ジャパンダイジェスト

旅ールのすすめ - ビールに会いに旅に出よう

山片 重嘉コウゴ アヤコ 1978年東京生まれ。杏林大学保健学部卒業。ビール好きが高じて2008年から1年半、ミュンヘンで暮らす。旅とビールを組み合わせた“旅ール(タビール)をライフワークに世界各国の醸造所や酒場を旅する。ビアジャーナリストとして『ビール王国』(ワイン王国)、『ビールの図鑑』(マイナビ)、『Coralway』(日本トランスオーシャン機内誌)など、さまざまなメディアで執筆。 www.jbja.jp/archives/author/kogo

バイエルンの高級保養地で飲む公爵様のビール

テーゲルン湖はミュンヘンから北に50キロほどの場所に位置する、バイエルンアルプスの山々に囲まれた美しい保養地だ。ミュンヘン中央駅から、アルプスの町々を繋ぐ私鉄BOBに乗り、次第に濃くなっていく緑を眺めながら1時間もするとテーゲルンゼー駅に到着する。

かつて王侯貴族に愛された高級保養地ともあって、落ち着いた雰囲気だ。湖は幅2.15キロ、長さは5.72キロほどの楕円形をしており、アルプスから注ぐ水が美しい水面を作っている。湖畔に沿って設けられた遊歩道を散策してみよう。キラキラと小波を立てて進むヨット、岸辺で水遊びする子供たち、桟橋には毛づくろいをする水鳥の集団。これからまた一段と、山と空と湖のコントラストが美しい季節を迎える。

木々の向こうに見える2つの塔は、746年に創立されたベネディクト会テーゲルンゼー修道院のものだ。内部は白を基調に絢爛豪華な装飾が施されたバロック様式で見応えがある。その同じ建物に、今回紹介する醸造所と直営レストランがある。

醸造所は修道院の付属醸造所として1050年に創業された。現存する世界最古の醸造所ヴァイエンシュテファンの創業が1040年といわれているから、それに次ぐ長い歴史を持つ。19世紀初めにバイエルン王マクシミリアン1世の所有になってからは、王立醸造所(Königlich braunes Brauhaus Tegernsee) としての役割を果たした。現在はヴィッテルスバッハ家のアンナ・マリア公爵夫人(バイエルン最後の王ルートヴィヒ3世の4代後)によって運営される、バイエルン公爵醸造所(Herzoglich bayerisches Brauhaus)だ。

「Tegernseer Hell」は華やかな麦芽の香ばしさにホップのはつらつとした苦みが寄り添い、飲み飽きずに何杯でも飲めてしまう。初夏の抜けるような青空のように爽快なビールだ。

vol.17
Tegernseer Hell

Tegernseer Hell

 
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