金融危機にユーロ危機、次々と襲いかかる経済不安。
景気の悪い話が耳をつく今日この頃。
実生活と、切っても切り離せないお金の話に敏感になっている人は多いはず。
今回は、お金のプロの皆さんの力を借りながら、真剣に考えれば世界が広がり、
笑顔も増える、そんなお金の話をQ&A形式でおさらいしよう。
(編集部:高橋 萌)
ニュースダイジェスト編集部。
アラサーで未婚。これまで自由気ままに生きてきたけれど、そろそろ結婚や出産など人生の次なるステップに向けて心と資金の準備を始めたい(本音)。
シュタットシュパーカッセ・デュッセルドルフの
エアハルトさん
日独両方の銀行でお仕事された経験と抱負な知識、やわらかな物腰でドイツの日常生活に欠かせない銀行とのお付き合いを支えてくれるエキス
メッツラーアセットマネジメントの隅田さん
金融業界に長く身を置き、修羅場をくぐり抜けてきたお金の達人。そこで培われた感と哲学、豊富な情報からお金とのつきあい方をジョークを交えつつ熱く語ってくださる。
Metzler Asset Management GmbH: www.metzler.com
ゲルトくん
ドイツでの暮らしに必要なお金に関する制度について目下、研究中。
1. お金って、どうやったら貯まりますか?
思ったように貯蓄が増えません。いろいろなところで節約してはいるんですけど、欧州で暮らしていると旅行も楽しいし、なんて言い訳ですけど・・・・・・。
まずは、ご自身のライフプランあってのマネープランです。あと何年くらいドイツで生活する予定か? 転職の予定は? 家族がいたら進学や住宅購入についても考えるでしょう。そういった個々の状況によって、有効なマネープランは異なります。自分の将来設計を見通した上で、どのタイミングで、どのくらいのお金が必要なのかを考えるところから始めてみましょう。
「利益(お金)とは、目的ではなく、手段である」(ピーター・ドラッカー)ってことをついつい忘れていました。漠然と、将来のために貯蓄を増やそうと気が焦っていましたが、人生設計に合わせてマネープランを立てないと、人生を楽しめないということですね。
手続きを行えば、単身者で最高801ユーロ、既婚者で最高1602ユーロが非課税に。手続きに必要な税識別番号(Steuer-Identifikationsnummer)を控え、口座を開設している銀行でご相談を。
● 被雇用者の財産形成を支援する制度
『Vermögenswirksame Leistungen』 被雇用者のための貯蓄制度。月額最高40ユーロ、貯蓄用に口座に収入が振り込まれる仕組み。自営業者、フリーランサー、試用期間中、年金受給中の人は対象外。パートタイムの人は制限付きとなる。銀行貯蓄、住宅資金貯蓄、企業年金、ファンドなど制度として5種類の貯蓄プランがある。手続きは簡単。この制度の利用を雇用者に申し出るだけ。条件を満たせば、国からの助成金ももらえる。
2. ドイツでの銀行との付き合い方、注意点は?
世界中にたくさんの銀行があり、金融商品も様々。海外で生活する際も、口座を作って、貯まったお金を運用するのに、銀行とのお付き合いは欠かせません。ドイツの銀行を利用する際、どんなことに注意したら良いでしょう?
まず、どの銀行を選ぶかですが、オンラインバンキングに強い、手数料が安い、金利が高い、信頼できる、など銀行によって条件に差があると思います。ご自身で金融商品を選び、リスクに対処できる知識や経験をお持ちであれば、窓口のないオンライン・バンクでお得な条件を活用するのも良し。銀行員の知識を引き出し、相談しながら安心・安全を優先する運用をお望みなら、すぐに相談できる支店を持つ銀行を。金融商品についてもそうですが、自分なりの条件を持って、納得できるものだけを取捨選択することが大切です。
大切な自分の財産を預ける銀行。
慎重に選びたいものです。
大きなリターンを目指すには、大きなリスクを負わなければならない。これが、運用の際の原則。口座で言うと、お財布感覚でいつでも引き出しや預け入れができる振替口座より、一定期間は解約できない定期預金や積み立て預金の方が金利が高くなっている。振替口座をほったらかしにして、運用できるお金を眠らせてはいませんか?(自己反省も込めて)
● サインは印鑑代わり『Unterschrift』
ドイツでは、書類にサインを求められる場面が多くあります。サインは、日本の印鑑と同等の効力を持つものなので、銀行でのサイン登録は慎重に。真似されにくく、そして自分にとって書き慣れた(忘れない)ものを。何が書かれているのか分からない契約書にサインをするのは絶対にNG。サインした契約は、取り消しができないものと思って。
3. 「備えあれば憂いなし」とは言いますが、
どんな備えをしておきましょう?
いつまでも健康で、トラブルなし! そんな人は、世の中そうそういません。加入が義務付けられている健康保険には加入しているけど、いざと言うとき、それだけで大丈夫?
健康を守るための保険(健康保険)のほか、生活を守るための保険(生命保険、個人賠償責任保険、家財総合保険など)についても、一度見直してみましょう。
4. 老後の備え、早めに始めたいのですが?
少子高齢化の時代が本格化していく中で、日本でもドイツでも、年金制度だけに頼っていては老後の生活で、とても苦労しそうです。
年金が破たんする可能性は、日本でもドイツでもかなり低いでしょう。ただし、年金の支給開始年齢は引き上げ傾向にあり、自分が何歳まで働けそうか、働きたいかを見通しながら私的年金に加入するなど、公的年金+αの対策があるとより安心でしょう。
ドイツと日本の2国間で年金の加入について取り決めた協定。年金の二重加入を防止し、また年金加入期間を通算することができる。詳細は社会保険庁(日本)、またはDeutsche Rentenversicherung Bund(ドイツ)にお問い合わせください。
● 公的年金 『Altersrente』
老齢年金のほかに稼得能力の減退による年金があることがドイツの年金制度の特色。現在、被雇用者の名目賃金に占める年金保険料は19.9%。5年以上の加入で受給資格が得られ、2011年現在、支給開始年齢は65歳。
● 私的年金 『Privatrente』
公的年金に加えて、被雇用者用のリースター年金(Riester-Rente)や、自営業者のためのリュールップ年金(Rürup-Rente)がある。日本に帰国予定の人には向かないが、ドイツで老後を迎えようと考えている人は、一考の価値あり。
5. 結婚や出産を経て、家族を持ったら
適用される、お金にまつわる制度は?
配偶者や子どもがいる場合、お金の面でどんなメリット&デメリットがあるのでしょう?
夫婦に対する所得税は、専業主婦(夫)家庭にやさしく共働き夫婦に厳しいなど、時代に即していないと批判されているけど、一方で、確かに子育て期間における国からの金銭的援助が手厚いのがドイツです。
『Ehegattensplitting』
夫婦のどちらか一方が家計を担うことを前提にした税制。そのため、共働きの夫婦より片方のみが働いている夫婦の方が税負担が少ない。
● 児童手当『Kindergeld』
子どもが18歳(学生は25歳)になるまで保護者に支給される。1カ月当たりの支給額は、第1、2子が1人につき184ユーロ、第3子は190ユーロ、第4子以降は215ユーロ。これらは非課税。
● 両親手当『Elterngeld』
育児休暇中の12カ月間は、休暇に入る前の手取り月収の67%(月額上限1800ユーロ)が支給される。さらに、もう一方の親も育児休暇を取ると、支給期間が2カ月間延長される。
● 児童控除『Kinderfreibetrag』
児童手当の代わりに受けることができる税金控除制度。1年間の所得金額にかかる税額が、子ども1人の家庭で2208ユーロ以上である場合など、高所得者には児童手当よりも有利な制度。
6. ユーロの将来に、
ちょっと不安を持っています。
ギリシャ危機や、世界的な不況のあおりを受け、ユーロが対円でめっきり安くなってきました。数年前までは、1ユーロ≒150円の時代もあり、ユーロで振り込まれるお給料を円に換算してはニヤニヤしていたのに。今、大揺れに揺れているユーロの未来を、どう見れば良いのでしょう?
私自身は、ユーロの未来を悲観していません。ユーロは強い通貨になるために試練の時を迎えていることは確かですが、これを乗り越えたとき、例えばギリシャは前よりもずっと健全な財政状況になるでしょう。良薬は口(国?)に苦いもの。そういう意味で、ユーロ諸国は総じてあるべき方向に向かっていると思います。通貨の価値は、信用があるかないか。信用がなければ、お金もただの紙切れ。だから、健全な土台を持った強い通貨を持つというのは、意味のあることだと信じています。
円高ユーロ安にばかり目を向けていました。もっと長い目で通貨を捉える必要があるかもしれませんね。
7. 資産運用を考える際、
どんなことに注意したら良いですか?
ただお金を貯めるのではなく、そのお金を運用したい。その行動を起こす前に知っておくべきこと、心構えについて教えてください。
一攫千金を目指すなら、ギャンブルに走るのも1つの手です。でも、そこまで高いリスクを負わないで、自分の人生のために資産を大切に運用をしたいと考えるとき、一番重要なことは「常に出口戦略を考えながら行動すること」です。つまり、いつ止めるのか、どういう状況になったら止めるのか、あらゆるリスクに備えて出口を準備しておく。何のための資金なのか、何のために運用しているのか、目的が明確だと出口も見えやすいですね。これは人生論にも通じる部分があると思います。
確かに「出口戦略」は人生の選択にも当てはまる哲学ですね。いろいろとお金にまつわるお話を伺ってきましたが、自分の知識の中ではとてもじゃないけれど対応しきれないような気がします。
そんなときは、迷わずお金のプロに相談するのが良いでしょう。日本で言うFP(Financial Planner)のように、ドイツにはIFA(Independent Financial Adviser)という人たちがいます。彼らはお金のプロとして、独立した業務を行っているので、第三者の視点で的確なアドバイスをくれるはずです。もちろん、銀行にも優秀なアドバイザーがたくさんいて、いろいろな情報を提供してくれるでしょう。
お金のことを考えるって、人生を考えることに繋がるんですね。どうにかして丸儲けしたい、儲けられなくても、損はしたくないと、がめつく望んだこの企画ですが、大切なことを教えていただきました。自分が心から望む人生、それこそ欲や見栄、恐れも含めて目をそらさずに向き合えば、もっとお金と仲良くなれそう。お金を自分にとって一番有効なツールにするために、お金との付き合い方をもう一度考え直したい。ドイツでの暮らしの中での新たな課題が見付かりました。
- 連邦法務省 www.bmj.de
- 連邦財務省 www.bundesfinanzministerium.de
- 銀行比較サイト www.banken-auskunft.de
- 連邦保健省 www.bmg.bund.de
- 健康保険ポータルサイト www.krankenkassen.de
- 日本社会保険庁 www.sia.go.jp
- リースター年金 www.riester-rente-infoportal.de
- リュールップ年金 www.ruerup-rente-infoportal.de
- 連邦家庭省 www.bmfsfj.de
ドイツには2277もの金融機関が存在する(2007年現在、連邦銀行調べ)。 ここでは、その中のほんの一握り、特色ある11の銀行をご紹介。
comdirect bank
オンライン銀行としては長い歴史を持つコメルツバンクの姉妹銀行。口座開設時に50ユーロのボーナス+満足保証があるなど、新規顧客へのサービスが充実。
振替口座:comdirect Girokonto
口座維持費:0ユーロ/月
EC-Karte:無料
クレジットカード:VISA(無料)
ATM(Geldautomaten):国内約9000カ所
銀行グループ:Cash Group
www.comdirect.de
Commerzbank
ドイツでナンバー2の預金高を誇る銀行。下記の振替口座のほか、学生用の口座、毎月1200ユーロ以上の入金がある人を対象とした口座もあり、これらは維持費無料。
振替口座:Aktiv-Konto
口座維持費:5.90ユーロ/月
EC-Karte:無料
クレジットカード:MasterCard(29.90ユーロ~/年)
ATM(Geldautomaten):国内約9000カ所
銀行グループ:Cash Group
www.commerzbank.de
norisbank
ドイチェ・バンクの姉妹銀行。口座維持費無料の振替口座としては、そこに含まれるサービスの多さに定評がある。とにかく安く手軽に口座を持ちたい人向き。
振替口座:Top Girokonto
口座維持費:0ユーロ/月
EC-Karte:無料
クレジットカード:MasterCard(無料)
ATM(Geldautomaten):国内約8000カ所
銀行グループ:Cash Group
www.norisbank.de
ING-DiBa
ドイツ最多の顧客数を誇るオンライン銀行。現金の引き落としはATMのほか、スーパーマーケットREWEのレジでも可能(20ユーロ以上の買い物をした場合)。
振替口座:Girokonto
口座維持費:0ユーロ/月
EC-Karte:無料
クレジットカード:VISA(無料)
ATM(Geldautomaten):国内約1200カ所
銀行グループ:ING-DiBa
www.ing-diba.de
netbank
「ネットバンク」という名前の通り、オンライン銀行。振替口座 giro Loyal は、口座の目的別に条件が異なり、給与の振込口座として利用すると各種カードの利用料が無料に。
振替口座:giro Loyal
口座維持費:0ユーロ/月
EC-Karte:5ユーロ/年(初年度無料)
クレジットカード:MasterCard(20ユーロ/年)
ATM(Geldautomaten):国内約2500カ所
銀行グループ:Cashpool
www.netbank.de
Stadtsparkasse Düsseldorf
シュパーカッセ(貯蓄銀行)は、信頼度とサポート力で評価が高い。各都市で独立運営しており、サービス内容も異なる。デュッセルドルフには、日本語対応のデスクがある。
振替口座:Vorteilskonto Plus
口座維持費:5.20ユーロ/月
EC-Karte:無料
クレジットカード:MasterCard(18ユーロ/年)
ATM(Geldautomaten):国内約2万5000カ所
銀行グループ:Sparkassen-Netz
www.sparkasse.de
DKB
国内には支店が9カ所しかないが、オンライン銀行としてその機能を発揮。DKB-VISA-Cardを使用し、世界中で引き落とし無料という強みを押し出している。
振替口座:DKB-Cash
口座維持費:0ユーロ/月
EC-Karte:無料
クレジットカード:VISA(無料)
ATM(Geldautomaten):DKB-VISA-Cardで、世界約100万カ所(例:デュッセルドルフ約20、ミュンヘン約10)
www.dkb.de
Postbank
豊富な支店、潤沢な人材がポストバンクの財産。振替口座Giro plusは、毎月1000ユーロ以上の入金があれば毎月の維持費が無料になる。
振替口座:Giro plus
口座維持費:5.90ユーロ/月
EC-Karte:無料
クレジットカード:VISA/MasterCard(22ユーロ/年、初年度無料)
ATM(Geldautomaten):国内約9000カ所
銀行グループ:Cash Group
www.postbank.de
Deutsche Bank
ドイツ最大の銀行として、幅広いサービスを展開。下記のAktivKontoのほか、特典の多いBestKonto(維持費9.99ユーロ/月)が人気。
振替口座:AktivKonto
口座維持費:4.99ユーロ/月
EC-Karte:無料
クレジットカード:VISA/MasterCard(30ユーロ~/年)
ATM(Geldautomaten):国内約9000カ所
銀行グループ:Cash Group
www.deutsche-bank.de
Targo Bank
Citibankがフランスの信用協同組合 Crédit Mutuel に売却されて、2010年2月22日からTargo Bank に名前を変えた。毎月600ユーロ以上の入金で口座維持費無料。
振替口座:Aktiv-Konto
口座維持費:4.90ユーロ
EC-Karte:無料
クレジットカード:VISA(30ユーロ/年、初年度無料)
ATM(Geldautomaten):国内約2500カ所
銀行グループ:Cashpool
www.targobank.de
● 口座の維持費(Grundgebühr)
オンライン銀行では無料のところも多い。また、たとえ口座維持費が有料でも、金利の条件が良く、保険やクレジットカードなどの特典がある場合、総体的に見て無料の口座よりも有利なことも。口座維持費に何が含まれているかをしっかり確認。維持費無料の条件(預金額や入金額)がある際は、帰国時の解約なども考える必要あり。口座を開設したら、閉設まで管理を。
● 銀行グループ(Geldautomaten-Verbunde)
ドイツには、ATMの利用を定めた銀行グループがあり、同じグループ内では、無料で預金の引き出しなどができる。
● 金利(Zinsen)
金利が付かない場合の多い振替口座だが、中には金利付きのものもあるので要チェック。
※上記の情報は2011年7月5日現在のものです。予告なく変更になる場合がございます。詳細については、各行にお問い合わせください。