はじめまして、ベルリン在住の守屋健です。今号から隔月でベルリンの地域レポーターを担当させていただくことになりました。今回は、ベルリンで面白いプロダクトを製作している工房をご紹介します。
古くから世界中で活用されてきた金属素材の「スズ(錫)」。そのスズを使って、個性的なテーブルウェアを製作している工房がベルリンに存在します。
その名も、Kunstmal Berlin GmbH(クンストマール・ベルリン)。2018年に韓国・日本出身のデザイナーと職人の3人でスタートした会社で、ミラノの「サローネ・サテライト」など著名な国際見本市に幾度も出展し、大きな注目を集めています。今回工房で実際に作っているところを見せていただいたので、製品の質感などもレポートしたいと思います。
自らの手で、形を自在に変えることができるプレート「Testa」
Kunstmalの主力製品は「Testa」と名付けられた「手で曲げられるプレート」。プレートの原料は純度99.99%のスズで、非常に柔らかく、手で簡単に形を変えられます。縁を持ち上げてお皿にしたり、大胆に曲げてスマートフォン置きにしたり。たった1枚のプレートから、持ち主のアイデア次第でどんな使い方もできるのが「Testa」の強みです。また一度変形したプレートは、丸棒などで伸ばせば元通りの形に。筆者も実際に曲げてみたのですが、ひんやりとした手触りと、金属がぐにゃりと形を変えていく不思議な感覚は、今までに体験したことがない新鮮なものでした。
製品は一点一点、職人による手作業で丁寧に仕上げられます
「世界中どこにもない、個性的な製品を作りたい」。そんな思いを抱きながら試行錯誤を続けてきたKunstmalの3人が偶然出会ったのが、「純度の高いスズ」だったそう。製品はすべてハンドメイドで、一点一点微妙に大きさが違い、表情も異なります。さらにこれらの製品は、持ち主の手によって曲げられて初めて「完成」する、というのが大きな特徴です。
「ベルリンは、意外性を受け入れてくれる街です。ベルリンで初めてTestaを販売したとき、私たちの製品を見た人がこう言ってくれたんです。『これぞまさにベルリンだ』とね」と、社長のリーさん。「デザインとアート、作り手と使い手。現代では分断されたような状況ですが、デザインとアートの境界線を超え、作り手と使い手の相互関係で成り立つような、リズムある楽しい製品づくりを続けていきたいと思っています」と笑顔で語ってくれました。
Kunstmalのメンバー。写真中央が社長のリーさん
現在はテーブルウェアのみですが、今後はインテリアのデザインなども手がけていきたいそう。またクラウドファンディングを行うなど、精力的に活動しています。興味のある方は、ぜひチェックしてみてください。
Kunstmal Berlin GmbH:
Dessauer Str. 24 10963 Berlin
www.kunstmal-berlin.com