お金があっても不安な日本人
吉村 葉子(著)
講談社
ISBN: 978-4-06-275632-7
最近、映画「ALWAYS 三丁目の夕日」(2005)のDVDを観た。元首相の安倍晋三氏も絶賛した、心温まる作品という前触れ。
昭和33年、東京タワー建設中の古き良き東京が舞台。昭和50年代生まれ、東北育ちの私にその風景が懐かしいはずはないのだが、ふとデジャヴに襲われた。なぜ? じーっと街並みに目を凝らす。すると、ガタンゴトンとやってきた路面電車。
あ、ドイツだ! 旧式の路面電車が行き交うデュッセルドルフの街並みと見事にリンクしたのだ。どっしりと構えた西洋風の建築物もガス灯も、旧市街の雰囲気を彷彿とさせる。日本は変わったんだ。一方、ドイツは・・・・・・?
そんなことを考えていた矢先に、本書と巡り合った。隣国フランスとドイツの国民性が酷似しているとは言い難いが、変わり行く日本と変わらない欧州の街並み、この違いを探るヒントが隠されているかもしれない。
予感は的中。フランス人を「しまり屋」と称し、その節約主義と合理主義にうなり、彼らの人生を豊かにする発想の転換法から大いに学んだ著者は、パリに20年間も暮らしていたベテラン主婦。彼女の目線で語られるパリは、同じくケチ・・・・・・失礼。「しまり屋」なドイツ人とも通じるところがある。家族と過ごす時間やバカンスに生きる喜びを見出し、自信満々に生きる彼らの姿は、学歴も収入も申し分ないはずなのに、常に不満や不安が絶えない日本人とは好対照。
いやいや、前述の映画の中では「お金では買えないもの」を大切にする下町の庶民が主人公。日本にだってそういう時代があったし、そういう価値観を持っている人が現代にも少なからずいるはずだ。「日本人好きの日本嫌い」を自認する著者が、便利過ぎる日本と真面目過ぎる日本人に警鐘を鳴らす本書からは、フランス人の生活の知恵と「もっと肩の力を抜いたら?」というやさしいメッセージが伝わってきた。
ちなみに、結局この映画に大号泣した私は、続編「ALWAYS 続・三丁目の夕日」(2006)もしっかり鑑賞。2012年にはさらなる続編が3D映画として(?!)公開されるそうだ。(高)