はじめまして、今号からライプツィヒのレポーターをさせていただく髙橋亜希子です。コンピューターが好きで、IT系の翻訳やプログラミングを仕事にしてきましたが、ドイツに移ってからは小さい頃から大好きだった食やガーデニングも仕事にしています。
今回は私も日頃お世話になっている、ライプツィヒのフードスタートアップ環境について紹介します。日本からドイツに来て、「イベントなどで日本食を紹介したい」「日本食を取り入れたフュージョンの製品を作ってみたい」などと思ったことのある人も、もしかしたらいるかもしれません。かくいう私もその一人でした。
そうしたアイデアをまずは形にしてみる場所として、食品を製造できるプロ仕様のレンタルキッチンがあります。私が知っているだけでもいくつかあるのですが、なかには1日単位で借りられるキッチンも。キッチンの衛生担当者やほかのキッチンユーザーと知り合えるので、初めてだとハードルが高い衛生基準やボトリング、ラベリングの仕方について、情報を共有してもらえることもありますよ。私が利用しているのは、Egenberger Lebensmittel社のキッチン。私以外には、発酵食品を生産しているedelsauer、ケータリングや食の啓蒙活動をしているHeldenküche、日本食を提供するMiyukitchen、チリソースを生産しているOula Hot Sauceなどが利用しています。
発酵食品を生産するedelsauerのメンバー。Egenberger Lebensmittel社のキッチンにて
またライプツィヒやザクセン州には、資金面やネットワーク面で支援を受けられるサポートプログラムが少なくありません。一例を挙げると、ライプツィヒ大学のSMILE スタートアップイニシアティブのプログラムのほか、ザクセン州によるInnoStartBonusからも、食に関するプロジェクトが助成を受けています。私も2021年に、InnoStartBonusの支援を受けて地元の材料を使ってしそシロップを造っていました。
さらに製品のテストや本格的な流通の足がかりにできるマーケット、新しい商品の販売に協力的な個人商店もライプツィヒには数多くあります。毎週土曜日にプラグヴィッツ地区のマーケットホールで開催されるSamstagsmarkt(本誌1148号参照)では、ホール内に設置されている商品棚にはフードスタートアップの商品が並びます。マーケットでは原材料を分けてもらったり、生産してもらったりできる地元の農家とのつながりができるのもうれしいところです。
地元で生産された食材を扱うマーケットホールの一角
このようなフードスタートアップ環境の良さは、アイデアを製品にして販売できるというだけでなく、一連のプロセスのなかでさまざまな人と出会い、地域とつながれるところにもあると思います。お住まいの地域にも似たような食品の生産や流通をサポートする仕組みがあるかもしれません。
アイデアがあるという人は、一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。地域で楽しい食の世界が広がるはずです。
IT系の翻訳者・プログラマー。オーストリア、インドを経てドイツへ。ライプチツィヒには2016年より在住。三度の食事と、手に入らない食材を自分で育てるのが何よりの楽しみ。古巣のアート分野に戻ることを夢見ている。