コロナ禍により人の往来が途絶えた2020年、ベルリンでは新空港の開港、地下鉄U5の全線開業など、大きな出来事がいくつかありました。昨年末の12月16日、ベルリンのもう一つの長年の工事現場だった「フンボルト・フォーラム」が、静かにオープニングの時を迎えました。
ベルリン大聖堂の向かいに位置するフンボルト・フォーラムは、再建された旧プロイセン王宮の中にある文化、芸術、学術のための複合施設です。2002年、ドイツ連邦議会が王宮の再建を決定してから、18年半もの歳月を経て完成したことになります。
完成間近のフンボルト・フォーラム(2020年7月)
フンボルト・フォーラムの展示の中心になるのは、それまで西側のダーレム地区にあったアジア美術館と民族学博物館のコレクション(2階と3階)。これらはいずれもプロイセン文化財団により運営されます。さらに、この場所の歴史に関する常設展、ベルリンと世界とのつながりをテーマにしたベルリン市博物館の展示「ベルリン・グローバル」(1階)、フンボルト大学の研究施設なども置かれます。加えて、三つのレストランや二つのカフェもいずれオープンする予定です。
フンボルト・フォーラムは大きな課題と責務を抱えています。それは、展示の中心であるアジア、アフリカ、南米、オセアニアからの展示物が、ドイツのかつての植民地政策と関わりがあるということ。例えば、アフリカのベニン王国の歴史的遺物の中で、約440点のブロンズ像の多くが植民地時代に不当な形で獲得されたものといわれています。
2018年8月、完成前に実施された最後の一般公開日にて
モニカ・グリュッタース文化メディア担当国務大臣は、オープニングに際して「植民地主義についての議論が、ここから本当に始まったことを歓迎します。もしベニンのブロンズ像がいずれ本国に返還されることになった場合、フンボルト・フォーラムの展示スペースには、これまで無視されてきた歴史の一部に気付かせてくれる空きスペースが残されるかもしれません」と、この新しい対話の場への期待を語りました。
2018年8月、完成前に実施された最後の一般公開日にて
公式にオープンしたとはいえ、コロナ禍の影響で、現在はオンラインのバーチャルツアーのみ可能。一般公開は今年末までいくつかの段階を経て進められます。この1月からはダーレムの残りの展示物の移動作業が始まり、夏にアジア美術館と民族学博物館が再オープンする予定です。同じく夏には、フンボルト・フォーラムの真下に地下鉄U5ムゼウムスインゼル駅の完成が予定されており、隣接する博物館島へのアクセスも含めて便利になります。
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