小さな空間ですっきり暮らす整理・収納のコツ
門倉多仁亜 著
ソフトバンク・クリエイティブ
ISBN978-4-7973-4105-8 1429円+税
部屋づくりやインテリアをテーマにした本と言ったら、センスのいいデザイナー家具がさりげなく使われていたり、フランス辺りで掘り出した、一見どこにでもありそうな古い(じゃなくてアンティークな)ランプが、これまた1点もののサイドテーブルに置かれていたり……、なにはともあれ、おしゃれ感100%なのがお約束。でも、そんな“うわついた”気持ちでこの本を手にとってしまうと、しょっぱなからカウンターパンチを食らうはめになる。
「持ちものは少なく」で始まるこの本の著者は、日本人の父とドイツ人の母を持ち、現在は東京の賃貸マンションに暮らす門倉多仁亜(かどくらたにあ)さん。日本、ドイツ、米国、英国など、さまざまな国で生活した経験と、母から受け継いだ住まいづくりのルールを生かし、整理・収納のコツから気軽に実践できる部屋のアレンジまでを、豊富な写真とともに、目が覚めるほどスッキリと直球型で提案してくれる。
リビングのテーブルには足をのせてリラックスできるように大きなものを選ぶなど、ときに大胆な面ものぞかせつつ、ドイツ人の血を引いているだけあって(?)タニアさんの部屋づくりの基本はもちろん合理性の追求。例えば、たんすの引き出しに作った「宅配便コーナー」には、宅配便に必要なガムテープ、紙袋、はさみ、ラベルなどがまとめて収納されている。一緒に使うものは一緒にしまうとルールいうは、すぐにでも真似できそうだ。DIYの精神を欠かさないのもドイツらしい。椅子のシート部分の布が古くなったら「タッカー」(皮や布などを固定するホッチキスのようなもの)を使って自分で張り替えるくらい、タニアさんにとっては当たり前のことなのである。
一方、ドイツ人にとっては何よりの褒め言葉という「gemütlich(温かな雰囲気で居心地の良い)」な部屋を作りたいと言うタニアさん。日本の器をキャンドル立てにしてさりげなくリビングに飾るという、シンプルながらとてもチャー ミングな演出も彼女ならではだ。
ところどころでドイツ人の生活習慣を紹介しているのもおもしろい。ドイツに暮らす日本人の私たちなら、「ドイツ人ってそうなんだよね」と思わず納得したりして。手軽にできるドイツ定番料理のレシピも役立ちます。(り)