10月の半ばになると、私が住んでいるライプツィヒではパン屋さんに「Reformationsbrötchen」(リフォルマツィオンス・ブロートヒェン、宗教改革のパン)という手のひらサイズの甘いパンが並び始めます。私はベルリンや南西ドイツの黒い森地方で暮らしていたこともあるのですが、このパンを知ったのはライプツィヒに移ってからでした。
地元のマーケットに並ぶ「リフォルマツィオンス・ブロートヒェン」
パンの名前にもある「宗教改革」については、世界史の授業で耳にしたことがあるという人も多いのではないでしょうか。宗教改革は1517年10月31日、ライプツィヒのあるザクセン州のお隣、ザクセン= アンハルト州のヴィッテンベルクで神学者のマルティン・ルターが九十五カ条の論題を掲示し、カトリック教会を批判したことが始まりです。その後、1519年のライプツィヒ討論を経て、宗教改革は国境を超えて広がりを見せました。さらに九十五カ条の論題から約40年後、1555年にアウクスブルクの宗教和議でルター派(プロテスタント)が認められました。このような経緯から、宗教改革は今でもライプツィヒや近隣地域では重要な出来事として捉えられ、リフォルマツィオンス・ブロートヒェンは10月の風物詩となっているのでしょう。
このパンの歴史は明らかではありませんが、その形は「ルターのバラ」と呼ばれるルター主義のシンボルをモチーフにしたものだといわれています。ルターのバラの花びらは5枚ですが、意図的なのか単なるミスだったのか、一般的にこのパンの花びらは4枚のことが多いです。ただし、私が今年リフォルマツィオンス・ブロートヒェンを購入した地元のビオのパン屋さんBROTPROFIのものには、花びらが5枚ありました。ルターのバラに忠実に作っているのかもしれませんね。またルターのバラの中心にあるハートは、いちごジャムで表現されています。
ナッツやドライフルーツがぎっしり!
生地はクリスマスのシュトレンを思わせるようなドライフルーツやナッツを使ったものですが、シュトレンと比べると軽め。私は手のひらサイズのリフォルマツィオンス・ブロートヒェンをまるまる一つ朝ごはんにおいしくいただきました。
ライプツィヒのように、地域によっては10月31日の宗教改革記念日の前に、パン屋さんにリフォルマツィオンス・ブロートヒェンが並んでいるかもしれません。インターネット上ではレシピが公開されています。歴史を振り返りながら、宗教の共存、平和を願いながら、自分で作ってみるのもまた一興です。
IT系の翻訳者・プログラマー。オーストリア、インドを経てドイツへ。ライプツィヒには2016年より在住。三度の食事と、手に入らない食材を自分で育てるのが何よりの楽しみ。古巣のアート分野に戻りつつある。