フランクフルトのウエストエンドに、金をテーマにしたGoldkammer(黄金の部屋)という博物館があるのをご存じでしょうか。2019年にオープンした当館は、街の中心ZeilやAlte Operからほど近く、金融街をバックにした重厚な雰囲気の建物の地下に展示室があります。
チケットを買うと、係員が地下へと続くエレベーターに案内してくれました。深く地中に潜るかのような演出がなされたエレベーターで地下の展示室に下りると、金の形成や採掘について紹介する空間に出ます。映像による視覚的なアプローチが大変興味深く、単なる展示にとどまらないエンターテイメント性を提供してくれていました。タッチパネルに触れると説明が表れるなど、子どもでも楽しめます。
金融街をバックに重厚な雰囲気のGoldkammer
さらに進むと、紀元前に作られた金細工の装飾品が並びます。これほどまでに精巧で美しい装飾が紀元前の時代から行われていたのか、と驚くばかりです。きらびやかな金の輝きは時代を経ても失われることなく、現代にも通じる美しい芸術作品であると感じました。そこからさらに、支払いの手段となった「金貨」の展示へと続きます。重さの異なる金の塊から、世界で最初に鋳造された金貨、徐々に通貨システムとしての統一された金貨へと変化していく様子を目にすることができました。
紀元前に造られたスキタイの鹿をモチーフにした装飾品
続いて、古代ギリシャやローマの石の神殿を思わせるような内装の展示室を進みます。皇帝が自身の富と権力を見せるために黄金の胸像を造ったり、神々を象った装飾やステータスシンボルとしての貴金属へ展開した歴史を見せてくれます。大昔の権力者たちの野望や、古代の神々への敬意に想いを馳せる展示でした。そこから今度は、南米における古代文明の黄金製品の展示室へ。エルドラド(=黄金郷)伝説が生まれるほど、黄金製品が多く造られたそうで、中でも黄金の仮面は神秘的で目を奪われました。ここでは物質としての金ではなく、精神的や宗教的な意味合いとしての金の在り方を考えさせられました。
LEDとマジックミラーの壁に囲まれた部屋での映像作品は圧巻
そして、それまでの神殿のような展示室から一転、海の中を連想させる展示室へ。ガラスケースには難破船から発見された銀貨や装飾品が、水中に漂っているかのように展示されていました。見せ方が工夫されていて面白く、飽きることなく観覧できます。最後の展示室には、ロスチャイルドコレクションとして知られる、300以上の金の延べ棒が展示されていました。LEDスクリーンとマジックミラーの壁で囲まれたこの展示室に入ると、金についての映像作品が上映されます。スクリーンとマジックミラーの効果で、360度の映像の真ん中に居るような感覚になりました。この部屋はイベント空間として予約することもできるそうで、1番印象に残った展示室でした。
Goldkammer:www.goldkammer.de
2003年秋より、わずか2週間の準備期間を経てドイツ生活開始。縁もゆかりもなかったこの土地で、持ち前の好奇心と身長150cmの短身を生かし、フットワークも軽くいろんなことに挑戦中。夢は日独仏英ポリグロット。 Twittter : @nikonikokujila