このたび、「私の街のレポーター」の仲間に加えていただくことになりました、ハノーファー在住の田口理穂と申します。1996年に、ドイツ語を学ぶためにこの街にやって来ました。暮らし始めてからドイツでは学費が無料と知り、ニーダーザクセン州立ライプニッツ大学ハノーファーの社会学部に1年生から入り、長い学生生活を経て修士号を取得。現在は日本の雑誌やウェブサイトにドイツ関連の記事を書いたり、ドイツ語通訳をしています。今回から、あまり有名ではないハノーファーのさまざまな魅力を皆さんに知っていただければと願っています。どうぞよろしくお願いいたします。
さて、まずはハノーファーの簡単な紹介から。ニーダーザクセン州の州都であるこの街の人口は52万人、緑豊かな街です。それほど大きな観光地ではありませんが、世界最大規模のメッセ(見本市)会場があり、2000年にはここで万国博覧会も開かれました。ライプニッツ大学がもともと工科大学として建てられたことから、フォルクスワーゲンの工場や北ドイツで唯一のソーラーモジュールの会社など、市内には理工関連の研究所や会社が集まっています。
観光名所としてはバロック様式のヘレンハウゼン王宮庭園がありますが、冬はいかにも寂しい様相です。しかし、オペラハウスをはじめ、美術館や劇場、映画館などの文化施設は充実しています。初回はその中の1つ、ヴィルヘルム・ブッシュ博物館をご紹介します。
博物館の中庭はカフェになっています
この博物館は、ブラックユーモアに溢れた絵本「マックスとモーリッツ」でお馴染みの、風刺画家で詩人でもあったヴィルヘルム・ブッシュ(1832~1908年)の作品を中心に、数多くの風刺画を所蔵しています。現在、同博物館では開館75周年を記念し、「巻き絵と漫画(Bildrollen und Manga)」と題した日本の漫画展を開催中。浮世絵をはじめ、18世紀の巻き絵から戦前の漫画雑誌、戦後の作品など約170点を展示しています。
鮮やかな色使いが目を引く漫画の展示
広島市と姉妹都市提携をしているハノーファー市が、広島平和資料記念館の協力を得て実現した今回の展覧会。目玉は「はだしのゲン」の原画30点です。昨年3月の福島第1原発の事故以降、この街でも原爆は再び注目を集めており、開館75周年の節目にこのような展覧会が開かれていることに、このテーマに対する人々の関心の高さがうかがえます。その他、日本の絵画や俳句、漫画に関する講演会、アニメのワークショップも好評を博しているようです。同展は2013年1月6日まで開催。入館料は4.50ユーロ(割引2.50ユーロ)。
Wilhelm-Busch-Museum
Georgengarten, 30167 Hannover
www.karikatur-museum.de
日本で新聞記者を経て1996年よりハノーファー在住。社会学修士。ジャーナリスト、ドイツ語通訳。著書に『市民がつくった電力会社: ドイツ・シェーナウの草の根エネルギー革命』(大月書店)、共著に「お手本の国」のウソ(新潮新書) など。