老後への備え
ドイツで認知症を考える
991号(2014年12月5日発行号)でお伝えした、欧州初のキャラバン・メイト(認知症についての正しい知識を伝授する、認知症サポーター養成講師)養成講座に参加し、キャラバン・メイトとして認定された方々の体験記を前号に続きご紹介します。今回は2人目の松村・シュナイダー 恵子さんです。
「キャラバンメイト養成講習会」に参加して
松村・シュナイダー 恵子:カールスルーエ在住。DeJaK-友の会会員。ドイツ語通訳
昨年、デュッセルドルフで10月11日、12日の2日間にわたり、キャラバン・メイト養成講座、並びにそのスキルアップ講座が開催されました。ドイツ各地からの参加者に加え、オランダ、デンマーク、スイスからも、現地で積極的に高齢者支援を行っている方々の参加があり、総勢約53名の熱気が講座を大いに盛り上げました。
日本には、認知症についての正しい知識を備える「認知症サポーター」というボランティアがいます。認知症サポーターには、一定の講座を受けることで誰でもなることができ、その登録者数は今や日本全国で540万人を超えています。この活動には、自治体はもちろん、学校、大規模な企業、そして高齢の顧客と接する機会が多い金融機関や小売業など様々な立場の人が積極的に参加しており、サポーターには小学生からサラリーマン、お年寄りまでいろいろな年齢層の方がいます。
今回私たちが参加したのは、認知症サポーター養成講座の開催と運営を任される「キャラバン・メイト」になるための講座でした。福井県の敦賀温泉病院長で、認知症を検査する行動観察評価シート(AOS方式)を開発した玉井顯(あきら)医師を講師に迎え、初日は認知症についての知識を得ることを主眼とした講義と、認知症サポーター養成講座の運営方法に関するグループワークで、2日目は検査シートの内容理解に関する講義、さらに、シートが示す得点結果とカルテの内容から、どのように患者の認知症の状態を予測し、どう対処していくかを検討するグループワークが行われました。
認知症は早期発見が決め手であること、認知症をきちんと理解することで患者はもちろん介護者の負担も軽減されること、また、認知症の知識を共有することで医療機関と患者、介護者の間のコミュニケーションが円滑になることなど、たくさんの有益な情報が玉井医師の軽妙な語り口で説明され、参加者にとって、とても意義のある2日間でした。また、海外で暮らす日本人高齢者の理解とサポートを目指している方々が、今回デュッセルドルフに一堂に会したことで、それぞれが自分たちの地域で活動を続けていくためのモチベーションを高める機会にもなったと思います。
今回は、参加者全員が無事にキャラバン・メイトとしての認定を受けました。つまり、昨年の柏原誠氏(DeJaK-友の会)に続いて、私たちも「認知症を理解するためのサポーター養成講座(60分)」を開催することができるようになったわけです。講座では認知症についての知識はもちろん、予防法や認知症の人と接するときの心構え、患者や介護者への支援方法などを日本語で学習でき、受講後、受講者には認知症サポーターの証である「オレンジリング」というブレスレットが授与されます。
海外でも、認知症サポーターの輪をさらに広めていくべく、新たに誕生した在欧州キャラバン・メイトの活躍が期待されています。
DeJaK-友の会からのお知らせ
講演会「年齢に関係ない老後への備え」
講師:山片 重嘉氏(ファイナンシャルアドバイザー)
日時:2月21日(土)14:00~16:30
場所:デュッセルドルフ(日本クラブ)
※日本クラブ共催。
詳細はDeJak-友の会ウェブサイト
www.dejak-tomonokai.de
在独法人の高齢時の問題に積極的に関わっていくことを目指す「DeJaK-友の会」代表。 著書に日本語教科書『Japanisch, bitte! 日本語でどうぞ』『ドイツ会話と暮らしのハンドブック』『Bildwörterbuch zur Einführung in die japanische Kultur』などがある。
DeJaK-友の会((www.dejak-tomonokai.de)