フランクフルトのシルン美術館では、今年2月19日(日)までシャガール展を開催しています。大聖堂とレーマー広場の間に位置するシルン美術館は、コレクションを持たない企画展専門の美術館として、これまでにも意欲的な特別展を開催してきました。今回は15年ぶりとなるシャガールの企画展となります。
マルク・シャガール(1887-1985)といえば、マインツの聖シュテファン教会にあるステンドグラスが有名で、私もあの青の美しさに魅せられた一人です。シルン美術館へと続く道にも、青を基調としたシャガールの広告が並び、朝早くから多くの来館者が訪れていました。前回のシャガール展は初期の作品に焦点を当てたものでしたが、今回はあまり知られていない1930年代と1940年代をメインとした展覧会です。入場券購入のため受付には列ができていましたが、入館時間指定の入場券を事前にオンラインで購入すれば、並ぶことなく直接展示室へ向かうことができます。
朝早くから来館者の絶えないシルン美術館
旧ロシア帝国に生まれたユダヤ人画家として、激動の時代を98歳まで生き抜いたシャガール。展覧会ではそんな彼の人生を振り返りながら、60点以上の作品を順に観て回ります。ロシア、フランス、ドイツで活動し、ユダヤ人迫害の脅威から逃れるべく米国へ亡命、さらに愛妻との死別……世界情勢や私生活を背景に作品を見ると、アイデンティティーや作風の変化、故郷や家族への思いなど、今までとは違った観点からシャガールの世界に触れることができました。
シャガールの人生を年表で振り返ることで、作品への理解が深まります
今回の展示では、シルン大聖堂で青く輝くステンドグラスのイメージとは異なり、暗い色調や激しさを感じる作品も多くあります。いずれも観る者に訴えかける魅力があり、おりしも戦争が現在進行形で起きている今の世界情勢において、多くのことを考えさせられました。
展覧会では、絵画だけでなくシャガールが手がけた舞台衣装などの珍しい作品も。さらに展示会に合わせたトークイベントやガイドツアー、深夜までの開館日、遠方からも参加可能なデジタルガイドツアーなど、さまざまなイベントも提供されています。公式ホームページでは無料のオーディオガイドが用意されているので、自分のスマートフォンとイヤフォンを使って、オーディオガイドを聞きながら鑑賞するのもおすすめです。ステンドグラスのイメージだけでない、波乱に満ちたシャガールの人生と多様な作品に触れられる素晴らしい企画展でした。
絵画だけでなく舞台衣装など、60点以上の作品を展示
シルン美術館:www.schirn.de
2003年秋より、わずか2週間の準備期間を経てドイツ生活開始。縁もゆかりもなかったこの土地で、持ち前の好奇心と身長150cmの短身を生かし、フットワークも軽くいろんなことに挑戦中。夢は日独仏英ポリグロット。 Twitter : @nikonikokujila