自然や環境、健康、持続可能性に対する意識が高いと言われるドイツで、
「エコ」や「社会性」といった概念が、
どのような形で生活に取り入れられているのかを、
主要都市を巡りながら探る都市特集の第5回。
最後となる今回は、ハンブルクを取り上げよう。
ここは世界有数の湾岸都市であるというだけでなく、
国内都市別幸福度指数ランキングで第1位を獲得するほど、
”幸せな”街でもある(ドイチェ・ポスト 2012年調べ)。
日 常に根付くエコや社会性も、
きっとハンブルクの人々の幸せを支えているはず。
(編集部:林 康子)
食品 Lebensmittel
1. フェアトレードのアップル&マンゴー・ジュース
Süd-Nord Kontor
フェアトレードを広く社会にPRし、教育分野にも取り入 れようと活動するハンブルクの公益団体「hamburg mal fair」。これまでにサッカーボールやコーヒー、チョコレートなど、独自のフェアトレード商品を開発してきた同団体 が、2009年に発売を開始したのが、こちらのアップル &マンゴー・ジュースだ。伝統農法に基づき栽培された フィリピン産の上質なマンゴーとハンブルク近郊ニーンヴォールトのシュミット果樹園(Süßmost Schmidt)で 採れたビオのリンゴを組み合わせた、環境にやさしい“社会派”のジュースは、フェアトレードの卸・小売業を営む 「Süd-Nord Kontor」のほか、ハンブルク市内13カ所のフェアトレード・ショップ(Weltladen)で購入可能。
10:00-19:00 土10:00-14:00 ※日月祝休み Stresemannstr. 374, 22761 Hamburg
最寄駅:S Bahrenfeld
Tel: 040-8906133
www.sued-nord-kontor.de
www.hamburgmalfair.de
2. 国内外の希少なビールがずらり
Bierland
ビール王国ドイツで飲めるビールの種類は数あれど、このお店ほどイン ターナショナルな品揃えを誇るビール販売店は、ほかに見当たらないだ ろう。ドイツ国内、欧米、アジアなど、世界各地から取り寄せているビー ルは約360種。1日1種類試すとして、ほぼ1年間、毎日異なる味を楽しめる計算だ。南米生まれのオーナー、シュミット=ボーレンダーさんは、通訳業務を経て学生時代にアルバイトをしていた飲料品店を継ぎ、その店を2005年にビール専門店へと改装した。特に小規模醸造所のビールの販売に力を入れているのは、「大手メーカーにはない個性豊かな味を支援したい」から。同店では不定期で、ビールに合う料理、ビールを使った料理の講習会も開いている。
10:00-20:00 土10:00-18:00 ※日月祝休み Seumestr. 10, 22089 Hamburg
最寄駅:S / U1 Wandsbeker Chaussee
Tel: 040-208971
www.bierland-hamburg.de
3. ドイツの森からの贈り物
Waldstück
自然豊かなドイツでは、人々は古くから森と共存してきた。生活の糧を 森からいただく── 林業を営む父親の下、幼い頃から森に親しんできた というビンロートさんは、その原点に立ち返り、現代人のライフスタイルに合った持続可能性を探りたいと考え、森で作られたものを販売するお店を始めたそう。木の香りが安らぎを感じさせる店内には、シュヴァルツヴァルトのほか、欧州各地の森から集められた食品や木製のおもちゃ、インテリア雑貨など、生活に彩りを添えるアイテムがセンス良く置かれている。中でも食品は、北ドイツ産のベリージャムやアカシアの 実のケーパー、セイヨウカリン入りのケチャップなど、珍しいものばかり。同店の商品は、オンラインショップでも手に入る。
10:00-14:00 / 15:00-19:00 / 土10:00-16:00
※日月祝休み
Osterstr. 18, 20259 Hamburg
最寄駅:U2 Osterstraße
Tel: 040-43280140
www.waldstueck.com
カフェ&レストラン Cafés & Restaurants
4. ビオのファストフード
WakuWaku
若年層を中心に食に対する意識が高まっている一方で、「ビオはやや高級」という印象が根強いのも確か。同店は、そんなイメージを払拭し、誰もが気軽にビオ食品に親しめる環境を作るべく、今年4月にオープンしたビオ・ファストフード店。カジュアルモダンな内装が、店名の通りワクワクと心弾ませるデリカフェには、インドカレーからサンドイッチ、スナック、サラダまで、その時々の気分や予算に応じて選べる食べ物がいっぱい!持続可能なファストフード店を目指しているというだけあって、テイクアウト用の器やテーブルナプキンまでリサイクル品を使用する徹底ぶりだ。
8:30-22:00 土10:00-21:00 日11:00-19:00
Dammtorstr. 29-33, 20354 Hamburg
最寄駅:U2 Gänsemarkt
Tel: 040-30997499
www.facebook.com/WakuWakuHamburg
5. 地元の食材を使った創作フレンチ
FuH – Ein Raum zum Speisen
「ビオ」や「地元産」のものがブームになる前から、それらを積極的に取り入れてきた創作フレンチ・レストラン。星付きレストランでコック の修行を重ねてきたエーリッヒさんが、味は星付きのレベルを保ちながら、リーズナブルな料理を届けたいとの念願叶って8年前に開いたお店だ。地元の農家を支援するシュレスヴィヒ=ホルシュタイン州の食糧プロジェクトに参加し、気の知れた生産者から食材を仕入れることを心掛けているエーリッヒさんは、ここで日々、旬の厳選食材を使った3つのメニューを提供している。どこか農村の食堂を思い起こさせる、温かみ溢れる雰囲気の中、繊細ながらも素材の旨みが活かされた素朴な料理を楽しめるレストランは、まさに都会のオアシス。
17:30-23:00 日17:00-22:00 ※月火休み
Fischers Allee 42, 22763 Hamburg
最寄駅:S Altona
Tel: 040-3900566
www.restaurant-fuh.de
6. 昔ながらのシンプルな焼き菓子
BioKonditorei Eichel
焼き菓子が大きな発展を遂げた中世には、菓子職人が時間を掛け、経験を重ねてレシピを改良していったもの。しかし今や、製造工程の効率化を図り、よりクリアな風味を出すため、食品添加物や香料、既成のケーキのもとを使うことが通例となっている。そこであえて伝統を見つめ直し、ビオの材料のみで昔ながらの焼き菓子を提供しようと思い立ったのが、5つ星ホテルでパティシエ長を経験した 菓子職人アイヒェルさん。2005年に誕生した北ドイツ初のビオの菓子屋でこれまでに生 み出されたケーキの数は、季節の素材を使った定番の味からヴィーガン用、グルテンフリーのものまで、なんと150種類以上。クッキーやチョコレートなども、原料の甘みが凝縮された「元祖スイーツ」と言える味わいだ。
10:00-19:00 ※月曜休み
Osterstr. 15, 20259 Hamburg
最寄駅:U2 Osterstraße
Tel: 040-43193151
www.biokonditorei-eichel.de
ショップ Shops
7. アーティストたちの交流の場
kunst kiosk
新聞や雑誌、お菓子、飲み物など、日常のちょっとした買い物をしたり、そこで出会った近所の人と立ち話をしたりするキオスク。それをアートの分野に応用させたのが、ここ「kunst kiosk」だ。同店は、ハンブルクとその周辺地域の若きデザイナーにとって、コストが掛かるギャラリーを使わずとも、自分たちの作品を披露し、デザイナー同士が情報交換できる場となっている。壁の棚の1スペースを借り、そこに自分の作品を置いて販売できるという仕組み。さらに、注目のデザイナーの作品展示スペースも設けられている。商品はアクセサリーから文具、衣服まで様々。ザンクト・パウリという、アーティストが多く、若者に人気のエリアという土地柄、小さな流行発信地となっているよう。
11:00-20:00 ※日曜休み
Paul-Roosen-Str. 5, 22767 Hamburg
最寄駅:U3 St. Pauli
Tel: 040-37429522
www.kunstkiosk-hamburg.de
8. 人と地球に優しいジュエリー
Thomas Becker –Atelier für Schmuck
人は、宝石に究極の美を感じる。しかし、その美が環境破壊や労働者搾取の上に成り 立っているとしたら……。金細工師トーマス・ベッカーさんが大切にしているのは、「緑の金」「フェアな金」を使用すること。つまり、デザイン性や品質に加え、宝石が採掘 過程で環境への負荷を最小限に抑えるよう考慮されたものであるか、その労働環境が 公正と認められたものであるかを重視して いるのだ。工房では、古くなったジュエリーや金歯を使ったリサイクルジュエリーも作られている。特に人気が高いのは、鮮やかな色合いのストーンネックレスや、正確さが要求される精細なデザインのリング。ベッカーさんの確かな技術と独創性は、多くの日本人顧客をも惹き付けている。
10:00-19:00 土10:00-16:00
Grindelhof 45, 20146 Hamburg
最寄駅:U1 Hallerstraße
Tel: 040-44809292
www.tbschmuck.de
9. 生活用品のレンタルショップ
Life Thek
所有よりも共有、すなわち「協力的消費(Collaborated Consumption)」という米国発の概念は、モノを大切にする国ドイツで今、急速に浸透している。ハンブルク初のレンタル用品店「LifeThek」では、自転車からチャイルドシート、おもちゃ、アウトドア用品、ガーデニング工具まで、オーナーのフェルトマンさん自身が生活の中で「一定期間は必要だけれど、買うと高いし、保管場所も取られるな」と感じたものを中心に、主に若い世代のニーズに応えるアイテムを取り揃えている。レンタル期間は最長で約3カ月。フェルトマンさんいわく、それ以上使う場合は買う価値があるのだそう。
10:00-18:00 土10:00-14:00 ※日曜は返却のみ可
Daimlerstr. 71c, 22761 Hamburg
最寄駅:S Bahrenfeld
Tel: 040-31992209
http://lifethek.de