老後への備え
ドイツで認知症を考える
「ドイツでの老後」と居住地を限定して考えるうちに、結局どの国においても、認知症患者の急速な増加現象が高齢化社会の最大の問題となっていることに気付きます。昨今はドイツのメディアが、介護の上でも、国の厚生政策の上でも、認知症を大きな問題として取り上げています。すでに皆さんもおおよその事情はご存知かと思いますが、認知症を患うと、本人の意志に関係なく「病気の進行とともに過去の世界、要するに幼い頃の言葉や習慣」に退行すると言われます。すなわち日本人の多くは、現在のドイツでの習慣や生活のパターンから、過去に日本で暮らした記憶の世界に戻って生活をする可能性が高いということです。
外国で認知症を患ってしまった場合、本人はそのような変化を周囲には説明できないために、往々にしていろいろな問題が起こってくるでしょう。それでも周りに日本人がいれば、日本の習慣を知らない人や施設の人々に彼らの言わんとすることを伝えたり、周りの外国人では対応できないことを日本人同士で支え合うことができるはずです。日本人の友達が少ないという人には、日本人ボランティアという存在がいれば心強いものです。しかしながら、「お互いに仲間うちで助け合おう」という高齢者の小さなグループはあっても、ドイツ在住の日本人コミュニティーの中で、その地域の日本人認知症患者を支える体制が整っているわけではありません。
一方、高齢化先進国である日本は、認知症に対するケアのノウハウ、経験を蓄積し、地域全体で認知症を知り、高齢者を支えていくためのキャンペーン、「キャラバン・メイト(認知症についての正しい知識を伝授する、認知症サポーター養成講師)」のシステムを作り上げました。
このキャンペーンにより、日本では認知症という病気そのものに対する知識が一般の人々にも伝わり、本人や家族による認知症の早期発見と治療に繋がっただけでなく、各地域でボランティアに対する認識が大きく変わりました。このシステムは、ドイツでも構築することが可能なはずです。
認知症に対する正しい知識と認知症患者への対応の仕方を同時に身に付けることができ、かつ地域の日本人同士が協力し合い、助け合うことの重要性をも学べるということが、ドイツにおいてキャラバン・メイトのシステムを築いていくことの利点だと思われます。そのためには、サポーター(認知症を正しく理解した人)を養成するための講師「キャラバン・メイト」の養成が急務と言えるでしょう。
去る10月11日、12日には、日本のキャラバン・メイト事業本部のご協力を得て、2人の講師を派遣していただき、デュッセルドルフにて欧州初のキャラバン・メイト養成講座を開催することができました。次回は、この講座に参加し、キャラバン・メイトに認定された方々の体験記を掲載します。
Illustration: ©31design / www.31design.biz
- Alzheimer-Demenz アルツハイマー型認知症
- Demenz 認知症
- Ehrenamtliche(r)/Freiwillige(r)(f/m) ボランティア
- Alternde Gesellschaft(f) 高齢化社会
- Gesundheits-und Sozialpolitik(f) 厚生政策
(m)男性名詞、(f)女性名詞、(n)中性名詞
DeJaK-友の会からのお知らせ
説明会
「ドイツの介護制度に関する大使館委託調査の結果報告」
日時: 2015年1月15日 13:00~15:00
場所: ベルリン
※お申込みは下記ウェブサイトより。
「自分でできる健康チェック ―
血圧について知っておきたいこと」
日時: 2015年1月28日 14:00~15:00
講師: 高木加苗氏(看護師)
場所: デュッセルドルフ(日本クラブ)
※日本クラブ共催。詳細はウェブサイト
www.dejak-tomonokai.deより。
在独法人の高齢時の問題に積極的に関わっていくことを目指す「DeJaK-友の会」代表。 著書に日本語教科書『Japanisch, bitte! 日本語でどうぞ』『ドイツ会話と暮らしのハンドブック』『Bildwörterbuch zur Einführung in die japanische Kultur』などがある。
DeJaK-友の会((www.dejak-tomonokai.de)