地下鉄は、ベルリンの街並みを形作る上で欠かせない乗り物の1つだ。黄色い車体の電車が、今日も地下から高架まで縦横無尽に駆け抜ける。
ベルリン初の地下鉄がポツダム広場〜シュトラーラウ門(現在のオーバーバウム橋のたもと付近)の間を走ったのは、1902年2月18日のことだった(これは欧州で5番目、ドイツでは初となる)。時の皇帝ヴィルヘルム2世は地下鉄道なる新しい乗り物に対して懐疑的で、多くの市民は「鉄道が轟音を立てながら地底を走るなど不気味」と感じていたらしい。
それから100年以上が経った。現在10路線、総延長146キロに及ぶ地下鉄は、ベルリンのランドマークとして、この街を舞台にした映画や小説にも脇役としてよく登場する。
そんなベルリンの地下鉄に特化した博物館があるのをご存知だろうか? 地下鉄U2のオリンピアシュタディオン駅で降りて階段を上がると、新旧の車両の先頭部分が並んだ入り口が目に入る。月に1日しかオープンしていないこともあって、ようやく都合を合わせて訪ねることができた。
オリンピアシュタディオン駅にある地下鉄博物館の入り口
階段を上がって行くと、賑やかな声が聞こえてくる。2階の入り口には木製の古い窓口が構え、年配の「駅員さん」が昔の切符販売のように入場券を売ってくれた。いきなりの粋な演出にニヤリとしてしまう。
鉄の匂いが立ち込める館内はいくつもの部屋に分かれ、地下鉄に関する展示が所狭しと並ぶ。様々な時代の路線図、駅や行き先名のプレート、赤い光沢を放つ座席、制服等々。もちろんどれも昔、実際に使われていたものだ。子どもの頃、運転士に憧れていた者としては、各時代の電車の運転コントローラーを動かしながら、自然と頬がほころんでしまう。この博物館の1つの目玉が、長さ14メートルにおよぶコントロールパネルだ。もともとこの建物は、1931年から83年まで欧州最大規模の信号扱い所として使用されていた。窓の外を見ると今も広大な操車場が広がり、時々真新しい電車が通り過ぎて行く。
地下鉄に関する無数の展示品が並ぶ館内
昔の切符のコレクションを眺めていたら、年配のおじさんが説明をしてくれた。「昔の定期券は自宅と勤務先を繋ぐ線しか使えず、今のようにゾーン別になっていなかったんですよ。ここには子どもたちも多く訪れるので、教育の一環としての役目も果たしています」と嬉々とした表情で語るヴォルフガング・クラウスさんは、ベルリン地下鉄研究会のメンバー。もちろん先ほどの「駅員さん」もそう。この小さな博物館が15年以上続いているのは、歴史的な車両や資料の収集と保存に務める彼らの存在があるからこそで、中には元地下鉄職員もいるそうだ。
懐かしい切符切りのはさみをいじっていると、子どもの頃憧れていた、そして時代の波を受け、いつの間にか消えていった駅や電車で働く人々の姿を思い出した。建物奥にある発着案内の体験コーナーの部屋からは、そんな時代を知らないであろう今の子どもたちの声で、「3番ホーム、お下がりください!」のアナウンスが響き渡っていた。
ベルリン地下鉄博物館
Berliner U-Bahn-Museum
1997年にオープンした鉄道博物館。350点以上のコレクションを誇り、100年以上に及ぶベルリンの地下鉄の歩みを一望できる。パネルの説明表記はドイツ語のみだが、英語のパンフレット(無料)も置かれている。入場料は2ユーロ、12歳以下は1ユーロ。グッズの販売コーナーも。
オープン: 毎月第2日曜日の10:30〜16:00
(入場は15:00まで)
住所:Rossitter Weg 1, 14053 Berlin
(地下鉄U2 Olympiastadion駅構内)
電話番号:030-25627171
URL:www.ag-berliner-u-bahn.de
ベルリンSバーン博物館
Berliner S-Bahn-Museum
ベルリンにはSバーンの博物館もある。こちらはSバーンの同好会によって運営されており、地下鉄同様、起伏に富む歴史を歩んできたベルリンの「テツ」の世界を楽しめる(はず)。電車の運転シミュレーションを体験できるコーナーもある。場所はポツダム中央駅の2つ手前、SバーンのGriebnitzsee駅に面している。
オープン: 4~11月まで
毎月第2土・日曜日の11:00~17:00
(詳細は下記URLを参照)
住所: Rudolf-Breitscheid-Str. 203, 14482 Potsdam
電話番号:030-63497076
URL:www.s-bahn-museum.de