はじめまして! 今月よりミュンヘンの地域レポーターを務める大浦詩織カミラです。ミュンヘン生まれで10歳から京都で暮らし、大学卒業後、再びミュンヘンに戻ってきました。幼少期の記憶とこれからの新たな発見をもとに、魅力たっぷりのミュンヘンをお届けしたいと思います。
水車工場地帯から自然豊かで閑静な地区に
今回ご紹介するのは、伝統と活気が交差するアウ地区。住みやすい場所として今や高い人気を誇りますが、昔からそうだったわけではありません。イザール川の氾濫による被害を受けやすく、1813年には橋の崩落によって約100人の死亡者が出た事故が起こったことも。
アウ地区には、かつての人々の生活を支えていたアウアーミュールバッハという小川が流れています。そのエネルギーは製粉機をはじめとする機械の稼働に利用され、醸造所や魚の養殖、紡績工場、皮革工場などにも水が供給されていました。それゆえ、ここに住んでいた人のほとんどが、その労働者たちだったそうです。
その時代の名残を今でも感じられるのは、クレーミシャクンストミューレという歴史ある製粉所を改造した真っ赤な建物周辺。現在はさまざまな企業のオフィスが入った複合施設に変身し、その1階からはコーヒーの良い香りが漂います。このロースタリー「FAUSTO」の豆を自宅で楽しむことはもちろん、暖かい日にはその裏を流れる小川を眺めながら至福の1杯をいただくのもおすすめです。
中世ヨーロッパで活躍したテンプル騎士団の修道院
そのまま小川沿いに散歩を続けると、木の葉の間からタマネギ型の屋根がちらちら見えてきました。近づいていくと、そこには迫力のある修道院が現れます。ここはArchiconvent der Templerという修道院で、南ドイツ新聞は「ノイシュヴァンシュタイン城とモスクワの聖ワシリイ大聖堂をミックスしたような建築」と表現。伝統的な戒律に従う13人の僧侶と13人の尼僧がひっそりと暮らし、生活に困っている人たちを支援するため、無料の食料配布なども行っているそうです。
全長7キロメートルのアウアーミュールバッハの中流辺りには「リトルヴェネツィア」と呼ばれる場所があり、飲食店も多く立ち並びます。また、その先のマリアヒルフ広場では、春、夏、秋の年3回、食器や雑貨の骨董品が並ぶ「アウアードゥルト」という蚤の市が開催。今年5月の蚤の市は残念ながら中止となってしまいましたが、夏こそは開催されるといいですね。最後に、この小川とイザール川の北の合流地点付近には、「アトリエ・ワン」という東京の建築家ユニットによって手がけられた橋のアート「Bridge Sprout」が今年の末まで設置されています。
「リトルヴェネツィア」とも呼ばれるアウ地区
初夏らしくなってきた今、時間を忘れてゆっくりとミュンヘン市内を探索するのも楽しいかもしれません。ぜひ、お散歩コースの参考にしてみてください。
ミュンヘン生まれ、10歳ごろから京都育ち。大学卒業後、再びミュンヘンに戻る。もともと異文化教育や日独間のコミュニケーションに興味があり、ドイツのPR会社Storymakerに就職。J-BIG編集部として、在独日系企業の情報発信も行っている。 www.j-big.de