ジャパンダイジェスト
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Vol.11 持ち前の勝ち気を成長のバネに

熊谷 紗季 1.FFC フランクフルト

1990年10月17日、北海道札幌市生まれ。女子サッカーの名門、宮城県の常磐木学園高校にサッカー留学し、2009年に浦和レッズレディース入り。現在、筑波大学体育専門学群の学生。サッカーの合宿に勉強道具を持ち込むなど、文武両道を地で行く一方で、「人生ほとんどノリなので……」と話す、明るい性格の持ち主。171cmの長身を生かし、日本代表ではセンターバックとしてプレー。フランクフルトではボランチとして活躍、持ち前の対人プレーの強さと展開力を発揮している。

熊谷 紗季

昨年夏の女子W杯ドイツ大会では、主力選手として優勝に貢献。当時20歳ながら、センターバックとして全試合にフル出場し、一躍名を馳せた。

フランクフルトへ移籍した理由は、「体力的にも技術的にも課題があり、レベルアップしたい」と思ったから。つまり、日本国内には彼女が望むレベルアップのための環境がなかったということだ。日本の女子サッカーは世界トップレベル。当然ながら、国内リーグのレベルも高い。ともすれば、今やドイツより質の高い試合が行われているかもしれない。それでも、米国やドイツでのプレーを希望するのは、国内にいては伸びない点があるということだ。

では、移籍して1年が経過し、彼女は今どんな点で成長したと感じているのか。直接話を聞いてみると、「チームに何でも要求するようになったこと。プレーやボールのスピードをいつも意識するようになったこと。そして、どんなポジションの選手であっても得点者が一番偉く、どこにいても得点を狙わなければいけないこと」と語る。最後に挙げた得点に関しては、フランクフルトではボランチとして起用される機会が増えたことが影響しているのかもしれない。

「ボランチには攻撃性も求められる。攻撃のセンスはあまりないけれど、好きだし楽しいんですよ。得点もしたいし」と、自分の意思をはっきりと口にする。

生来の勝ち気な気質も、海外でのプレーに適しているのだろう。先頃行なわれた女子チャンピオンズリーグ(CL)決勝で、フランクフルトはリヨンに0−2で敗れた。試合後30分以上が経過しても、熊谷の顔から涙の痕が消えなかった。「結果は負けでも、内容で負けたとは思っていない。単に負けて悔しいというよりも、自分がプレーした試合で負けたことが悔しい」と、少々声を張りながら語る。このような言い方は失礼かもしれないが、悔しさを出すまいと一生懸命強気で話す様子が、どこか可愛らしいと感じてしまう。とても好感の持てる若手選手の1人だ。

ブンデスリーガ戦力分析

今季のブンデスリーガは、全試合終了。第32節に早々とドルトムントが優勝を決め、幕を閉じた。シーズンを振り返ると、前半戦はバイエルンの独走かと思われたが、CL の過密日程と大一番での敗戦が響き、自ら優勝戦線から撤退する形に。大きかったのは前半戦終盤、ホームのドルトムント戦と後半開幕戦、アウェーのメンヒェングラットバッハ戦での2敗。明らかにこの頃から調子を崩し始め、「CL への切り替え」という言い訳をしながら、リーグ戦へのモチベーションを失っていった。だめ押しとなったのは、最終盤に行なわれたアウェーのドルトムント戦での敗戦。結局、ドルトムントが勝ち点81というリーグ記録を樹立し、ほかを圧倒しての優勝劇だった。とは言え、そのドルトムントは、バイエルンが決勝進出を果たしたCL ではグループリーグ敗退。来季はドイツ王者としての格を欧州で示さなければならない。

さて、その欧州戦。スペイン勢対決となった欧州リーグではアトレチコ・マドリードがビルバオを3-0で下し優勝。ビルバオは魅力的なパスサッカーでマンチェスター・U を倒すなど注目を浴びたが、決勝では未熟さが出た。一方、ビルバオのサッカーを逆手に取ったアトレチコの試合巧者ぶりは光っていた。

一方、CL決勝はミュンヘンでの開催。男女共にドイツのクラブが決勝に進出したことで大きな期待が集まったが、結果は共に準優勝。特にバイエルンは先制しながらPK戦の末に敗れ、いつもシニカルなビルト紙でさえ、「君たちと共に泣く」と伝えた。ホームが圧倒的に有利なサッカーで、まさかの悲劇となった。

 
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了戒美子 フリーライター。1998年日本女子大学文学部史学科卒。2011年3月より、デュッセルドルフを拠点にドイツをはじめとする欧州サッカーの取材を開始。日本人選手の躍進に大きな期待を寄せている。スポルティーバ(sportiva.shueisha.co.jp)、やナンバー(number.bunshun.jp)、エルゴラッソ(golazo.jp)などのサッカー専門誌、スポーツ紙、ウェブサイトなどで幅広く活躍中。
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