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会いたい野鳥を探しに出かけよう!ドイツで始めるバードウォッチング

コロナ禍でにわかにブームとなっているのが、バードウォッチングだ。窓辺や庭に遊びに来た野鳥を眺めたり、森の中で見たことのない種類を発見したり、ロックダウン中でも気軽に楽しめることから、野鳥観察を始める人が増えたのだとか。ここドイツでは19世紀から野鳥を保護してきた歴史があり、さまざまな種類の野鳥を身近で観察することができる。今回は、そんなドイツでバードウォッチングに出かけたくなる魅力とヒントをお届けする。(Text:編集部)

ドイツで始めるバードウォッチング

鳥類保護120年の歴史 野鳥を大切にしてきたドイツ

参考:NABU公式ホームページ、浅田進史「書評:帝政期ドイツにおける『自然保護』の近代」

鳥類保護は自然保護の原点

ドイツは「自然保護の国」というイメージが強いが、その歴史は18世紀にまで遡る。ドイツでは18世紀以降の林業の合理化によって、森の木々は収益性の高い種類だけとなり、人々が慣れ親しんだ景観が大きく変化。合理主義に対抗するロマン主義的な傾向を強めることになった。19〜20世紀のドイツで自然保護運動が盛んになったのには、こうした背景がある。

1837年、自然保護団体としてドイツ初の動物保護協会がシュトゥットガルトに生まれた。その後、各地で同じような協会が設立され、鳥類保護の必要性も訴えられるようになる。そして1899年に、全国的な組織として「鳥類保護同盟」(BfV)が創設された。会員は貴族や知識層が中心で、その数は発足から1年で3500人まで増加している。

BfV創立者のリナ・ヘーンレは、実業家の妻であり6人の子の母だった。「容赦ない自然搾取をこれ以上見ていられない」ことが、協会設立のきっかけだったという。当時、害虫を駆除する益鳥を守ることが鳥類保護の主な動機だったが、狩猟による渡り鳥の大量殺害や羽飾りのついた帽子を被るような行為に対して闘うことも重要であると、BfVの規約で明確にされた。さらに、野鳥に巣を作る機会や冬の餌を与えることで、ドイツ固有の益鳥の保護に貢献することが同協会の目的となっていた。

BfVは巣箱の設置や冬の餌の調達、自然保護地域の土地を購入するなど、着実に鳥類保護の活動を進めていった。また鳥類の個体数が減るという最悪のシナリオを提示し、自分たちの美しい故郷の自然を守ろうと呼びかけ、人々が自然や野鳥の保護に関心を寄せるきっかけを積極的に作った。そうして会員数は拡大し、1914年には4万人以上の団体へと成長する。

環境保護団体へと成長

ナチス政権下では、BfVは「帝国鳥類保護連盟」として政府の管轄に置かれた。第二次世界大戦中は物資が不足しながらも、巣箱の設置や冬の餌やりが続けられたという。戦後はBfVとして再スタートを切り、1965年に「ドイツ鳥類保護連盟」(DBV)に改名。1970年代には、工業化や農薬などによって汚染された環境、つまり野鳥の生息地を保護することもDBVの大きなテーマとなっていく。

1971年、DBVは絶滅に瀕していたハヤブサを「バード・オブ・ザ・イヤー」(今年の鳥)に決定した。このキャンペーンは、絶滅危惧種や身近な野鳥を選出するもので、現在に至るまで毎年続けられている。またそうした種の保存に関する活動で印象的な出来事の一つに、1974年のツバメの救出作戦がある。例年よりも早く冬が到来したため、弱って南へ飛び損ねた100万羽のツバメを飛行機や電車で輸送するという大掛かりなものだった。

1981年には規約の改正に伴い、全ての生き物や植物を保護の対象とすることを明確にした。間口を広げたことにより、その年の会員数は10万人に達する。さらに、1986年のチェルノブイリ原発事故後には反原子力の立場を取るようになるなど、政治的な活動も活発になっていった。そして1990年に東西ドイツが再統一され、鳥類にとどまらず全ての生き物、環境を保護する包括的な組織「ドイツ自然保護連盟」(NABU)が誕生したのだった。

NABUが育ててきた野鳥への愛

現在NABUを支えるのは、82万人を超える会員とサポーターで、全国約2000の地域ごとや専門家のグループが活動している。会報「Naturschutz heute」は年4回、合計40万部が発行され、最も発行部数の多い環境雑誌としても知られる。会員は会費を支払い、国内に5000カ所以上ある保護地域の保全活動に協力したり、環境教育の一環としてイベントなどに参加したりすることが可能だ。

全国各地にあるNABUの自然保護センターには観測塔が設置されている全国各地にあるNABUの自然保護センターには観測塔が設置されている

前述の「今年の鳥」は、鳥類保護を前身とするNABUの代表的なキャンペーンの一つ。2021年は45万人以上が投票し、ヨーロッパコマドリが選ばれた。候補の野鳥たちにはそれぞれ選挙ポスターがあり、ヨーロッパコマドリのスローガンは「もっと庭に多様性を!」。ちなみに、ヨーロッパコマドリは1992年にも今年の鳥に選ばれている。

ヨーロッパコマドリの選挙ポスターヨーロッパコマドリの選挙ポスター

こうして一つひとつ積み重ねてきたNABUの活動は、ドイツの人々により自然を身近に感じさせ、それらを守ろうという意識を広めてきた。この国に住む野鳥たちは、そうした人々の愛があってこそ、私たちにとって身近な存在であり続ているのだろう。そんなドイツの野鳥たちに出会うためのヒントをご紹介する。

NABU公式ホームページ:www.nabu.de

バードウォッチング初心者のためのヒント

むくむくと野鳥への興味が湧いてきたところで、いよいよバードウォッチングへ出発! その前に何を用意すれば? どんなことに注意したら? 初心者でも気軽に楽しめるよう、自他共に認める(!?)バードウォッチャーである守屋健さんとキーツマン智香さんのおふたりに、野鳥観察のヒントを伝授していただいた。

お話を聞いた人

守屋健さん

ベルリン在住のライター。小学5年生のとき、近所で野生のキジを見たのをきっかけに日本野鳥の会に入り、日本各地の野鳥を観察してきた。ドイツで出会ってみたい野鳥はフクロウ(夜行性のため鳴き声しか聞いたことがない)。本誌では「私の街のレポーター」に隔月で寄稿中。

キーツマン智香さん

ブランデンブルク州在住の元翻訳者。旅行先のパナマでハチドリを間近で見たことから、野鳥観察に夢中になる。ドイツで出会ってみたい野鳥はニシコウライウグイス(DDRのガソリンスタンドのマスコットキャラクターだった)。ホームページでドイツの野鳥観察に関する情報を発信中。https://chikatravel.com

野鳥観察に出かける準備

野鳥観察に出かける準備

服装

長袖長ズボンが基本。アウトドアでは遭難対策で派手な色のジャケットなどを着用することをすすめられるが、バードウォッチングでは野鳥に警戒されないように風景に溶け込むカーキ色などが◎。同じ理由で、ナイロンなど動くとカサカサと音がするような生地の服ではなく、ウールやコットンなどを着るのがベター。

双眼鏡

野鳥観察では、双眼鏡の倍率は7~10倍くらいが適している。また、レンズの大きさは30ミリ前後を目安に用意しよう。双眼鏡の倍率が高すぎると、かえって鳥を探しにくくなってしまうので注意。防水機能が付いたものであれば、雨が降った時でも安心だ。使うときのコツは、野鳥を目視した状態で、その姿勢のまま双眼鏡を目元に持っていくこと。

トレッキングシューズがベストだが、履きなれた靴であればOK。湿地帯などを歩く場合は、防水性の高い靴にしよう。

アプリ

NABUが監修したアプリ「Vogelwelt」(鳥の世界)は、無料でダウンロード可。よく見る307種類の野鳥が収められており、初心者にもおすすめ(ドイツ語のみ)。有料版では1000種類に数が増え、鳴き声や卵の大きさを確認することもできる。手元に図鑑がない時も気軽に利用できて便利。また世界中のユーザーと野鳥観察の記録をシェアできる「eBird」というアプリ(英語)もある。

フィールドノート

あとで野鳥の種類などを図鑑で調べるために、特徴などを素早くメモするノート。例えば、見た目、鳴き声(擬音語)、巣の有無、枝への止まり方などを書き留めておく。スマートフォンでメモすることも可能だが、ささっと絵を描くこともできるので、ノート愛用者も多い。さまざまなデザインのものがあり、日付や季節ごとに見られる野鳥のイラストなどが付いている場合も。

フィールドノートキーツマンさんのフィールドノート(写真:ご本人提供)

図鑑

自然科学をはじめとした図鑑を数多く出版しているKosmos社。同社の『Welcher Vogel ist das?』(あれはどの鳥?)のシリーズはNABUのお墨付き図鑑で、愛用する人も多い。ドイツに生息する野鳥の特徴や生息地が、美しいイラストと共に収められている。

野鳥に出会うためのコツ

いそうな場所を狙ってみる

川や湖に行ったら水の上や水辺の木の上に注目したり、タカやワシなどの猛禽類であれば視界が開けた場所を見たりするなど、いそうな場所を探してみよう。事前に図鑑などで、見たい野鳥がどんな場所に生息しているのかを調べておくのも一案だ。むやみやたらに上ばかり向いていると、首が疲れてしまうのでご注意!

音を聞いてみる

歩く時は、大きな音を立てないようにして耳を澄ませよう。鳴き声はもちろん、落ち葉の上を「カサッカサッ」と歩く音が聞こえてくるかもしれない。例えば、キツツキはドラミング(木をつつく音)をする前、木を調べるように1~2回「コンコンコン」と音を出している。その音が聞こえる方に、そっと視線を移してみて。

定点観測をしてみる

お決まりの散歩コースがあれば、定点観測がおすすめ。何度も歩いているうちに、湖には〇〇がいる、原っぱには△△がいる……など、だんだんと野鳥の縄張りが分かるようになってくる。今の季節であれば、巣を作っている→ひなが生まれる→ひなが巣立ちをする、など定点観察しているからこその面白さがある。

巣箱や餌台を設置してみる

庭がある場合は巣箱や餌台を設置してみよう。なかなか間近で見ることはできない野鳥が顔を見せてくれる。専用カメラ(安価なもので100ユーロ前後)を取り付ければ、アプリを通じてリアルタイムでの観察が可能。定期的に動画や静止画を撮影してくれるので、時間の空いた時に様子を確認するなど、毎日の楽しみも増えるはず。

バードウォッチャーおすすめ野鳥図鑑

引き続き守屋さんとキーツマンさんに、ドイツでよく見られる種類やイチオシの野鳥を教えていただいた。会いたいと思う野鳥を見つけたら、図鑑片手に探しに出かけてみよう。見慣れていた散歩の風景が、きっといつもと違って見えるはず。鳴き声を聞きたい方は、NABU-Vogelporträts をチェックしてみて。

参考:NABU-Vogelporträts

庭によく来る野鳥トップ ※NABUの統計より

1位イエスズメ Haussperling
スズメ目スズメ科/体長14~16cm

いわゆるスズメ(Feldsperling)とは違い、頬に黒い斑点がない。雌雄の違いがはっきりしており、オスは頭が灰色で、メスは目の横に黄土色の線が入っているのが特徴。日本には生息していないが、欧州では都市部でもよく見られる。害鳥と見なされていた19世紀、20羽ごとに「スズメ税」が課されていたこともあるとか。

イエスズメ Haussperling

2位クロウタドリ Amsel
スズメ目ツグミ科/体長23〜29cm

黄色いくちばしと真っ黒の羽毛で見た目は地味だが、冬の終わりごろから6月にかけてよくさえずり、多彩な鳴き声を発するのが魅力。特に求愛時のオスの歌声はメロディックである。地中にいる虫を食べるため、地面を動き回っていることが多い。オートミールやレーズンなども好むため、餌台がある人はぜひ置いてみよう。

クロウタドリ Amsel守屋さんのイチオシ野鳥

3位シジュウカラ Kohlmeise
スズメ目シジュウカラ科/体長13.5~15cm

1年中、庭や公園、森林など、緑が多い場所で見られる。カラフルな羽毛が魅力のシジュウカラは、欧州ではお腹が黄色いのが特徴で、日本ではこれが白とやや見た目が違う。夏場は虫を食べるが、冬場は種子などを食す。巣箱や餌台を設置すると、喜んでやってくる。春に苔や羊毛で巣を作るため、近くに素材を置いてあげても。

シジュウカラ Kohlmeise

初心者でも見つけやすい野鳥

カササギ Elster
スズメ目カラス科/40~51cm

カラスよりも少し小さいが、白と黒の羽毛と長い尾羽が特徴で、木の上や原っぱですぐに見つけることができる。光反射によって黒い羽毛がメタルブルーに見えることがある。日本のカササギも見た目が同じ。地中に食べ物を隠したり、しばしばほかの野鳥から食べ物を奪ったりするため、ずる賢いことでも知られている。

カササギ Elster

マガモ Stockente
カモ目カモ科/体長50~60cm

「バードウォッチング!」と気合を入れなくても出会える水鳥。オスは緑色の頭と黄色のくちばし、メスは茶系の羽毛とオレンジ色のくちばしが特徴。通常はペアで行動するが、春はメスがひなを連れている姿が見られる。餌やりをする場合、パンには塩や防腐剤が入っているため、専用の餌や穀物をあげるようにしよう。

マガモ Stockente

ツバメ Rauchschwalbe
スズメ目ツバメ科/17〜 19cm

夏鳥といえばツバメ。ドイツでは4〜10月に見ることができ、冬はアフリカへ渡る。人間の生活空間に巣を作ることを好むため、見かける機会も多い。毎秒20メートルで颯爽と飛び、飛行中に餌となる虫などを捕らえる。「ツバメが低く飛ぶ」のは雨が降る予兆といわれ、低気圧のために地上に近い虫を追いかけるからだとか。

ツバメ Rauchschwalbe

欧州だから見られる野鳥

ゴシキヒワ Stieglitz
スズメ目アトリ科/体長12〜13.5cm

日本には生息していない野鳥で、赤と黄色と黒のカラフルな羽毛が特徴。ゴシキヒワは苦悩を和らげるためにキリストの皮膚からトゲを引き抜き、聖なる血を頭に塗ったという言い伝えがある。虫はほとんど食べず種子などを好むため、畑や休閑地、果樹園などでよく見られる。繁殖期以外は基本的に群れで行動する。

ゴシキヒワ Stieglitz

クマゲラ Schwarzspecht
キツツキ目キツツキ科/体長40〜46cm

赤い帽子を被ったような見た目で、オスよりメスの方が赤い部分が小さい。そしてなんと言っても、のみのように鋭いくちばしで木を高速でつつくドラミングが最大の特徴だ。日本では北海道と東北地方の一部の地域でしか見られないが、ドイツでは全国的に生息している。樹齢80年以上の古い木がある森林でよく見られる。

クマゲラ Schwarzspechtキーツマンさんのイチオシ野鳥

コウノトリ Weißstorch
コウノトリ目コウノトリ科/体長95~110cm

渡り鳥で、冬はアフリカに滞在するが、近年西側に生息するコウノトリはイベリア半島で越冬する。湿った牧草地を好み、大空を旋回する姿がよく見られる。煙突や教会の塔に巣を作ることもあり、この時期は子育て中のコウノトリが見られるチャンスも多い。絶滅危惧種でドイツ国内には6240ペアのみが生息している(2019年)。

コウノトリ Weißstorch

 
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