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Oliver Was­ser­mann
Mo. 22. Apr. 2019

自然体のスパークリングワイン「ペット・ナット」

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最近、ドイツでも「ペット・ナット(Pét Nat)」が生産されるようになりました。「ペット・ナット」はフランス語の「ペティヤン・ナチュレル(Pétillant Naturel)」の略語。「ペティヤン」は、ゼクトより内圧の低いパールワインに相当します。1990年代半ば、フランス、ロワール地方のナチュラルワインの造り手たちの間で、昔ながらのペティヤンの製法がリバイバルしたため、このような呼び名となりました。すでに、世界各地で生産されるようになっています。

昔ながらのペティヤンの製法とは、メトード・リュラル(Méthode rurale/田舎風製法)あるいはメトード・アンセストラル(Méthode ancestrale/古式製法)などと呼ばれるもので、16世紀に南仏のリムー地域で考案されたのだそうです。文献に登場するのは1531年です。

シャンパーニュやクレマン、ヴィンツァーゼクトなどは、シャンパーニュ製法(Méthode champenoise)あるいは伝統製法(Méthode traditionelle)と呼ばれる瓶内二次発酵法で造られます。アルコール発酵を終えたベースワインに、酵母と糖分を加えてボトリングし、ボトルの中で2度目のアルコール発酵を促す方法です。二次発酵で生じた二酸化炭素の泡がボトルの中に閉じ込められ、泡立つワインとなります。

「ペット・ナット」の場合は、二次発酵を行わず、最初のアルコール発酵を、途中から瓶内で行います。発酵途中の残糖のあるワインをボトリングし、瓶内で完全発酵させるのです。通常、出来上がったスパークリングワインの酵母の澱(おり)は取り除かず、味わいを調整するドサージュも行わないため、最もナチュラルなスパークリングワインだと言われます。

ただ、極めてナチュラルな製法であるがゆえに、造り手の思い通りの出来上がりにならないこともあります。ボトリング時の残糖値により、発酵後の残糖やガス圧が異なってきますが、ボトリングのタイミングを調整しても、狙い通りに仕上がらないこともあるのです。「ペット・ナット」には、ゼクトの内圧(3.5bar以上)に達しているものもあれば、それより低いパールワインの内圧で発酵を終えているものもあります。

大抵の「ペット・ナット」は、ボトル内に残る酵母の澱で濁っています。造り手によっては、ゼクト並みの内圧がある場合、動瓶(ルミアージュ)を行い、澱を瓶の口に集めて取り除く澱抜き(デゴルジュマン)という作業を行うこともあります。

1816年に、シャンパーニュメゾン、ヴーヴ・クリコ・ポンサルダン社のオーナー、マダム・クリコらが、ルミアージュとデゴルジュマンの方法を考案するまでは、シャンパーニュも酵母の澱で濁っていました。当時の人々は、シャンパーニュをグラスに注いた後、酵母が底に溜まるのを待ってから飲んだと言われています。濁りのある「ペット・ナット」を味わうときは、シャンパーニュが誕生した頃の人々の味わい方を追体験するような気持ちになります。

フランス同様、ドイツでも「ペット・ナット」は、主にナチュラルワイン、オーガニックワインの生産者によるもので、スキンコンタクトを行い、自然の酵母で発酵させるケースが多いようです。生産者たちも試行錯誤中であるため、今後が楽しみなカテゴリーです。

 
Weingut Meierer
マイアラー醸造所(モーゼル地方)

Weingut Meierer
注目の若手醸造家マティアス・マイアラー

創業1767年の家族経営の醸造所。8代目のマティアスはガイゼンハイム大学を卒業後、フリッツ・ハーグ醸造所に7年勤務、2013年に実家のワイン造りに加わった。ケステンのパウリンスベルクなどにトータル約7haの畑を所有。傾斜は最も急なところで勾配85%(約40度)に達する。栽培品種はリースリングのみ。平均樹齢は35年。辛口だけでなく、均整のとれた中辛口、甘口も生産。時を超越したモーゼルワインの真価を今日に伝えつつ、実験的なワインも生産している。日本には、デンマークのビール生産者「ミッケラー」にリースリングの果汁を提供したクラフトビール「リースリング・ピープル」(NEIPA)が先に上陸。ワインは今春から日本に輸出される。

Weingut Meierer
Am Herrenberg 15, 54518 Kesten
Tel. 06535-7012
www.weingut-meierer.de


2017 Riesling OMG! PET NAT2017 Riesling OMG! PET NAT
2017年産 リースリング OMG! ペット・ナット
16.90€

マティアスは伝統を継承する一方で、3つの斬新なリースリングを生み出している。一つ目は2011年から生産しているオレンジワイン「WTF!?」(What the Fuck!?)。二つ目は2016年産が初ヴィンテージのペット・ナット「OMG!」(Oh my God!)。ペット・ナットは全工程を自分で行えるところが魅力だと言う。残糖約20g/lの時点でボトリング。果汁と自然の酵母の力だけで生まれた「OMG!」は清らかな味わいに。三つ目はリースリングにホップで風味を加えた「HOPS」。革新的な試みだ。

 
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岩本順子(いわもとじゅんこ) 翻訳者、ライター。ハンブルク在住。ドイツとブラジルを往復しながら、主に両国の食生活、ワイン造り、生活習慣などを取材中。著書に「おいしいワインが出来た!」(講談社文庫)、「ドイツワイン、偉大なる造り手たちの肖像」(新宿書房)他。www.junkoiwamoto.com
● ドイツゼクト物語
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