春を食べ尽くそう!ドイツで楽しむイチゴとベアラオホ
「ドイツの春といえばシュパーゲル!」という人が多いかもしれないが、イチゴをはじめ、日本ではあまり知られていないベアラオホなど、ほかにもドイツには春の味覚が満載。それらを思いっきり味わうためのヒントや、おいしいレシピをご紹介する。(文:ドイツニュースダイジェスト編集部、レシピ:坪井由美子)
目次
春の恵みを味わおうドイツ人のイチゴ愛
ドイツ人の一人当たりのイチゴの年間消費量はなんと3.7キロ(日本は770グラム)。これだけドイツ人に愛されているイチゴの魅力に迫る。
参考文献:連邦栄養センターホームページ、WeltWelt「Erdbeeren sind fruchtgewordene Sinnlichkeit – und Superfood」、Augsburger Allgemeine「Die Deutschen und die Erdbeere – ist diese Liebe noch frisch?」、Abendblatt「Wer hat´s erfunden? Die Vierländer und die Erdbeeren」ハンブルクの紳士も夢中になったドイツとイチゴの甘い秘密
イチゴ自体は紀元前から食べられていたが、中世に欧州で知られていた「イチゴ」は、今よりもはるかに小ぶりなものだった。ある時、チリの海岸で偵察をしていたフランスの軍人アメデエ・フランソワ・フレジール(1682-1773)は、大きなイチゴの実を見つけ、その苗を持ち帰った。しかし王宮の庭ではあまり育たず、アメリカ産のバージニアイチゴとかけ合わせることに。こうして18世紀中頃、現代の原種となるイチゴが誕生した。それから現在まで、約1000種類のイチゴが生まれている。
ハンブルク南東の湿地帯ヴィアーランデは、1693年に商業的にイチゴを栽培した初めての地域といわれている。エルベ川の温暖な気候がイチゴの栽培に適していたため、石のない湿地帯の土壌に堆肥をまいたのだ。19世紀にはハンブルクの裕福な紳士たちがヴィアーランデに遠征した際、デザートとしてイチゴ入りのミルクを楽しむことが流行した。イチゴを販売した女性たちは、その地域に伝わる民族衣装を身につけて、客を呼び込む努力をしたという。
イチゴを存分に楽しむための Q&A
Q. イチゴの種類でおすすめは?
A. 用途や時期によって異なる。 Elsantaは、最もよくある品種の一つで、そのまま食べるのが一番おいしい。大きな果実がお好みならElviraがおすすめ。果実がしっかりしており、ケーキやデザートに最適な品種だ。Senga Senganaは、6月中旬〜7月中旬にシーズンを迎える、夏の代表的なイチゴで冷凍保存もできる。Honeoyeは大粒で、濃い赤色の果実と香りが特徴。果実の酸がかなり強いため、ジャムやソースに最適だ。
Q. イチゴのシーズンはいつ?
A. 5月に始まり、8月に終了。 ドイツで栽培されるイチゴのシーズンは約90日間。ドイツ各地のイチゴ農家ではイチゴ狩りを楽しめる。一方、イチゴのドイツ国内の需要が国内生産量を大きく上回っているため、スペイン、オランダ、ギリシャ、イタリア、ベルギーなどから、毎年約12万トンものイチゴを輸入している。ちなみに、オフシーズンに並ぶイチゴは、11月から2月にかけてはエジプト産、1月から3月にかけてはモロッコ産のものが多い。
Q. イチゴはビタミンC以外にも栄養があるの?
A. 血圧やコレステロール値が改善することが証明された。 2021年、ロストック大学が172人の被験者に10週間毎日、全員で合計500キログラムのイチゴを食べさせる調査を行った結果、血圧やコレステロール値が改善され、さらに炎症反応の数値が明らかに下がったという。ちなみにイチゴにはレモンよりも多くのビタミンC、カリウム、マグネシウム、カルシウム、食物繊維が含まれている。
イチゴファンの夢を叶えるカールス社のイチゴのテーマパーク!
ドイツにある「イチゴ」のテーマパークをご存じだろうか。イチゴ生産者であるカールス社によって運営されているこの施設は、ロストック郊外のレーファースハーゲンをはじめ、ベルリン郊外など5カ所にある。パーク内では、イチゴ狩りをはじめ、イチゴを使ったおいしい食べ物を味わったり、イチゴをモチーフにした乗り物や動物とのふれあいの場があったりと、家族連れにも人気。お土産にイチゴのグッズも忘れずに!
Karl's Adventure Village Rövershagen
Purkshof 2, 18182 Rövershagen
※Elstal、Zirkow、Warnsdorf、Koserowにもあり
https://karls.de
イチゴを味わうレシピ
火を使わずに簡単!イチゴのティラミス
イチゴのソースとビスキュイ、マスカルポーネを使ったデザート。火を使わずに簡単なのに、見た目はとっても豪華。時間がたつとビスキュイが水分を吸収し、ふんわりとした味わいに。
(本誌1171号より) レシピはこちらから食卓がぱっと華やかにイチゴとブッラータのサラダ
甘酸っぱいイチゴとクリーミーなチーズ「ブッラータ」の相性が最高なサラダ。ルッコラやノジシャなどの葉野菜の上に盛り付けることで、春らしい食卓を演出してくれる。白ワインビネガーのドレッシングでいただこう。
(本誌1147号より) レシピはこちらからこれも食べてこそドイツの春ベアラオホを食べてみよう
「西洋の行者にんにく」といわれるベアラオホ。ペーストにするのはもちろん、実は和食や中華にも合う春の味覚をぜひ味わってみて。
参考文献:Wissensspeicher Ingolstadt、Freundeskreis Botanischer Garten Aachen e. V.、NRD「Bärlauch sicher erkennen und sammeln」(2022年3月18日)、Deutschlandfunk Kultur「Rhabarber, Rhabarber」(2008年5月18日)野草を摘みに春の森へベアラオホの見分け方
春が訪れると、スーパーや市場で気軽に手に入るベアラオホ。ドイツでは、自分でベアラオホを摘みに森へと出かけるという人も少なくない。ただし自分で摘む場合は、有毒物質を含むスズランやイヌサフランと似ているため注意が必要だ。一番簡単な見分け方は、ベアラオホの葉を潰してみること。ニンニクの匂いがすれば正解。ほかの葉はこのような匂いがしない。またベアラオホの特徴としては、まず葉っぱから芽を出し、6週間後に初めて花芽をつける。一方、スズランの場合は、ベル型の茎が葉と同時に地面から出てくる。
ちなみにベアラオホ(直訳で「クマのネギ」)という名前の由来は定かでないが、一説によるとクマが冬眠後の重要な栄養素を摂るために、冬眠から目覚めたらまず緑色のベアラオホを探しに行ったことからこの名前がついたという。古代ゲルマン人は、クマがベアラオホに力を移すため、この植物を食べるとクマの力が人間に移されると信じていたという説も。
ベアラオホを存分に楽しむための Q&A
Q. ベアラオホのシーズンは?
A. 通常 4月~5月。 早ければ3月に姿を見せるが、通常は4月〜5月。5月頃になって花が咲き始めたら収穫期を終える。その頃には葉の香りはかなり失われている。多年草で丈夫なので、庭でも簡単に栽培することができる。
Q. ベアラオホはドイツでは何の料理に使われる?
A. 刻んだ葉をクリームチーズやバターに混ぜて使用 香り豊かなベアラオホの葉は、スープやパスタソース、キッシュ、リゾットなど、さまざまな料理に適している。ただし香りが消えやすいため、温かい料理では加熱しすぎないように注意しよう。炒め物なら料理の最後に加えるか、食べる前に上に生のまま載せると良い。ニラに代わる食材として、レバニラやキムチなどにも。花は食用にもなり、サラダなどの飾りに最適だ。
Q. ベアラオホにはどんな栄養があるの?
A. ビタミンC、鉄、カリウム、カルシウム、マグネシウムなど豊富! 胃や腸の疾患、心臓血管系の疾患に良い効果が期待できるとされている。薬用植物としても知られていて、ベアラオホの顆粒やカプセルなどは一年中販売されている。
Q. ベアラオホは持ちが良い?
A. 冷蔵庫で1~2日程度しか保存できない。 冷蔵庫に入れるときは湿らせたキッチンペーパーに包んでおくと良い。また冷凍したり、オリーブオイル漬けにしたり、ペーストにすることで長期保存もできる。
ベアラオホを味わうレシピ
ごはんが進むこと間違いなし!ベアラオホでごはんのお供2種
味も香りもニラにそっくりなベアラオホは、和食にも重宝したいところ。ベアラオホの味噌漬けと醤油漬けは常備菜にぴったり。お酒のおつまみにしたり、料理にちょっと加えたりと、アレンジが効くのもうれしい。
(本誌1073号より) レシピはこちらからまだまだあるドイツの春野菜
ルバーブ Rababer
ルバーブは明るい赤色とその酸味が特徴で、ドイツのカフェなどではジュースやデザートとして見かけることが多い。皮をむいて小さく切った茎は、鍋に少量の沸騰したお湯を入れて20分ほど煮るとなめらかに。実はルバーブの根にはアントラキノンという成分が含まれており、中国では根の粉末が何千年も前からアメーバ赤痢や便秘などの腸内寄生虫の治療に使われてきた。やがてこの粉末は、13世紀ごろから中国からシルクロードを通って欧州に運ばれるように。治療薬として不可欠だったため、当時はシナモンやアヘンよりも高価な粉末だったという。
チャービル Kerbel
チャービルはセリ科に属し、春に最初に芽を出す植物の一つ。アニスにも似たほのかに甘い香りが特徴。パセリと似ているが、そこまでクセがなくまろやかな味なので、デザートの飾りとしても使用される。ツタンカーメンの墓からは、「死後の世界への贈り物」としてチャービルの種が入ったバスケットが発見されており、欧州南東部でも古くから栽培されている。チャービルは霜に強いため、ドイツでも春に収穫する最初のビタミン豊富なハーブとして修道院などで重宝された。
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