2011年3月11日の大震災から7年が経過しました。ここミュンヘンでも被災地支援のためのチャリティーコンサートが開かれましたので、その様子をお知らせします。
7年前の震災時、私はドイツに居たため日本からの情報は限られたものでした。それでも、インターネットなどからだんだんと伝えられてくる被害の大きさに呆然となり、自然の営みの前での無力さをひしひしと感じました。
今回のイベントでは、ミュンヘン総領事や独日協会の方のお話から、改めて被災者数の多さとその辛さが感じられると共に、岩手県三陸海岸沿岸地域の様子を紹介したビデオなどからも、刻々と進む復興の様子が伝わって来ました。また、岩手県の方が制作した紙芝居フィルム「吉浜のおゆき」は、1896年に三陸海岸で発生した津波をモチーフとし、津波の恐ろしさを伝えると共に悲劇を繰り返さないためのメッセージが込められた悲しくも心にしみ入るお話でした。
アンコールでは、3名での連弾を披露
このコンサートのために演奏を披露されたのは、日本からのピアニスト3名(塩塚美知子さん、西川麻里子さん、荻野美恵子さん)です。洗足学園音楽大学の出身で、ドイツやフランスの音大でさらに勉強をされ、現在はピアニストとしてご活躍し大学で教鞭もとられています。
日本人とドイツ人でほぼ満員となった小ぶりなコンサートホールに響く音色は力強く、時には激しく、また慈しむように優しく、そして哀愁を感じるもの でした。舞台がすぐ近くに感じられる、情感のこもっ た演奏に心を打たれます。日本の四季折々の童謡を組み込んだ曲では懐かしいメロディーの数々と共に、四季の美しさが表現されます。忘れかけていた歌詞 が思い出され、日本の風景が蘇ります。
リヒターさん(左から3人目)、総領事、ピアニストのみなさん
このイベントを企画したのは、リヒター恵子さん。 30年以上を海外で暮らし、震災時には韓国のソウル在住でした。震災地域に親戚や友人が住んでいることもあり、「日本を離れて長いので、これが祖国を思う気持ちというものなのかどうか、よく分からない」 と自分を見つめながらも、「何かしなければ」との思いに突き動かされて、当時も現地で募金活動などを行ったそうです。そのお気持ちが、友人であり今回のコンサートで演奏することになったピアニストの方たちとの縁などを通じ、いろいろな人と繋がっていきます。ドイツで暮らし始めてからはまだ1年少しというリヒターさんですが、「思い立ったら行動せずにはいられない」と、今回のイベントを実現しました。
突然の天災、そして思いがけない不幸な事故や人災などで受けた傷の苦みは計り知れません。でも、何かの支えになればと願う人たちがここミュンヘンにも多くいることを感じた日でした。
日独の自動車部品会社での営業・マーケティング部門勤務を経て、現在はフリーランスで 通訳・市場調査を行う。サイエンスマーケティング修士。夫と猫3匹と暮らし、ヨガを楽しむ。 2002年からミュンヘン近郊の小さな町ヴェルトに在住。