ジャパンダイジェスト

その地ならではの文化を味わう フォルクスフェスト

ドイツで最も有名なお祭りといえば、ミュンヘンのビール祭り「オクトーバーフェスト」でしょう。国内外からの観光客も多く世界的な知名度の高さを誇りますが、集客に占める外国人の割合は19%と、実は意外と少ないのです。最も多いのはミュンヘン周辺からの訪問者で、彼らは開催期間中に何度も来場するリピーターでもあります。まさに「我が街のお祭り」ですね。

知名度ではオクトーバーフェストに及ばないかもしれませんが、ドイツ国内では大小さまざまな、その土地ならではの風習やしきたりに端を発したお祭り、「フォルクスフェスト(Volksfest)」が頻繁に開催されています。季節的には春、もしくは初秋に見かけることが多いように思っていましたが、ミュンヘン周辺では3月下旬から10月末まで、つまり冬季を除けばほぼ一年中、どこかでフォルクスフェストと銘打ったイベントがあるようです。特に8月中旬以降は比較的大きなお祭りが相次いで開催され、民族衣装ディアンドルを見かけることも多くなります。オクトーバーフェストの前哨戦といった感じでしょうか。お祭りの楽しみはビールや軽食を楽しみながらの屋外でのおしゃべり。また定番の移動遊園地や露店は、子供はもちろん大人にとっても童心に返って楽しめるものです。一方、近年になってから、さまざまなアイデアを取り入れたイベントとして開催されるようになったお祭りも多いです。

今年はそんな中で、バイエルンの小さな街で開催された「オールドタイマー・フェスト(Oldtimertreffen)」に行ってみました。オールドタイマーとはクラシックカーのことですが、「最低30年以上前に登録された車で、オリジナルの状態を良く保ち、車両技術の文化財としての保護に寄与する車」ということで、バスやトラック、バイク、また農業用トラクターなども含まれます。ただ、ここのお祭りはまだ新しく、来場していたのは数台のオールドタイマーだけでした。今後に期待したいと思います。

オールド
タイマーなトラクター
オールドタイマーなトラクター。美しい!

一方、会場内では、昔の暮らしの様子を垣間見ることができるような展示や、実演が行われていました。丸太を斧で加工して柱にしたり、縄を綯(な)うために二人掛かりで操作する木製の道具、壺で撹拌して牛乳からバターを作ったり、保存されている鍛冶場では実際に火を起こして鉄製の道具を作ったりも。青空の下で昔の手工芸の方法が再現されているのを見るのは、なかなか楽しいものでした。バターを作るためには数時間にわたり牛乳をかき混ぜ続けなくてはいけないので、何人かが交代で行なっていました。手作業で何かを作るために、現代では想像もつかないほどの時間をかけていたことが、そう遠くない昔に行われていたんだなと実感できます。そして、現在でも使用できるようにきちんと保存された古い道具からは、モノへの愛情が感じられるようでした。

縄を綯う道具
縄を綯う道具には、現代っ子達も興味津々

ミュンヘン周辺のフォルクスフェスト(2017): www.ganz-muenchen.de/volksfeste/kalender/liste_index.html

Yoshie Utsumi
日独の自動車部品会社での営業・マーケティング部門勤務を経て、現在はフリーランスで 通訳・市場調査を行う。サイエンスマーケティング修士。夫と猫3匹と暮らし、ヨガを楽しむ。 2002年からミュンヘン近郊の小さな町ヴェルトに在住。
 
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