現在ハンブルクでは、3本のミュージカルがロングラン上演されています。何年にもわたって1つの劇場が1つの作品をほぼ毎日上演し続ける、そしてそれがいつも満席状態であるというのは、日本ではあまり考えられない状況かもしれません。
かつて、1980年代後半から90年代にかけて、ハンブルクのオペレッタ劇場(Operettenhaus)では、「キャッツ」のロングランがずっと続き、「この劇場でキャッツ以外の作品が上演されることはあるのだろうか?」と思うほどでした。そして現在、港の劇場(Theater im Hafen)で「ライオンキング」が同じような勢いで上演され続けています。ロングランを続けられるのは、それだけその作品が素晴らしいということです。というわけで、「1度は観てみたい」と思い続けてきたこの作品を、ついに先日、念願叶って観てきました。
この劇場はエルベ川の対岸にあり、市内をぐるりと回って車で行くこともできますが、お薦めはハンブルク港から専用の船で渡る方法。乗船料はミュージカルのチケットに含まれています。少し早めに会場に到着したら、エルベ川の対岸からハンブルクの風景を楽しみましょう。眺めの良い「スカイライン・レストラン」で、上演前に素敵なディナーをいただくこともできます。こちらは事前に予約が必要です。
エルベ川対岸にあるTheater im Hafen
この船に乗って会場へ
さあ、いよいよアフリカの民族音楽とともにミュージカルの開幕です! 最初のシーンからサバンナの様々な動物たちが舞台上にあふれ、体中すべての神経が舞台にくぎ付けになりました。人間がそれぞれの動物たちに扮しているのに、その動きはまさに動物そのものなのです。「どうやってこれを考え出したのだろう?」と、人間の持つ想像力の豊かさに感動しました。ミュージカルはもともと、歌+ダンス+演劇と内容盛りだくさんのエンターテインメントですが、ここまで次から次へと様々なアイディアが登場するミュージカルはほかに類を見ないのではないでしょうか。観客はアフリカの世界に引き込まれ、3時間の上演時間はあっと言う間に過ぎてしまいました。
子ライオンが成長する過程が描かれたストーリーも、とても良くできています。中でも、故郷から逃げていく子ライオンに向かって、父ライオンの幻が語りかける「お前は自分が何者であるかを忘れている。それは父を忘れることと同じだ」というセリフが印象に残りました。
たとえ言葉が分からなくても、音楽に興味がなくても、とにかく誰でも楽しめる作品です。ぜひ劇場でこの感動を味わってみてください。
ハンブルグ日本語福音キリスト教会牧師。イエス・キリスト命。ほかに好きなものはオペラ、ダンス、少女漫画。ギャップが激しいかしら?