バイエルン州の学校の夏休みは、だいたい8月頭から9月中旬までの6週間。ドイツのほかの地域と同様、この時期は大人たちも休暇を取ることが多く、街中はいくらか静かで交通機関も空いています。もちろん観光客の集まるスポットはいつも通り、もしくはそれ以上のにぎわいを見せていて、たくさんの外国語が飛び交っています。近年はまったく耳なじみのない言語が聞こえてくることも増え、今更ながら移民国家としてのドイツを感じます。また、ミュンヘンを訪れる観光客の出身国も変わりつつあるのかもしれません。
さて、ミュンヘンを訪れる人が息抜きをするのに人気の場所としては、英国庭園やオリンピック公園などが定番ですが、今回はちょっと静かな公園を2カ所、訪れてみました。
ルイトポルト公園の丘から、ミュンヘンを一望
シュバービング地区にあるルイトポルト公園(最寄駅は地下鉄Scheidplatz)は、バイエルン王国の摂政ルイトポルトを記念して20世紀初頭に造られたもので、敷地面積はおよそ33ヘクタール。オベリスク周辺には当時植樹された90本の菩提樹と25本のオークを見ることができます。訪れた時間帯が午前中だったというのもあるのでしょうが、よく晴れた夏の日にしては人が少なく、ベビーカーを押す母親たちや幼稚園児のグループ、散歩する中高齢者などを見かけるくらいでした。全体的な印象はとても明るく、この場所が公園になる前からあったと思われる巨木が遊歩道に心地よい影を投げかけているため、歩くのも苦になりません。ついつい思っていたよりも長い時間を過ごしてしまいました。公園内には第二次世界大戦時の瓦礫を利用してつくった丘もあり、登るとミュンヘンを一望できます。そして公園中央、西寄りにあるバロック様式の館バンベルクハウスには、すてきなテラスのあるレストランが設けられています。結婚式や各種イベントなどでの利用にぴったりのロケーションですね。また、ビアガーデンも併設されているので、ちょっと優雅な気分で気軽にビールを楽しむこともできます。
ワイルドかつ上品な、ローズガーデン
もうひとつの公園は、イザール川沿いのローズガーデン(最寄駅は地下鉄Kolumbusplatz)です。ザクセン通りに面した入り口は小さく目立たないため、つい通り過ぎかけましたが、中に入ると、小川のせせらぎが迎えてくれました。穏やかな川の流れの中に椅子が置かれていて夏らしく、ロマンチックです。ここではバラだけでなく、さまざまな樹木、果樹や花々が植えられているので、四季折々に違った姿が見られそうです。メインのバラは約1000種が植えられていて、夏から初秋にかけて楽しむことができます。園内はこじんまりとしながら、あちこちの隠れ家的ポイントに椅子が置かれていて、落ち着いた時間を過ごすのにぴったり。独りで読書を楽しむ人が多くいたのも印象的でした。イザール川の遊歩道、ヴィッテルスバッハ橋の南の出口から出て、この静かな空間を後にしました。
日独の自動車部品会社での営業・マーケティング部門勤務を経て、現在はフリーランスで通訳・市場調査を行う。サイエンスマーケティング修士。夫と猫3匹と暮らし、ヨガを楽しむ。2002年からミュンヘン近郊の小さな町ヴェルトに在住。