フランクフルト北東部、おしゃれなお店やビオスーパー、レストランやカフェの並ぶボルンハイム地区に「Garten des Himmlischen Frieden(中国式庭園)」があります。街の中心部からも歩いて10分ほどと、立地も良好。ショッピング街であるツァイルとベルガー通りの間にあるベートマンパークという公園の中にある、白壁に囲まれた一角が中国式庭園です。
夜は門が閉まるものの、日中は無料で入園可能
1989年に開園されたこの本格的な庭園は、長らく市民に愛されてきました。しかし2017年、放火によってほぼ全焼してしまい、壊滅的な被害を受けました。再建は決まったものの、瓦や木造装飾などは専門的な技術や建材が必要。そのため本場中国で職人の手によって造られ、ドイツまで輸送されたそうです。そうして約2年をかけて再建され、昨年再び開園しました。
狛犬のような石像が左右に立つ石門には「春華園」と書かれており、門をくぐると石橋と堀、曲線の屋根が美しい楼が見えてきます。私が訪れた時には竹林が美しく、笹の緑と赤銅色の回廊のコントラストが鮮やかでした。灯籠を通り過ぎて石橋を渡ると、堀には鯉たちの悠々と泳ぐ姿が見えます。さらに進んでいくと、中国式庭園によくある楼閣のような建物にたどり着きました。堀側と庭園奥側は、それぞれ庭園を展望できるよう開けた造りになっていて、長椅子が置かれているのでゆっくり休憩できます。ベビーカーを置いておやつを食べている親子や、友人同士でおしゃべりしている人がいて、憩いの場として活用されているようでした。
竹林や灯籠、石橋が見える園内
建物を抜けると、ジグザグに折れ曲がった回廊が続きます。「九曲橋」と呼ばれるこれらの橋は、堀の上を歩きながら四方がよく見えるように設計されていて、石の地面と美しい赤銅色に塗装された欄らんかん干が何とも言えない良い雰囲気です。堀の途中までは屋根付きの回廊、それ以降は彫刻で模様が付けられた大理石の橋へと続きます。写真にも映える美しい庭園なので、私が訪れた時には、結婚式の撮影をしている新郎新婦とその家族がいました。
堀の上にジグザグに伸びる九曲橋
目に映る景色が美しく、石橋に沿って一周するだけでも心が穏やかに。庭園の北側には小さな滝のように水が流れ落ち、水音が耳に心地よく響きます。堀の上の飛び石を渡ったり、竹林の小道を散策したりと、都会の喧騒から離れてほっと一息つける空間でした。また、緑豊かな庭園とは対照的に、雪が降り積もった日の庭園も趣があり、日常の疲れを忘れさせてくれます。西洋の公園とはまた違った、自然の美を堪能できる貴重な時間を味わえました。
ロックダウンが強化され、外出にも気を遣う今日この頃。ドイツとは思えないほど本格的な中国式庭園の散策で、心身ともに癒されてみてはいかがでしょうか。
中国式庭園:www.chinaseiten.de/garten.shtml
2003年秋より、わずか2週間の準備期間を経てドイツ生活開始。縁もゆかりもなかったこの土地で、持ち前の好奇心と身長150cmの短身を生かし、フットワークも軽くいろんなことに挑戦中。夢は日独仏英ポリグロット。 Twittter : @nikonikokujila