急に寒くなってきて、ベルリンの冬の足音が少しずつ近づいてきました。短い夏を堪能しようと外に出ることばかり考えていましたが、季節が移ろい、室内でじっくり本を読んだり、映画を見たり、勉強したりと、自分のために時間を使いたいという気持ちが高まっています。そういう時間を過ごすのに最適なのは、やはり図書館ではないでしょうか。
ベルリン州立図書館ウンター・デン・リンデン館
ベルリンの知の宝庫であるベルリン州立図書館は、東西分断を象徴する文化機関の一つです。戦前はプロイセン王国の国立図書館として運営されていましたが、第二次世界大戦後に蔵書が東西に分断されました。東側のウンター・デン・リンデン館はドイツ民主共和国のドイツ国立図書館として社会主義圏の資料を収集し、西側では新たにポツダム通り館が建設され、西側諸国の出版物を収集していました。ドイツ再統一後にこの二つは統合され、ベルリン州立図書館プロイセン文化財団という新たな名称に生まれ変わっています。
ベルリン州立図書館ポツダム通り館。天井の窪みから自然光が降り注ぎ、室内にいても野外との接点を感じられる気持ちのいい光を感じることができます
私のお気に入りはポツダム通り館です。本館は1978年にベルリン・フィルハーモニー・ホールも手がけた建築家のハンス・シャルウンによって建設され、天井にはジブリ映画「風の谷のナウシカ」に出てくる王蟲(オーム)の目のような、丸みを帯びた凸凹が天井一面に張り巡らされています。この図書館の良いところは、何と言っても広さと開放感。メインホールの読書机は675席もあり、席が無くて困ったということがありません。壁で空間を区切らないホールの設計によって、読書席で一人の時間を過ごしていても、全員が同じ空間を共有しながらそれぞれの時間を楽しんでいる。そんなぜいたくな空間だと思います。
フンボルト大学の大学図書館。吹き抜けの向こう側には同じレイアウトで席が並んでいるため、合わせ鏡を見ているような感覚に
もう一方のウンター・デン・リンデン館は1914年に建てられたネオバロック様式を取り入れた建物内にあります。こちらは建物の荘厳さと歴史の深さが相まって、ポツダム通り館より緊張感があります。展示スペース「StabiKulturwerk」が併設されており、図書館の所蔵品・文化財の展示などが行われています。階段を上がった窓側の席で、歪んだガラスを目の前に光を浴びるのが好きです。
ベルリンの大学図書館もよく利用します。ベルリン工科大学(TU)とベルリン芸術大学(UdK)の大学図書館は本当に使い勝手がよく、大学生たちに混じってデスクワークに没頭できます。なんと2025年5月からは週7日、24時間開館になったそうです。フンボルト大学の大学図書館は、席数の少なさは残念ですが、何より建物中央の贅沢な吹き抜けは、余白の大切さを教えてくれます。とはいえ私はまだベルリンの図書館で本を借りたことがないので、そろそろ挑戦してみたいなと思います。