バイエルン州の南西部に広がるアルゴイ(Allgäu)地方。ミュンヘンからのアクセスの良さから人気の保養地でもありますが、実は地理的に明確な境界を持つ名称ではないそうです。言葉や文化が共通している地域を指すということで、バーデン=ヴュルテンベルク州の南東部の一部やボーデン湖畔の都市リンダウ、そして隣接するオーストリアの一部地域もアルゴイとみなされています。このアルゴイ地方でなんといっても有名なのは、フュッセン近くのノイシュヴァンシュタイン城とホーエンシュヴァンガウ城でしょう。美しいドイツアルプスに囲まれたこれらのお城は、連日多くの観光客が世界中から訪れる魅力的なスポットですが、今回はここからちょっと離れて、静かなアルゴイをご紹介しましょう。
丘陵地帯から、オーストリア方面の山を眺める
アルゴイという名称の起源にはいくつかの説があり、古いドイツ語で「山の地方」、もしくは「水と草原のある山岳地帯」を意味するようです。ここには、今もまさにその名の通りの風景が広がっています。ミュンヘンから高速バスで約2時間走っている間にも、穏やかな丘陵の草原と時折現れる川の流れを楽しむことができます。点在する村や小さな街には、休暇用に部屋を貸し出しているとの表示があちこちにあり、街から街へと自転車ツアーを楽しむ人にも最適なのでしょう、気持ちの良い夏の日を楽しむサイクリストを多く見かけました。本格的な装備の人もいれば、ごく普通の格好でのんびり走るグループもあり、それぞれの楽しみ方ができるコースがあるようです。丘陵地帯を越えていくと、もうそこにはドイツアルプスが目の前に広がります。場所によっては、南のインスブルック方面の山やチロルの峻厳(しゅんげん)な山岳地帯などオーストリアの地域を望め、その美しさに圧倒されます。また、別の展望スポットで北に目を向けると、なだらかに広がるアルゴイの農業地帯を見渡すことができ、その豊かな緑と穏やかな風景に癒されます。バイエルン州でも今年の夏は昨年に引き続き雨が少なく、アルゴイ地方もその例にもれませんが、点在する多くの湖の青さは風景にアクセントを添えています。
恵みの雨をもたらす雲に覆われた、静かな湖
さて、牧畜が盛んなアルゴイで風景の一部のようになっているのが、放牧されている牛たちです。ここではもちろん乳製品やチーズ生産が盛んで、最近では「アルゴイのチーズ通り(Allgäuer Käsestraße)」と銘打った地域が西アルゴイにあり、参加している酪農家から直接チーズを買うことができます(一部は日曜祝日も営業)。 さまざまなチーズコンテストで賞を獲得したものなどもあり、意欲的な取り組みが感じられます。チーズ作りの工程見学やチーズを使った料理教室など(それぞれ有料)への参加も可能ですので、またの機会に試してみたいです。なお、この地域以外でも「チーズ販売」の看板はあちこちで見かけることができます。次回はいろいろお土産にしてみたいですね。
日独の自動車部品会社での営業・マーケティング部門勤務を経て、現在はフリーランスで通訳・市場調査を行う。サイエンスマーケティング修士。夫と猫3匹と暮らし、ヨガを楽しむ。2002年からミュンヘン近郊の小さな町ヴェルトに在住。