芸術の秋、今年で8回目となる「邦楽と日本舞踊の会」が開催されました。毎年フランクフルトを中心に、日本の芸能を教える教室の先生や生徒さんたちが日頃の成果を披露します。昨年一昨年はコロナ禍で実施できませんでしたが、今年は3年ぶりの開催となりました。地元の三つの教室に加え、今年は東京から「和太鼓蓮うてな」がゲストとして参加。日本舞踊や箏、和太鼓、創作舞踊と、さまざまな演目が披露されました。
素晴らしい舞台を披露してくださった演者の皆さん
蓮うてなによる和太鼓では、息の合ったグループでの演奏から、大太鼓を使ったソロまで、多様な演奏を聴くことができました。和太鼓の音が体の芯にドンドンと響き、心地よい共鳴を感じます。観客もリズムに合わせて手拍子で応えるなど、一体感を味わいながら楽しく鑑賞しました。二重奏では「海」を表現した動きと素晴しい連奏で、ソロの曲目では大太鼓を使った力強く迫力ある響きに、会場からは大きな拍手と歓声が上がっていました。
日本からのゲスト「和太鼓蓮うてな」による迫力の大太鼓ソロ
フランクフルトの西川扇夢二舞踊教室からは、日本舞踊の由緒ある宗家西川流の「名取」となった3名が紹介されました。家元から技量を認められた者だけが、流派の名前を名乗ることを許されて「名取」となれるそうです。欧州で行うのは初めてという新名取披露の口上は、歌舞伎の襲名披露のような凜とした雰囲気で、会場中が拍手に包まれました。
また生徒さんそれぞれの演目や群舞も素晴らしかったです。若柳道恵美舞踊教室からは、近江八景になぞらえて江戸吉原の廓の情景を述べた「常磐津 廓八景」や、坪内逍遥作詞による「新曲浦島」が披露されました。情感豊かな表現と幽玄で艶やかな舞踊が、とても印象的でした。
邦楽では、同じく地元フランクフルトにある菊地奈緒子箏三味線教室の生徒さんたちによる合奏「天泣」も心に残りました。漫画『この音とまれ!』のオリジナル楽曲の合奏で、たおやかな美しい旋律と勢いある合奏の力強さが素晴らしかったです。今まで持っていた箏の印象を良い意味で変えてくれた演奏でした。また西川扇夢二さんとチェロの上原ありすさん、フルートの伊藤むつみさんによる「Trio風雅」の創作舞踊では、平和への祈りを表現し、伝統的な日本舞踊とは異なる創作舞踊の魅力に引き込まれました。
フルートとチェロの演奏に合わせ、平和への「祈り」を表現した創作舞踊
伝統的なものからモダンな創作まで、約4時間の充実した会となりました。質の高い日本の伝統芸能に感動するとともに、こうした芸能の継承がフランクフルトでも行われていることを誇らしく思います。
2003年秋より、わずか2週間の準備期間を経てドイツ生活開始。縁もゆかりもなかったこの土地で、持ち前の好奇心と身長150cmの短身を生かし、フットワークも軽くいろんなことに挑戦中。夢は日独仏英ポリグロット。 Twitter : @nikonikokujila