~バイエルンに学ぶ地産地消
木村麻紀 著
学芸出版社
ISBN 4-7615-1214-8
二日酔いになっちゃって……とミュンヘン人に言うと、「ヴァイスビア(小麦ビール)を飲むといい」と勧められ、風邪ひいて熱があるの……と言うと「ビールを温めて飲むといい」とのアドバイス。またまたご冗談を、なんて最初は信じていなかったが、これはどうやら本当らしい。ドイツではビールは「飲むパン」と呼ばれているのだ。
日本の感覚では考えられないが、それもそのはず。バイエルンのビールは日本のとは違って、「ビール純粋令」という法律を忠実に守って造られている。「ビールは大麦、ホップ、水のみによって造られるべし(ヴァイスビアは小麦も可)」とされているから、これはまさに、添加物を使わない麦芽100%の健康食品だ。バイエルンビール「ヘレス」の美味しさには、それなりの理由があったのである。
バイエルン人がこの美味しさを守るためにどのような努力をしているかを、本書は詳しく教えてくれる。特に、ミュンヘンビールの代名詞と言えば「アウグスティーナー」だが、少しバイエルンを離れただけで、このビールにはお目にかかれない。それはなぜか──?サブタイトルにあるように、地元で収穫した原料を使って地元で造り、地元で消費する。これがグローバル経済を生き残れる唯一の術であることをわかっているからである。
本書で興味深いのは、著者が日本のビールがなぜ高くておいしくないのか、に言及していることだ。問題提起は、水などの原料や醸造方法、副原料の使用だけにとどまらず、酒税や制度など広範囲にわたる。人々の熱い想いが込められ、町おこしにも貢献しているバイエルンのビール。ヘレスを飲む前にはぜひご一読を。ビールの薀蓄を語りながら、さらなる味わいを愉しめるだろう。(令)