歩行者天国になっているキールのショッピング街を歩いていると、石畳のあちこちに小さな魚がたくさん並んでいる絵が描かれたタイルを見かけます。これは、キール名物「キーラー・シュプロッテ(Kieler Sprotte)」です。キールは湾岸に面した港町なので、普段から美味しい魚が手に入るのですが、今回はこのキール名物の魚についてご紹介します。
シュプロッテはニシンの一種で、20cm以上の大きさになることは珍しいという、小さめの海水魚です。そのうち、10cm以下の大きさの魚を薫製にしたものがキーラー・シュプロッテ。色はきれいな黄金色で、魚屋さんではしばしば平たい木箱に入って売られています。
ドイツでは一般的に肉より魚の方が高価ですが、キーラー・シュプロッテはお値段も手頃なので、我が家ではちょくちょく食卓に登場します。薫製魚独特の良い香りが食欲をそそり、1人で何尾も平らげてしまいます。
キーラー・シュプロッテ
さて、その食べ方ですが、日本人はよく魚を頭から尻尾までまるごと食べたりしますが、ドイツ人の典型的なキーラー・シュプロッテの食べ方は次の通りです。まず魚の頭を取り、それから骨を抜きます。この時、両手で軽く胴体の部分をもんでから尻尾を引っ張ると、全体の骨がすぽっときれいに抜けます。そのまま食べても良いのですが、私の周囲のドイツ人が皆口を揃えて言うには、黒パンの上に乗せるとさらに美味しくいただけるそうです。(ビールがあれば、なお良し!)でも、私はやはり日本流に温かい白ご飯と一緒に食べるのが好きです。
シュプロッテは今でこそキールの名物魚として知られていますが、発祥の地はキールではなく、この街から少し北上したところにある街エッケルンフェルデ(Eckernförde)だそうです。しかし当地には昔、輸送ルートがなかったため、加工した魚はまずキールへと運ばれました。そして、そこでキールの名前が記されて各地へ運ばれたため、今の名前が定着したとのことです。また現在、シュプロッテはキール近郊やバルト海には少なく、北海で多く捕れるそうです。
キーラー・シュプロッテはスーパーでも缶詰入りで売られていますので、キールを訪れた際はお土産としても良いかもしれません。また、本物のように平たい木箱に入れて売られているチョコレート版のキーラー・シュプロッテもありますので、こちらもぜひお試しあれ。
歩行者天国で見かけるキーラー・シュプロッテのタイル
福岡出身。2005年に渡独。夫と娘との3人家族。キール・フィルハーモニー合唱団所属の音楽好き。最近凝っているのは家庭菜園。