高橋康典 著
幻冬舎ルネッサンス
ISBN 978-4-7790-0219-9 1200円+税
日本のサラリーマンが1日の仕事を終えて「まずは一杯」と言えば、やっぱりビール。外国人のなかには、日本人が飲むものといえば「SAKE」だと思い込んでいる人もいるようだが、ここではっきりさせておこう、日本はれっきとしたビールの国である。ただ、いくら「3度の飯よりビールが好き」な人でも、ビールの本場ドイツに足を運び、地方の醸造所でビール造りを見て周り、それだけでは飽き足らず、挙句の果てには「ビール醸造マイスター」なるタイトルまで取ってしまう人はそうはいないだろう。
本書は、それをやってのけた奇特な人物によるビール案内である。著者の高橋康典氏はドイツに渡る前、日本で地ビールメーカーに勤務していたという根っからのビール通。今時、ドイツビールをテーマにした本はいくらでもあるが、そんな巷にあふれる「ビールうんちく本」などでは物足りなかったのだろう。それならば自分で、とドイツ行きを決めてしてしまったというわけだ。
時は1999年。持つ物もとりあえず飛行機に乗った高橋氏だが、現地で待っていたのはドイツ語という高くて険しいハードルだった。というわけで、彼のドイツビール遍歴の旅は、まずケルンの語学学校からスタートする。
ケルン、ミュンヘン、レーゲンスブルク、そして国境を越えチェコへ、地ビールで言えばケルシュに始まり、ヘレス、そしてプラズドロイへと飲みつないだ彼は、ドイツの地を踏んでから2年が過ぎた2001年9月12日、全世界を揺るがせたあの9・11同時テロがニューヨークで起きた翌日にマイスター学校の門をたたく。ドイツには各地にビールマイスターを育成する学校があるが、彼が選んだのはミュンヘンの南、グレーフェルフィングの町にあるデーメンスマイ スター学校だ。そこで彼は1年間(2ゼメスター)、ドイツ手工業会議所が主催する「ブラウ&マルツマイスター」のコースを選択し、麦芽製造やマーケティング学などを基礎知識からみっちり学び始める。
試験では、決して喜べない「4」の評価を受けて焦るが、日本人の持ち味である勤勉さをフルに発揮してクラスメートをうならせる高橋氏。だがマイスターまでの道のりは長く……。「好きこそ物の上手なれ」を地で行く高橋氏の切磋琢磨の日々、最後には感動のゴールが待っているので、安心してご一読を。(り)