徳島県とニーダーザクセン州が2007年に友好交流提携「交流に関する共同宣言」を調印してから今年で10年。それを記念にして4月末、徳島県の飯泉嘉門知事ら公式訪問団が同州を訪れ、州都のハノーファー市、徳島県鳴門市と姉妹提携をしているリューネブルク市を訪問し、友好を深めました。
この友好提携は、鳴門市にあった板東俘虜(ばんどうふりょ)収容所がきっかけです。第一次世界大戦で俘虜(捕虜)となったドイツ兵士が収容されていた場所で、ベートーベンの「交響曲第9番」が日本で初めて歌われたのもここでした。収容所でドイツ人俘虜たちは人道的な扱いを受けたといい、それが今日の交流につながっています。その縁で鳴門市とリューネブルク市は1974年に姉妹都市提携し、その後徳島県とニーダーザクセン州の友好提携につながりました。
徳島県は、世界で初めて青色LEDの製品化に成功しており、県内のLED関連企業は130を超え、県を挙げて「LED バレイ構想」を掲げています。また、青色LEDを開発した中村修二氏は、2014年にノーベル物理学賞を受賞しています。一方、藍文化は800年前に遡り、特に江戸時代に有名となった「阿波藍」は、今も伝統的な色彩を伝えています。海外ではジャパンブルーとして知られ、独特な風合いに加え、抗菌性もあるため高い人気を得ています。今回の訪問にあわせ、徳島県はハノーファーの産業見本市にブースを構え、県内の企業10社余りが共同出展しました。「藍と言えば徳島」というブランドイメージを確立する戦略により「blue 2@Tokushima Project」と題し、藍とLED を前面に押し出した展示となりました。伝統と最先端技術を組み合わせたブースは、藍色が基調のおしゃれな空間を演出し、藍染を利用した建築用材や革製品をはじめ、LED照明、徳島の樽を利用した椅子など自慢の品々を披露しました。
徳島のLEDの光を当てて育てた「LED夢酵母」を利用した地酒「笹がすみ」や「鳴門鯛」も披露されました。清酒に紫外線LED光を当てることで生まれた優良な新酵母を使った日本酒は、フルーティーかつすっきりした味わいで、人気を集めました。大利木材株式会社は、壁紙や床板に使える藍染めの建材をはじめ「AOLA」によるお弁当箱やアクセサリー、電気スタンドなど小物を展示。サン電子工業株式会社は工場やスポーツ施設など大型用のLED照明を出展しました。
見本市に出展された藍を利用した品々
公式訪問団は、リューネブルクでは博物館の展示「1917–1920年の板東俘虜収容所展でのドイツ俘虜」の開幕式に参加し、徳島から来た踊り子約30人による阿波踊りも披露され、喝采を受けました。戦争による出会いが、100年経ってこのような友好に発展するとは、当時は考えられなかったでしょう。これからも文化からビジネスまで幅広い交流が続きそうです。
www.museumlueneburg.de/auss/a17_bando.htm
阿波踊りに合わせて踊りだす知事
日本で新聞記者を経て1996年よりハノーファー在住。社会学修士。ジャーナリスト、裁判所認定ドイツ語通訳・翻訳士。著書に『市民がつくった電力会社: ドイツ・シェーナウの草の根エネルギー革命』(大月書店)、共著に「お手本の国」のウソ(新潮新書) など。