ジャパンダイジェスト
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Vol.3 自分らしく、いつも全力で

長谷部 誠 VfL ヴォルフスブルク

1984年1月18日生まれ。静岡県の名門藤枝東高校に入りながら、高校選手権の出場経験はなし。卒業後、浦和レッズに入団。プロ3年目の2004年にナビスコ杯・ニューヒーロー賞、Jリーグ・ベストイレブンに選出され、大ブレイク。その後のJリーグ優勝、アジア・チャンピオンズリーグ優勝にも大きく貢献した。ヴォルフスブルクでは09年に優勝、欧州CLも経験している。日本代表主将としてすっかり定着した感があるが、実はその座に就いているのはW杯南ア大会以降のこと。

長谷部誠

2008年1月に移籍して以来、ヴォルフスブルク一筋。現在ブンデスリーガでプレーする日本人の中では最も長い在籍期間だ。最近は、オフの度に移籍の噂がつきまとうようにもなった。昨年、ワールドカップ(W杯)南ア大会日本代表として主将を務めたことと、今年3月に発売された著書 『心を整える。』がミリオンセラー(5万部売り上げればヒット作と言われるサッカー書籍としては異例中の異例)を記録し、一躍サッカー界以外でも知名度を挙げ、人気者となった。

だが、今季のヴォルフスブルクでの長谷部は少々苦戦気味。香川や内田のように、移籍から日が浅く、慣れない日本との往復での疲労や、いわゆる2年目のジンクスによるものではない。今季もまた、ただ単に勝てない日々が続き、もしかしたらまた1部残留争いに巻き込まれる可能性も大(昨季は最終節で残留を決めた)、そう思わせる状況に苦しんでいる。本人のコンディションも、プレーのレベルも至って好調。もう少しレベルの高いチームでプレーさせてあげたいと思わせるほどだ。

監督はブンデスリーガの名物監督、フェリックス・マガトが務めている。丸顔に眼鏡をかけ、刺激的な発言を行うマガトは、常にメディアの人気者。規律を重んじ、フィジカルトレーニングを好み、そして日本人選手を重用することでも知られる。日本人が好きな理由は、規律を重んじる、つまり監督の命には従うからと言われている。おかげで長谷部は、人材不足のポジションを点々とさせられている。右サイドバックを務めたかと思えば、今度はトップ下へ。第6節では退場者が出た関係でGKまでこなした。この試合は日本でもテレビ中継され、解説者が「マガトが『ハセをGKに』なんて言うはずがない」と言い切ったが、実際マガトは従順な長谷部を指名したのだ。

今のチーム状況が苦しくないはずがない。それでも彼らしく、いつでも同じように全力で試合に臨む。そんな彼のプレー姿は観る者を勇気付けてくれるのだ。

ブンデスリーガ戦力分析

今季最初に解任された監督は、2部ボーフムのフリートヘルム・フンケルとなった。昨季は入れ替え戦にまで進出しながら、解任時の第7節終了時点で17位。新監督就任後、さらに敗れ、最下位にまで落ちている。フンケル監督に熱望されてシーズン途中から加入している乾貴士や、昨年から評価の高い鄭大世の立場が気になるところだ。

1部では、優勝候補ミュンヘンが首位に立つ。第7節終了時点で18得点の攻撃力は目を見張る。両サイドから攻める、長短のパスがおもしろいように繰り出され、一見に値する。宇佐美に大きなチャンスが訪れるまでには、もう少し時間が掛かりそうだ。その下にはブレーメン、メンヒェングラットバッハと続くが、もう1つの優勝候補とされていたドルトムントは3勝1分3敗で8位に沈んでいる。戦力ダウンだけでなく、新戦力がフィットしていない印象。このまま時間を掛けて成熟させるのか、それとも方向転換するのか。指揮官の判断に注目が集まる。欧州CLでは比較的恵まれた組み合わせのグループに入っただけに、いろいろ試しつつ勝ち抜いていきたい。

一方、今季から昇格した細貝萌の所属するアウグスブルクは降格圏の16位だが、細貝は絶好調。DFながらすでに2得点を挙げ、プレーにも自信がみなぎっている。

得点ランキングではゴメスが8得点で首位に立つが、6得点で2位につけるシセのフライブルクが興味深い。17位と降格圏にいるが、12得点22失点と出入りの激しいサッカーを見せている。

 
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了戒美子 フリーライター。1998年日本女子大学文学部史学科卒。2011年3月より、デュッセルドルフを拠点にドイツをはじめとする欧州サッカーの取材を開始。日本人選手の躍進に大きな期待を寄せている。スポルティーバ(sportiva.shueisha.co.jp)、やナンバー(number.bunshun.jp)、エルゴラッソ(golazo.jp)などのサッカー専門誌、スポーツ紙、ウェブサイトなどで幅広く活躍中。
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