ジャパンダイジェスト
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Vol.8 スカッと気持ち良いパワフルプレー

鄭 大世 1.FC ケルン

1984年3月2日生まれ。愛知県名古屋市生まれの在日コリアン3世。熱いハートの持ち主として知られ、2010年のW杯南アフリカ大会で、試合前に北朝鮮国歌が流れただけで号泣したシーンは、ドイツ人サッカーファンの間でも有名。また、欧州でプレーする日本人選手たちの兄貴的存在でもあり、鄭大世お手製のカレー・パーティーも不定期開催されているとか。天性の語学センスを持つためか、ミックスゾーンでドイツ人記者に難なく対応する姿には舌を巻く。

鄭 大世

今冬、2部のボーフムから1部のケルンへと移籍を果たした鄭大世(チョン・テセ)。 移籍期限の1月31日ギリギリになって急に決まった、驚きのニュースだった。現在 はスポーツディレクターであるフォルカー・フィンケが、Jリーグの浦和で監督を務めていた頃から注目していたことが獲得の理由として挙げられている。昨年末までJ リーガーの槙野智章が所属していたチームへの移籍には、少なからぬ縁を感じる。

今季前半戦、ボーフムでの鄭の成績は14試合出場で4ゴール2アシストだった。 J リーグ川崎時代の彼をイメージすると、もう少し得点できてもおかしくない気がするのだが、それは「得点しかみていないから」ということになる。本人いわく、「コンディションも良いし、日本にいた頃よりも状態は良好」と充実の日々を過ごしている。

鄭のプレースタイルは、ほかの元Jリーガーとは一線を画すパワフル系。一気に相手の最終ラインの裏へ飛び出す。ボールを持ったら一直線にゴールを目指す。そして男気溢れるプレーでスタジアムを沸かせる。だからこそ、相手ディフェンダーとの接触も少なくないが、飛び出しや突破が成功すれば、観る者の気分をスカッとさせてくれるプレイヤーでもある。

ケルン入り後は、第23節レヴァークーゼン戦でようやく初出場を果たした。2部と1部のレベルの違いに驚きや戸惑いもあるだろう。しかもケルンは、ポドルスキというこの地で最も愛される選手を中心に回っている。ポドルスキの調子が良ければ勝てるし、そうでなければ負ける。試合をよく観ていると、彼が負傷したわけでもないのに自ら交代を申し出るシーンさえあるが、そんなことがまかり通るほど、このチームはポドルスキ中心に動いているのだ。その中で、鄭が攻撃陣の1人としてフィットしていくのは容易ではないかもしれない。だが、スタメン入りするためにすべきことは、本人には分かっているのではないだろうか。赤く染まるケルンのスタジアムで、鄭大世のパワフルなプレーが炸裂する日は、そう遠くないはずだ。

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後半戦開始から4試合が終了し、状況は一変している。今季は国内リーグでの優位はもちろん、チャンピオンズリーグ決勝のホーム開催を控え、盤石かと思われたバイエルンがまさかの3位転落。ドルトムントは後半戦負け知らずで首位を走り、それにメンヒェングラットバッハ、バイエルン、そしてシャルケが続く。意外なのは、バイエルンが最下位フライブルクと引き分けたこと。いくらフライブルクのサッカーが監督交代によって良くなっていることや、シュヴァインシュタイガーが再負傷したことなどの理由が多少あるとはいえ、驚きとしか言いようがない。

また、残り試合が少なくなった2部も、デュッセルドルフの昇格の可能性が高く、目が離せない。まだまだ上位陣の勝ち点差が詰まっており、油断できない状況ではあるが、試合開催日の中央駅周辺の盛り上がりは昨季とは比べ物にならない。街中が期待感に溢れている様子を見るのは、なかなか面白い。

日本人選手に目を移すと、香川が再び活躍し始めており、ベストイレブンに連続で選出されている(その後、左足首靭帯の負傷で戦線離脱したが、長期化はしていない)。また、シュトゥットガルトに新加入した酒井が先発に定着しており、期待が膨らむ。岡崎もチームが苦戦を強いられる中、得点を重ね始めている。内田は、ぼちぼちと先発復帰を始め、ゆっくりとではあるが、活躍が見込めそうだ。寒さが和らぎ、春の息吹を感じられる日々の中で、日本人選手たちがようやく本来の力を取り戻し、我々を楽しませようとしてくれている。

 
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了戒美子 フリーライター。1998年日本女子大学文学部史学科卒。2011年3月より、デュッセルドルフを拠点にドイツをはじめとする欧州サッカーの取材を開始。日本人選手の躍進に大きな期待を寄せている。スポルティーバ(sportiva.shueisha.co.jp)、やナンバー(number.bunshun.jp)、エルゴラッソ(golazo.jp)などのサッカー専門誌、スポーツ紙、ウェブサイトなどで幅広く活躍中。
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