酒井駒子 著
Moritz Verlag
ISBN 3-89565-160-5
ぼく、おかあさんのこと……きらい!ねぼすけで、にちようびのあさはいつまでもねてるし、自分のすきなテレビばかり見て、ぼくにはアニメを見せてくれないし、すぐおこるし、ぼくには「いそいで!」っていうくせに、自分はおともだちとおしゃべりしてるし、ようちえんのおむかえはいつもおそいし、せんたくするのをわすれるから、ぼくはきのうのくつしたをまたはかなくちゃいけないし、それに、それに……ぼくとはけっこんできないっていうし!!
いま日本で人気の絵本作家、酒井駒子さんの作品『MAMA, ICH MAG DICH …』(邦題『ぼく おかあさんのこと…』文渓堂、2000年)が、ドイツ語に翻訳され、話題を呼んでいる。酒井さんは1966年兵庫県生まれ。東京芸術大学を卒業後、テキスタイルデザイナーを経て、絵本の創作活動をスタートさせた。04年には『きつねのかみさま』(文・あまんきみこ、ポプラ社)で日本絵本賞を受賞。現在は本の装丁や絵本、児童書のイラストなど、幅広い分野で活躍している。
おかあさんのことが本当は大好きなウサギのぼくは、ある日、「チュース!」と叫んで部屋を飛び出していってしまう。そんなぼくのことを優しい眼差しで見つめるおかあさん。一人部屋に残され、少し寂しそうな場面にはジーンとしてしまった。さてさて二人は、仲直りができるのだろうか。
モーリッツ出版からは、同じくウサギの“ぼく”と“おかあさん”が登場する心温まる親子の愛情を描いた『Es schneit ! 』(邦題『ゆきがやんだら』学習研究社、2005年)も出版されている。朝から大雪が降り続き、幼稚園はお休み。仕事に行っているパパが家に帰ってこられないのはちょっと心配だけれど、ママと家で二人きり、なにをしようかわくわくしちゃう!
ほのぼのとしてかわいらしいウサギのイラストを見て思わず手にとり、それ以来のファンという人も多い酒井さんの絵本。外に出るのが億劫になるこれからの季節、ポカポカした部屋で子どもと一緒にゆっくり楽しめる1冊だ。(り)