝動が彼女の原動力になっているようだった。ボランティアというと、とても崇高な行為と美化されがちだけど、そういうことではなく、自分の衝動に従ってできることをやってるだけなんだと、東さんのボランティア精神には徹底的に「犠牲」文字が排除されていることが本書の端々から伝わってくる。
2000年に出版された本書は国際平和村の現状と異なる部分もあるが、本質は変わらない。奪われた子どもたちの笑顔を取り戻すために必要なことは、私たち1人ひとりが子どもたちの存在を「忘れないこと」。(高)
ドイツ国際平和村「Dorffest」
9月11日(土)10:00 ~ 18:00
12:30~ 日本語によるドイツ国際平和村の活動紹介・施設案内
※参加希望の方は、下記のメールアドレスへお問い合わせ下さい。
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Friedensdorf International
Rua Hiroshima, 46147 Oberhausen
www.friedensdorf.de